残らなかったものを想起する 「あの日」の災害アーカイブ論
⾼森順⼦(編著)
/ボイジャー
作品情報
【災害のあった「あの日」を、あなたはどう伝えますか?】
能登半島地震、東日本大震災、阪神・淡路大震災、御嶽山噴火・・・・・・
巨大災害が頻発するこの国では、防災、減災、命の大切さといった「残すべき目的」を掲げた「アーカイブ」が作られ続けています。
しかし、そこで残すべきとされるものは、ほんのひと握りでしかありません。
私たちはもっと豊かなものを、もっと多様な手法で、留めたり、取り戻したりすることができるのではないでしょうか。
本書では、現場の偶然性をとりこみながら「残らなかったもの」への想起の回路を開こうとするユニークな15のメディア実践を紹介。
あなたにとっての「災害」、そして「アーカイブ」のイメージを大きく変える実践がここにあります。
語り
復元模型
被災写真
報道写真
育児日記
絵画
手記集
朗読
展覧会
記念式典
災害遺構
文化施設
映像
美術館
演劇 etc・・・・・・
高森順子/⽮守克也/杉山高志/磯村和樹/槻橋 修/溝口佑爾/松本 篤/林田 新/武居利史/佐藤李青/竹久 侑/福田 雄/林 勲男/⾨林岳史/青山太郎/⼭内宏泰/富田大介
【目次】
●はじめに 実践知としての災害アーカイブ
【第Ⅰ部】 「あの⽇」以前の暮らしへの回路を創造する
●第1章 語り
●第2章 復元模型
●第3章 被災写真
●column 01「わたし」を主語にする──育児日記の再読をとおした震災経験の継承の試み
【第Ⅱ部】 「あの⽇」への想起のダイナミクス─モノを創造する
●第4章 報道写真
●第5章 絵画
●第6章 手記集
●column 02 応答のアーカイブ─東日本大震災から「10年目の手記」
●column 03 展覧会というメディアの可能性(1)─「3・11とアーティスト:進行形の記録」
【第Ⅲ部】 「あの⽇」への想起のダイナミクス──場を創造する
●第7章 記念式典
●第8章 災害遺構
●第9章 文化施設
●第10章 映像
●column 04 展覧会というメディアの可能性(2)──「3・11とアーティスト:10年目の想像」
●column 05 12章「カタストロフィの演劇体験」への手引き
【第Ⅳ部】 未災者との回路を創造する──実践と研究の「あわい」から
●第11章 美術館
●第12章 演劇
●おわりに
【著者】
⾼森順⼦
1984年、兵庫県神戸市生まれ。情報科学芸術大学院大学産業文化研究センター研究員。大阪大学大学院人間科学研究科単位修得満期退学。博士(人間科学)。グループ・ダイナミックスの視点から、災害体験の記録や表現をテーマに研究している。2010年より「阪神大震災を記録しつづける会」事務局長。2014年度井植文化賞報道出版部門受賞。著書に『震災後のエスノグラフィ』(明石書店、2023年)、『10年目の手記』(共著、生きのびるブックス、2022年)など。
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商品情報
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この作品のレビュー
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「本書は、想起をめぐるアクションを「語り」、「写真」、「絵画」などのメディアごとにまずは並べてみることで、「残ったもの」から「残らなかったもの」を想起するという「災害アーカイブ」のねじれた試みをパフォ…ーマティブに検討する企図のもとにつくられた(p.5)」
阪神・淡路大震災と東日本大震災のあと、多くの人々によってそれぞれの現場で、実に様々なメディアを用いて「災害アーカイブ」が構築された。それらは映像や計測データ、記録文書などの公文書として公式に記録保存=アーカイブされてきた形式のものとは異なるものもあるが、その実践を通じて、巨大で複雑な出来事である災害の実相を、それぞれに捉えているものだった。
実践者の切実さはどれも胸が詰まるばかりだが、私のよく知っているメディア領域の記事、たとえば復元模型や災害遺構についてのものについては、おおいに納得するところがあったし、知らない分野、とりわけラジオ放送記録を朗読するという「演劇」の記事などは、驚きつつ共感しつつ読んだ。
災害の現在をとらえ、未来に届けるための実践の方法はこの他にもあるのではないか、とおもわれた。願わくは「未災」の来たるべき当事者たちに、この実践の記録が届きますように。
編者の高森順子による『震災後のエスノグラフィ』も読もうと思う。続きを読む投稿日:2024.03.27
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