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小関智弘 / 小学館文庫 (3件のレビュー)
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総合評価:
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reinou
このレビューはネタバレを含みます
1999年刊行(初出1982〜1996年)。 タイトルどおり、日本の製造業を縁の下で支える零細工場の模様をレポートする。 東大寺盧舎那大仏を見て、時代史や天皇権力、宗教的な荘厳さが心に去来するのではなく、その製造方法・技術的困難さとは何かに思いを馳せる思考に痺れる。 後継不足、元請の海外移転の加速、そして少子化。町工場に起因しない外生的な要因が亢進していく現代。本書の刊行から20年近く経過する中、あの頃の日本の製造業の技能には厚みがあった。なんていうおそれなし。と言えればいいのだが…。果たして…。
投稿日:2016.12.17
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現場の方のいい言葉がたくさんでてくる本だ。 なかでも「ひとり親方」の話がいい。著者が独立する職人がほしかったのは何かを推察する場面がいいです。「あるときぶらりと客がやってきて話が弾んだら、二時間…でも三時間でも機械を止めて、話に打ち興じてしまうことのできるような、そんな自由であったのかもしれない」(p.195)なるほどねえ。わがサラリーマン人生でも、仕事に打ち込んでいるときはそういう自由を満喫していたような気がする。読者私は内勤が多かったから相手は社内の人が多かったけれども。それはそれで組織が違う人とのこういうトークはとても楽しかったような記憶がある。実はたいしたことをしてないときは「ぶらりと客」など来ないんですよね。「ぶらりと客」が来るって言うのは充実しているときなんですよ。なんか「セロ弾きのゴーシュ」みたいな話だ。 でもそういう職人の方はどんどん減っているらしい。「工場のME化が進むにつれてNC機による加工が多くなる」(p.179)「工程そのものがブラックボックス化してしまう結果」「モノを作る人間がますます育ちにくくなってしまった」(p.179) かつてこの過程にどちらかといえば加害者として参加していた情報化技術者の分野でも似たようなことを感じる。業務フローなんて書かない、データベースなんて設計しないというような人が「IT」を僭称していたりする。そういうのはERPの中でブラックボックス化しているのであろう。「人間は手間ひまかけなければ育たない」(p.179)のだけれども、そこを否定してきている。これが産業の発展なのであろうか。 だいぶ馬齢を重ねてしまったので耳に痛いのが、「技能は、それを獲得してゆく過程で常にそれを人に伝える方法をも孕ませて育ててゆくのでなければほんものにはなれない」(p.164)というくだり。 続きを読む
投稿日:2009.09.30
如月梓
以前NHK(だったと思う)やっていたドキュメンタリーで内視鏡手術用の極細鋏を研ぐことが出来るのは世界でもここだけなのだと紹介されていたのがあって、見ると本当に数人でやっているような小さな工場(こうば)…が写っていた。こういう技術というのは規模じゃないんだな、と思った気がする。 どんなに科学技術が発達しても、研ぎ澄まされた職人の技にはかなわないと筆者はいう。それは四十三年間、旋盤工として町工場を渡り歩いてきた経験から出た言葉だろう。もともと小説家でもない人の文章だから、必ずしも読みやすいわけではないし、専門的な話も多々あるのだが、なかなか面白く読めた。 続きを読む
投稿日:2005.05.14
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