【感想】口笛をふく時

遠藤周作 / 講談社文庫
(4件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
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  • 口笛をふく時

    奇妙なことにこのタイミングで必要なことができたらと思い立ち、実行すると緊張してできないことがあります。
    口笛をふく時…。
    遠藤の作品にはフランス文学、特にアンドレ・ジッドの匂いがします。
    あの世代に仏蘭西に渡り、文学を研究した上、カソリックの信者であるわけだから当然でしょう。
    戦前の全ての人が遠藤の描くように現代人より優れた倫理感を持っていたというわけでもないでしょうが、戦前の日本人にはグレートパワーの一角を占めていたという無邪気な、本当に無邪気な自信があったのです。そしてそれが当然のように戦前の人々を形作っていたのです。…日本人はあまりに無邪気過ぎたのかもしれません。今の視線で見ると、遠藤が否定させたい鋭一さえも無邪気な高度成長時代の微笑ましい未来だけを信じていた無邪気な日本人の美しさを秘めている、と感じざるを得ません。
    この困難な時代に遠藤が生きていたら、世界情勢の変化に揺れる日本を見てどう描いたのかと、少なからず思わずにはいられません。
    麗しき青春の美と郷愁には人類普遍のものとして惹かれるところがあります。
    そして、遠藤はその表現が余りに自然で余りに上手いと感じます。
    この困難な時代に心が砕けそうになったとき、読むべきでしょう。
    星5つ。
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    投稿日:2018.08.21

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  • taiyaki

    taiyaki

    うーん。分からなかった。
    私にはよく分からなかった。
    平目と小津の行動も、鋭一という人間も、何一つ理解も共感もできなかった。
    ただ、ほんの少しの記憶の切れ端の関係に、大切なものを、光をみるような、戦争というものは本当に体験した人にしか分からない絶望をもたらしたのだと。そしてそれらの気持ちは、戦争を体験してないわたしたちには決してわかり得ぬものなのだろうなと思う。

    小津には同情するけれど、鋭一はサイコパスにしか思えず辟易。
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    投稿日:2022.01.21

  • tikuo

    tikuo

    戦前に灘中に通っていた父と、大病院で癌患者を担う息子。戦争と医局の力関係という、それぞれ大きな力の元、一人の女性によって人生が交わっていく。

    医療系で真面目な方の遠藤周作であるが、かなり読みやすい部類だと思われる。戦時中の灘中(今の高校)で、平目という同級生と出会い、成績不良で挫折し、戦争によって引き裂かれる。一方で、医者の上下関係によって、正しい治療法を見誤っていく。

    戦争の話は、かなり端折って軽く描かれている分、医局の異常さという部分が重くのしかかる文章となっているものの、難しい文章ではないため、理解しやすいだろう。展開としては、最後に大きくカタルシスがあるわけでもないので、最後の部分は余計に感じた。

    遠藤周作自身の私小説の部分が大きいだろうし、それぞれのパートで主人公を書き分けるために苦労したのはわかるのだが、「小津」と「鋭一」という姓名でのかき分けは、正直なところ引っかかった。
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    投稿日:2020.04.07

  • ミカンミカン

    ミカンミカン

    二つの川があって、その二つの川がやがて合流して大きな川になるような壮大な物語でした。戦争の時代を生きた父親と、現代を生きるその子との葛藤そして、善とは悪とはを問いかける内容です。
    年代からいえばワタシは子の年代にあたるのでしょうが、描かれている父の心情はまことに共感のできるものでありました。続きを読む

    投稿日:2019.03.07

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