【感想】充たされざる者

カズオ・イシグロ, 古賀林幸 / 早川書房
(53件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
11
18
12
2
1
  • ノーベル賞受賞に敬意を表して

    私は芥川賞とったからといってわざわざその本を買う程ミーハーじゃない?!
    2、3の作家以外にはせいぜい毎月買っている文藝春秋に掲載されているのを拝見する程度。しかしノーベル賞しかも日本人がとなればこれはまた別のお話。
    なのでイーブックスストアからダウンロード版を買ってみた。「日の名残り」とこの「充たされざる者」。但し作者のカズオ・イシグロさんは日本人の両親のもと長崎で私と同じ年に半年程遅れて生まれたとはいえ5才で英国に移住し既に日本語を話せない英国人の方。
    英語で書かれ日本語に訳された作品。しかしダウンロード版であとがき等すべて入れてではあるが、なんと2080ページもある長編でそれでなんとたったの926円。さすが早川書房さん、安い。しかも207円分のポイント使用で719円か、うーん。安す過ぎかもとページ数と値段で考えるうつけ者の私。
    さてレビューなんて自分の無教養を晒す程おばかさんでないという私としての健気な誇りはあるがここはノーベル賞に免じて恥ずかしながら書いてみよう。
    動機のひとつとしてまだ誰もレビューを書いていない。わたしが栄えあるこのノーベル賞作家の長編の作品の初レビューをせしめる一生に一度の絶好の機会。
    ソルジェニーツィンはイワン・デニーソヴィチの一日でノーベル賞を取ったがこの作品は主人公であるラーダーという名の世界的なピアニストの傍観者然とした3日間の出来事を過去の出来事とテクニカルに往き来させながら織りなし濃密に。いや読んでてもどかしくなる位の回りくどい会話が繰り広げられる。なので途中途中はしょって読み進めて予想に反した穏やかなラストへ。
    さて何十年か前、意図せず足を踏み入れてしまったカフカの世界。といっても3つしか読んでないけど。うち2つは何度も。
    なんか読み進めて感じる訳のわからない違和感
    あれは変身?いや城か なぜか蘇ってくる不思議な違和感がなんか共通してるなと。読んでいて背中に感じるゾクッとするもの。
    こんなレビューは読み飛ばして是非本作品をお読み下さい。
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    投稿日:2017.10.10

  • 前衛芸術性はよくわからない…

    マジックリアリズムが使われた作品は読みときが困難で、作者が意図的に主題をぼかしているため、何かとっかかりが無いと作品から読み解けるものがなくてがっかりしてしまうこともある。特にマジックリアリズムの作品を何作も読んでいると当初の目新しさがないので消化不良に戸惑ってしまう。
    作品の感想としては意味が分からないのについつい読めてしまうという不思議さだけが残ります。カズオイシグロの筆力と翻訳者の努力に頭が下がりますね。
    内容は、おそらく、ですが、主人公の過去と有りうべきだった何かが、全ての影として架空の町に現出している、そして、作品の最終章が示すようにこの街そのものが一つのトリックとして、相対的異邦人から見た欧州の社会と制度、そして信仰を夢として見せている、という格好でしょうか?
    街には壁があり、基準は落とさないのです。まるで、まるで…。
    何というか、そういう歯切れの悪さに我慢できないと長大な長さを誇るこの本は途中で投げ出したくなるでしょう。
    意味がないところに意味がある。そういう感じでは、あるのでしょうね。
    芸術は元々そういうものでもあるわけですが…。
    うーむ、評価するにはもっと芸術への理解がないと評価できない作品ですが、とにかく星5つ。
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    投稿日:2018.09.30

ブクログレビュー

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  • aya

    aya

    230708*読了
    900ページ以上の大作。読書好き、カズオ・イシグロファンとしては嬉しい。
    冒険ものでもミステリーでもないのに、よくこんなにたっぷりとこのストーリーを書けたものだと思う。

    架空の街があり、そこで公演を行うためにやってきた有名ピアニスト、ライダー。
    この街にとっても転機となる重要なイベントに招かれ、大役を果たすつもりでいるのに、ホテルの支配人、ポーター、ポーターの娘とその息子、街の議員たち、再起を果たそうとする指揮者、そのかつての妻…とにかくたくさんの人の願望に巻き込まれてしまう。
    現実と夢、現在と過去が、ごちゃごちゃと混ぜ合わさっているような、なんとも夢想的な流れに捉われ続けるライダー氏。
    いったい何がリアルなのか。リアルなんてものは存在しなくて、全てが夢なのか。分からない。その分からなさがおもしろい。

    ともすると、飽きてしまうような展開なのに、早く続きを読みたくなる。この力こそが、カズオ・イシグロさんなのだと強く思う。
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    投稿日:2023.07.08

  • MS(1763691)

    MS(1763691)

    カズオ・イシグロの4作目。ハヤカワ文庫で948P(厚いし重い。物理的に読みづらくて手こずった)。

    不条理ゆえか、焦燥から喪失、郷愁‥‥いろいろな感情がよぎった。今までにない不思議な読後感。

    投稿日:2023.06.04

  • ひーら

    ひーら

    このレビューはネタバレを含みます

    900ページ越えの分厚い物語は、高名なピアニストが演奏のために町に着いたところから始まる。出会った人々から次々と持ち込まれる奇妙な依頼に振り回され続ける物語。ドアを開けると全く別の空間に繋がっていたり、人の記憶が自分の記憶にすり替わっていたり、突然に生み出される過去の重大な記憶など時系列も不安定で、状況を捉えにくい。はじめはとても読みにくかったが、すぐにこれは夢の中なのだと気付き、不穏な空気に溢れる不思議な世界を堪能しました。巻き込まれたできごとの周りでの悪戦苦闘が延々と続き、何かがスッキリと解決する場面は一つもなく、もちろんハッピーエンドとかバットエンドとか単純に括れず、捉え方によっては悪夢とも言えなくはないが、それでもほのかな未来への希望が感じられる小説でした。夢の中も現実の人生も同じようなものなのも。

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    投稿日:2023.03.16

  • ひつじ

    ひつじ

    このレビューはネタバレを含みます

    こんなにも読みながらイライラした小説は初めてだ。ただイライラするというのは、面白くないということではないのだ。主人公は自分の予定も訪れた街の地理も把握しないままさまよい歩き、出会った人たちからの不躾な頼み事を断ることもできずドタキャンする。自己弁護に満ちた語りが何ページにもわたり、悪夢のような迷宮を通りぬけると、最後にはこっけいな悲劇に転じる。主人公は目的だったリサイタルすらせずに街を去ろうとしている。カズオ・イシグロらしい、皮肉に満ちた人生の迷宮のような作品だ。

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    投稿日:2023.01.01

  • fastrocktail

    fastrocktail

    すべてが夢の中の話なのかと思うほど、空中に浮かんだように感じる文庫本900ページを超える作品。それなりに話は展開されていくのであきはしないが、もう一度読み返そうとは思えない。イシグロさんの小説の中では散漫だなと思ってしまう一冊。続きを読む

    投稿日:2022.10.08

  • やまは。

    やまは。

    最後のなにも解決してないのに知らない下層階級の人に泣きついて朝食を食べるラストが気持ち悪すぎて変な夢を見た。
    でも読んだ本に左右されて眠れなくなるほど心に色が付いていない部分があったんだと知って嬉しくなる。ずっと子どものまま小さいものも大きく感じたい。続きを読む

    投稿日:2022.07.27

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