【感想】不格好経営

南場智子 / 日本経済新聞出版
(447件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
161
164
63
5
2
  • 長嶋監督のような経営スタイルへの違和感

    本書は、DeNA創業者の南場智子氏が語る、DeNA創業と経営の記録です。

    南場氏の前職コンサルタントと、経営は全く違うという指摘や、ネットオークションサイトを開発では直前になりソースコードが1行もなかったことなど、興味深い話が満載です。

    今のDeNAを築くまでの経営の苦労や充実感などが、南場氏自身の言葉で語られており、「経営」に関心のある読者には、ケーススタディとなる読み物として良いと思います。

    『他者に偽りのない尊敬と感謝の気持を持ち続け、その気持ちに基づいて行動する会社こそが真の一流企業だ』

    という南場氏の持つ理念にも大いに共感します。

    ただ、そう思いはするものの、一方では、私の読後感は、正反対のものもありました。

    それは、「優秀な人材」にこだわることへの違和感です。

    南場智子氏は語ります。

    『創業時から一貫して、どんな人手不足のときでも、人材の質には絶対に妥協しないことをポリシーとしてきた。何か深い考えがあったというより、とにかく優秀な人が純粋に好きだったからではないだろうか。便利だからとか必要だからとかではなく、すごい!と思える人、尊敬できる人と一緒にいると自身の気持ちも高揚し、怠惰な自分も最高に頑張れる。それもあって、黒字化のめども立っていない時代からひとりひとり、これでもか、というピカピカの人材を口説き落としてきた』

    最後の『怠惰な自分も最高に頑張れる』は謙遜でしょうが、たしかに、経営にとって『優秀な人』の確保は重要だと思います。

    しかし、ここでいう「優秀」とはなんなのでしょうか?

    例えば、卒業時、ある専門分野において「優秀」というように、ある時点のある側面についての「優秀」のことだけを指しているようにも思います。

    会社は長期に存在するものであり、今の「優秀」さが、将来も優秀かというと、その保証は何もないです。

    例えば、インターネットの世界がそうであるように、技術革新の激しい分野では、今の専門が将来陳腐化し、今「優秀」な人が将来「優秀」でなくなることも考えられます。

    また、逆に、今「優秀」でないと思われた人が、時代の変化の中で将来、優秀な人材に変わることもあります。

    つまり、優秀な人材確保も大切でしょうが、同時に、優秀さを維持したり、優秀でない人を成長に導いたりする「人材育成」も経営の重要な要素だと私は思います。

    その点については、本書では、仕事を任せることで人が育つ、とだけ書かれていますが、これは今「優秀」な人材だから可能なことなのでしょう。将来、その人が「優秀」でなくなっても仕事を任せることで人が育つのかどうか、、、

    「人材育成」の点で落とし穴はないでしょうか?

    「優秀」な人材確保にこだわる経営スタイルは、各チームの一流選手をトレードで獲得しチーム作りをした巨人の長嶋監督を思い出させてくれましたが、私は、この長嶋監督のような経営スタイルへは違和感を感じてしまいます。

    それよりも、私は、再生工場と呼ばれた、野村監督のような経営スタイルも重要ではないかと、本書を読み終わって感じました。
    続きを読む

    投稿日:2014.02.01

ブクログレビュー

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  • シャチョー

    シャチョー

    面白かった!横浜DeNAベイスターズオーナーの姿しか知らなかった私にとって、南場さんの生い立ちや経営者としての実像を知ることができました。ものすごい実績を持ちながら、失敗の経験を詳細に語ってくれる誠実さがとても良かったです。続きを読む

    投稿日:2024.03.04

  • 株式会社WIN 竹内宏樹

    株式会社WIN 竹内宏樹

    今や球団を持つまでに成長したDeNAが設立されたのが1999年。創業25年で今の規模まで成長した会社の創業期の生々しい話が描かれています。
    南場さん曰く、会社をコンサルする側だった頃は好き勝手言っていたけど、自分で会社を経営してみたらやってみたらとんでもなかったそうです。
    "知っている""わかっている"と"できる"ことには大きな隔たりがあることを、体験を持って伝えてくださってくれる、起業する時には読んだ方が良い本です。
    続きを読む

    投稿日:2024.02.22

  • ももも

    ももも

    DNAの創業者の自伝。

    フィクション小説めいた感じで、入り口は敷居低く読んだ。

    もともと手に取ったきっかけは、「プロジェクトを外注したはいいが、実際は全く進んでいなかったので気づけなかった」と言うエピソードから。

    読み始めるまで、創業者の南場氏はもともと戦略系コンサル出身で、そこから創業したいうことを知らなかった。
    このような経験がある方だったが、コンサル時代の経験が足かせになったエピソードが出てきて興味深い。
    例えば、どの選択肢を取るべきかと考える時に、比較表を作ったがばっかりに、後から出てくる壁にあたったときに、あっちのほうにしとけばよかったかなぁと気持ちが揺らいでしまうこと。

    ひとにすすめるときの考え方と、自分が決断出すときの考え方が全く違うということ。

    キャッシュフローの重要さ、特に自分の財布になってしまったかばっかりに判断基準がこれまた変わってしまう。また大企業の時の感覚とは違う。
    など。

    共感できるところは多々あるのだが、簡単にまねできる生き方でもないなと。

    ただまた読み直したい。
    続きを読む

    投稿日:2024.01.28

  • MiZuKi

    MiZuKi

    南場さん執筆のDeNAの創業からこれまで、そしてこれからについてを赤裸々に綴った本書。
    南場さんの使う言葉の表現や言い回しがすごく好きだなと率直に。やはり、すざらしい起業家の方は人を惹きつける力がある

    最後の星の例えからの一節はとても良い終わり方だった。すごく好きな表現で、自分もこんな人をワクワクさせられるような文を綴ってみたいなという気持ちにさせられると同時に、こんな素晴らしい想いを持って働くことの大切さを感じた。

    DeNAのストーリーは非常に面白かったが、個人的には第7章の「人と組織」についての章は、学びという面では、非常に多くあったように思う。

    ある種あたりまえだよね、ということも南場さんから綴られるとやっぱりそうかと自分の中で答え合わせができる部分も多くあったし、DeNAの強みである人材の質の所以についてが、よく分かる章なのではないだろうか。

    いずれにせよ、人生で大切にしておきたい本の一つになった。
    折に触れてまた読み返せたらなと思う。
    続きを読む

    投稿日:2024.01.21

  • Yabu

    Yabu

    DeNA創業者の南場智子さんの本。上手くいったことがないと言われるように多くの失敗を繰り返しながら変化の激しいIT業界で生き残り成長させたのは、反省と人を信じること、やりとげない想いがあったからかなと感じた。人を動かす想いは何よりも得難いものですごく大切なものと感じさせてくれた。そういう想いを見つける為、これからも色々と学んでいこうと思った。続きを読む

    投稿日:2023.12.31

  • 原田みな美の本棚

    原田みな美の本棚

    DeNAの南場さんの立ち上げのころから
    軌跡が学べる1冊。

    これだけ大きな企業を創っていながらも
    そのスタートはマンションの1部屋から始まったとの
    お話に、きれいで恰好いいだけではない
    起業の本当を学ぶことができます。続きを読む

    投稿日:2023.12.28

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