【感想】タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源

ピーター・ゴドフリー=スミス, 夏目大 / みすず書房
(56件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
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  • タコ ≒ エイリアン?

    タコとコウイカの高い知能に絡めながら、主観的経験の起源について探る本。進化樹のとおい向こう側にいながら独自に高い知能を発達させたタコたちを研究することは、知能を持った異星人を研究するのに近いのだと

    なにか大きな謎が解かれるわけでもなく、結論めいたものが提示されるでもなく、いろいろ興味深い仮説や考察、観察を披瀝してくれる科学エッセイといったところなのだが、それでも面白い。コウイカが体色をさまざまに変えるが色盲であるらしいとか、多細胞生物に寿命がある理由とか、思わず「へーっ」となってしまう
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    投稿日:2024.04.26

ブクログレビュー

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  • tmurazzz

    tmurazzz

    この本を読む前と後でタコの印象が大きく変わり、なんだか愛着を感じるようになった。すぐにでも生きてるタコを見に行きたくなる。
    心身問題について論じる本はたくさんあるけど、下手に哲学的なものよりも、この本を読むほうが有意義かもしれない。単に知識が増えるだけではなく、これから先の生き物との関わり方が変わるかもしれない。少なくともタコが痛みをどのように感じているか、考えずにはいられなくなる。続きを読む

    投稿日:2024.03.21

  • さけといわし

    さけといわし

    まず本書はタコメインではあるが同じくらいジャイアント·カルトフィッシュが良く出てくるので頭足類を主軸と捉えても良さそう。
    哲学者が書く、思考や知覚に焦点を当てた進化論の本でもあるし、タコなどの頭足類という不思議な生き物たちへの愛を綴る本でもある。
    本当にタコという生き物は面白い。あれだけ大きな目があるのに色覚は無さそうだし、色を変えるのは必ずしも擬態だけではないし、足は味覚だけではなく、個々でも動く、まるでタコの身体は指揮者のいるジャズバンドのようなものであったり。
    心、本書では知覚·思考をすることを指すと思われるが、その進化を語るときは哲学的になるものだとは思う。数値化が難しく、感覚的に語るものになりがちだから仕方ないことだが、この手のものは生物学者が書くよりも哲学者が書くほうがこの点はわかりやすいかもしれないなと本書を読んで感じていた。

    あと学者の方でもない限り、今後の人生で一番ジャイアント·カルトフィッシュという単語に目を通すことになる。
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    投稿日:2024.03.16

  • 正木 伸城

    正木 伸城

    メモ→ https://x.com/nobushiromasaki/status/1766277974020755576?s=46&t=z75bb9jRqQkzTbvnO6hSdw

    投稿日:2024.03.09

  • 慎也

    慎也

    驚いたことにタコやイカは色の識別ができないらしいのだ。どうしてあんなに周囲に合わせて色を変えて擬態したり、威嚇のために体の色を変えるのだろう。
    なんと、目による知覚で脳が指示するのではなく、皮膚細胞そのものが、周囲の色を感知して自律的に変化しているらしい。
    これは“多くの動物では、脳と身体が明確に分かれるが、タコはその区別とは関係のない世界に生きている”ということの1つの証左なのだろう。

    かといって、これはタコが感覚刺激だけで行動する、考えない動物だということではない。タコはじっくり目で見て観察してタコ同士や人間同士を区別できるし、食べられないものを使って遊ぶこともできる。
    タコがあまりにも賢いため、つい擬人化したくなるが、タコは人や猫やカラスの親戚ではない。
    なにせ、身体の中でどこからどこまでが脳なのかそもそも正確に定義できない、人を含む脊椎動物とは認知の仕組みが大きく異なる生き物なのだ。

    筆者は生物学と神経心理学の面でタコを追求し、ダイバーとしてタコを愛する。しかし、哲学者たる筆者の面目躍如と感じるのは、ホワイトノイズから意識へと題された4章と、ヒトの心と他の動物の心の6章である。

    極単純な進化的に初期の動物の中では、主観的経験はホワイトノイズに近いものだった。とりあえず常にざーと言う音が聞こえている状態に例えられる。その中で、痛みや快感といった根源的な感情、すぐに何かの反応を必要とするような感情が最初に生まれたのだろう。
    これは既に主観的経験を獲得しているといえる。

    主観的経験とは、「自分の存在を自分で感じること」という意味だ。別にヒトの特権ではない。
    例えば、電気信号を発する魚は、主観的経験による認知がなければ、自分が発してている電気信号なのか、誰かが発した電気信号なのかの違いがわからない。つまり多くの動物たちは、主観的経験を備えているのだ。そうするとどの段階で、私たち人間が持っているような『意識』に近いものが生まれたというのが次の問いだ。
    その道筋は1つではないだろう。ホワイトノイズから単純な形態の主観的経験、そして意識へと至る道は、進化の試みの中でいくつもあるはずだ。
    帯びにも書かれた『進化はまったく違う経路で、心を少なくともニ度作った』ということ。

    ではヒトの心と動物の心の違いを考えていくと、様々なレベルの意識が動物に備わっている中で、人間は高次思考ができる。
    簡単にまとめると、「自分の思考についての思考」だ。
    例えば、“なぜ自分は今、これほど機嫌が悪いのか”ということを人は考える

    高次思考を行うためには、内なる声(インナースピーチ)が必要だ。言語は、コミュニケーションのための唯一の手段ではないのは事実だ。実際単純な言語手段しか持たない動物が複雑なコミニュケーションをとっている例はいくらでも見つかる。
    しかし高次思考をするためには内なる声が必要であり、内なる声を獲得するためには言語化が必要である。ここが恐らくヒトの心に生じた特異性なのだろう。

    私たちは自分に向かって何かを問いかけることも多いし、自分に向かって説明や忠告をすることも多い。これは心に浮かんでは消える意味のないたわごとではない。
    私たちの内面では絶え間なくおしゃべりが続く。そのおしゃべりから逃れるためには、瞑想の必要を感じるぐらいだ。
    ここではちょっと苦笑する。

    寿命を進化論で論じた章や、まだ見知らぬ海で起きている進化の壮大な実験など、読みどころが多くて学びの多い一冊であった。
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    投稿日:2024.02.24

  • やすお

    やすお

    タコやイカは知性が高いと言われている。進化樹の中でははるか昔に枝分かれした人類とタコであるが、異なる進化の中で神経系をそれぞれで発達させているのが興味深い。人間は脳で集中制御しているのをタコでは腕部にも脳のような機能があるなど、違いはあるもののタコにはタコの心があるようだ。また、もし異星人が存在するのであれば、独自進化した異星人の心を知るためにもタコの心を研究するのは有意義だ。まずはタコになった気分を考えるというのは面白い思考実験になりそう。こんなことを考えられるのも人間の特権のようなのだけど。何冊か類書を読んだうえで、この本にたどり着いたが、読みやすくて分かりやすい。続きを読む

    投稿日:2024.02.02

  • show

    show

    このレビューはネタバレを含みます

    知らないことばかり,びっくりすることばかり。

    タコやイカの寿命は1〜2年しかないらしい。

    海は生命と心を生んだ場所で,心は海の中で進化した。
    その海が酸性化しているらしい。

    ジュンク堂からの新刊「メタゾアの心身問題」の案内でこの本をしって図書館から借用。

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    投稿日:2024.01.25

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