【感想】オリュンポス3

ダン・シモンズ, 酒井昭伸 / ハヤカワ文庫SF
(6件のレビュー)

総合評価:

平均 4.6
3
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  • SFの内完結性を超えるということ…。

    文学には血脈がある。
    そして、その血脈は古典理解、学問、教養、信仰に直結している。
    SFは非常に高度な知的興味と興奮を与えるが、その道の先は二つの極めて断絶した方向しか存在しない。
    ダン・シモンズの作品はハイペリオン・エンデュミオンで非常なまでに研ぎ澄まされた感性と完成を誇っていたが、今作では、その点においてはわずかに劣ると感じる。それは、古典を組み込む文学が全体が持つ困難さであり、SFの自由さを縛る制約が極めて厳しいものであったと推察される。
    悪の珠玉としての"最後の敵"との決着がないのも消化不良の理由の一つだ。
    最後はアキレウス、ハーマン、ホッケンベリー、オデュッセウス、マーンムートが体現していたヒューマニズムが勝利し、西欧の二大価値観としてのギリシャ思想、ユダヤ一神教の救いが表現されている。
    オリュンポスの主催者が唯一神の信仰者に敗れるのは歴史的流れとは言え、多神教を信じる日本人には起伏が無いように思えて減点対象かもしれないが、多神教の”神々”が実在するとするなら、その高位生物に人間が勝てるわけがないのは自明であって、唯一神への信仰か正しさの信仰に依るしかないわけで、その流れの先にあるものとして自戒としてのイスラム教国の象徴としてのハーン帝国の破滅が表現されている。
    SFは子供から青年が読むものであり、あとがきに書いてある通り、SEX描写がタブー視されるのも仕方がないが、ギリシャ詩の至宝、人類文化の根本をなすイリアスへの誘いは娯楽の多様性の中で知性を磨く道を万人に保持する上で非常に有意義な試みだと思う。
    SFが内完結性を超えながら、人類の英知への道を万人に開くことを期待し、人間性そのものの勝利を唄うSFに祝杯を!
    星5つ。
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    投稿日:2017.12.29

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  • いけだ

    いけだ

    やーすごいすごい。
    本書を本当に楽しむために必要となる、ギリシア神話とかトロイア戦争とか、そういった知識を残念ながら持っていないのだけど、それでも、とにかく面白かった。

    複数の物語を一本の軸上で綺麗に進めていく豪腕とか、自由自在に緩急を付けて、長大な物語を一気に読み進めさせる巧妙さとか、奇面組並みに登場人物が多いのに、それぞれのキャラがきちんと立っているキャラクタ造型とか、ほんと見事のひと言に尽きる。

    筆者が出版元と揉めている関係で、続編が出せないみたいだけど、ちゃんと落ち着いて続編が読めるように鳴ると良いなあ。
    続きを読む

    投稿日:2018.11.13

  • honda-shi

    honda-shi

    ギリシャ神話や英国文学などからの具材をギュウギュウに詰め込んでSF仕立てにしているので、読む側の咀嚼力が試されている気がする。
    登場人物はいろいろ出てくるが、最も人間らしさを感じさせるのが、人間の形をしていない機械という点が、とても好き。続きを読む

    投稿日:2018.09.16

  • 剣竜

    剣竜

     オリュンポスついに完結!
     イリアムのように熱い終わり方ではないですが、なんとも言えない穏やかな余韻が素晴らしかったです。

    投稿日:2011.04.09

  • massy

    massy

    「オリュンポス3」ダン・シモンズ/酒井昭伸 訳
    SF叙事詩。土色。
    「イリアム」シリーズ最終巻。

    シモンズのイリアム世界も終幕を迎え、古典的人類、イリアス、モラヴェックの3ストーリーがごたまぜになって大団円。
    一応、順当なハッピーエンドになるんでしょうか。
    相変わらず圧倒的な世界観と、物語舞台の色彩感は脱帽!のひとことです。

    ただ本作で最終巻ですが、前作(「オリュンポス2」)までで広げた大風呂敷を畳みきれてない感じが。
    セテボスはどうなったの?<静寂>の正体は?ポストヒューマンの思惑は何だった?ディーマンとキャリバンの決着もついてないし、QT・ファックス・ブレインホールその他の種明かしも物足りない…
    「ハイペリオン」シリーズのあまりの完成度の高さに、今回の終わり方は結構不完全燃焼だったかも。

    とうとうこのシリーズも終わってしまいましたか…
    シモンズの短編集固めて第2集でないかな!(4)
    続きを読む

    投稿日:2011.02.02

  • yasumasa2

    yasumasa2

    やっと、イリアムの地球、オリュンポスの火星、アーダ達の地球の関係が明らかになり、各々の戦いもクライマックスに。
    が、さらに続くという感じの終わり方でした。
    作者は、続編を書きたいようなのですが、この作品を書いた出版社とうまくいかなくなっているようで、もしかするとこれで終わり?
    なんとも、次を予感させる終わり方ですが、仕方がないのでしょうか?
    それにしても作者のダン・シモンズは、なかなかすごい作家です。



    個人的には、彼のハイぺリオンシリーズが、好きです。4部作で、長い作品ですが。
    続きを読む

    投稿日:2010.12.05

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