【感想】作家の値段

出久根達郎 / 講談社文庫
(5件のレビュー)

総合評価:

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  • 近現代文学が楽しくなる一冊

    「初版本の魅力をあえて言うなら、その本が世に生まれた時の姿、著者がその目で確かめ、手に取って喜び愛おしんだに違いない、その姿を、そっくりそのまま見て触れて愛しむことができる喜び」と語る出久根達郎さんが古本屋視点で書き綴った、夏目漱石から司馬遼太郎まで明治から昭和わたる物故作家24人の作家論。
    といいつつも決して堅苦しい、眠たくなるような文学論ではない。自らが親しんだ本や作家をあてにして、思い出話に花を咲かせいるような楽しさにあふれている。
    話し相手は「論文を書かない書誌学者」古本屋・龍生書林の大場啓志氏。古書の知識から価格までその博識ぶりを披露してくれるわけだが、その一方、直木賞作家でもある出久根達郎さんの古本屋としての目利きの実力のほどはいかにと当方は勘繰りたくもなるのである。
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    投稿日:2015.09.09

  • 作家論で文学論で書誌学なエッセイ

    司馬遼太郎、三島由紀夫、山本周五郎、川端康成、太宰治、寺山修司、宮澤賢治、江戸川乱歩、樋口一葉、夏目漱石、直木三十五、野村胡堂、泉鏡花、横溝正史、石川啄木、深沢七郎、坂口安吾、火野葦平、立原道造、森鴎外、吉屋信子、吉川英治、梶井基次郎。
    これら24人の作家を、その作品の古書価、すなわち値段という視点から捉えようという作家論風エッセイ。作家で古書店主でもある出久根氏ならではの趣向だが、近代文学大衆文学の古書の価値に詳しい同業者大場啓志氏も迎え一分のすきもない万全の構え。
    とはいえ、古書価格の話題に終始するわけではなく、やはり基本はその作家、作品の魅力を語ることにあり、そこに程よいバランスで古書価の話が混じるという形。古書としての価値を語る上で必要な出版時のエピソードや作家に関する面白話など、生きた書誌情報も満載であり、古書店には無縁の電書読者も面白いこと請け合いである。

    ただ、本当はこういう本は、紙の本(この言い方もアレだが)で読むべきなのかも。
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    投稿日:2014.10.24

ブクログレビュー

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  • あまんじゃく

    あまんじゃく

    恥ずかしながら、私は近代文学をほとんど読んでいません。この本に取り上げられている作家の中では、宮沢賢治が好きで全集を読んでいますが、それ以外はぽつぽつ程度。直木三十五や火野葦平に至っては一冊も読んでいません。
    なので、こうして出久根達郎さんが丁寧に解説してくださるのは大変ありがたいです。「どの作家にも、『玄関の扉』的な作品がある。作家の予備知識を教えてくれる作品である。それさえ読めば案内なしに、まごつくことなく奥座敷に行くことができる。」つまり、この本は取り上げられた作家たちの読書案内としても有用だということだと思うのです。
    私は樋口一葉著『通俗書簡文』の「猫の子をもらひにやる文」が気にいったのですが、この本は手に入れられませんでした。次に気になるのは映画は観たものの、それほど好きにはなれなかった深沢七郎著『楢山節考』。こちらは新潮文庫版が買えたので、読んでみようと思います。
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    投稿日:2010.06.20

  • yuichi

    yuichi

    樋口一葉自身の当事の貧しい暮らしを具体的に描きながら、それと重ねて紹介される彼女の「大つごもり」の素晴らしさや、明治42年『ふらんす物語』、大正2年「恋衣花笠森」、大正4年『夏すがた』、そしてあの『四畳半襖の下張』と、発禁処分を次々と食らってきた永井荷風の発禁本の歴史とその内容紹介の見事な簡潔さ(最近は街歩きおじさんとしてノスタルジックにばかり紹介されることへの批判になっている)、「少年探偵団」ファンの世代別の読み方の差異を、戦前派、ポプラ社版派(昭和22年から35年)、光文社版派(昭和39年)、テレビドラマ派(昭和50年)と4期に分けて見せる江戸川乱歩論など、どれもこれもいちいち感心のあまり唸るような作家論ばかりである。玄人筋でなければ気づかないような作家への切り口や視点が、素人が興味を持てるような講談調の話として巧みに描かれているのだ。日本近代文学全集とか日本近代文学論の堅苦しい退屈さに、それを読むことを避けてしまった人々(私のことです)にとって、本書は最良の入門書だと思う。嘘ではない。騙されたと思って読んでほしい。続きを読む

    投稿日:2010.05.12

  • マイケル

    マイケル

    なかなか奥深い世界だ。
    本は好きだが、古本はあまり好きでなかったが、この本を読んで、興味を持った。
    昔、学生時代、古本屋の好きな友達がいて、一緒に神田の古書店を廻ったものだが、買う本がなく、ただ眺めていただけだ。
    今だったら、違った意味で楽しめたのではないだろうか。
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    投稿日:2010.04.10

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