自壊する欧米 ガザ危機が問うダブルスタンダード
内藤正典(著)
,三牧聖子(著)
/集英社新書
作品情報
中東、欧州移民社会研究の第一人者と新進気鋭のアメリカ政治学者が警告!
ガザのジェノサイドを黙殺するリベラルの欺瞞が世界のモラルを破壊する。
もう、殺すな!
◆内容◆
2023年10月7日、パレスチナ・ガザのイスラム主義勢力ハマスが、占領を強いるイスラエルに対して大規模な攻撃を行った。
イスラエルは直ちに反撃を開始。
しかし、その「自衛」の攻撃は一般市民を巻き込むジェノサイド(大量虐殺)となり、女性、子供を問わない数万の犠牲を生み出している。
「自由・平等・博愛」そして人権を謳(うた)いながら、イスラエルへの支援をやめず、民族浄化を黙認し、イスラエル批判を封じる欧米のダブルスタンダードを、中東、欧州移民社会の研究者とアメリカ政治、外交の専門家が告発。
世界秩序の行方とあるべき日本の立ち位置について議論する。
◆目次◆
序 章 イスラエル・ハマス戦争という世界の亀裂 内藤正典
第1章 対談 欧米のダブルスタンダードを考える
第2章 対談 世界秩序の行方
終 章 リベラルが崩壊する時代のモラル・コンパスを求めて 三牧聖子
◆主な内容◆
・パレスチナ問題での暴力の応酬と「テロ」
・ガザから世界に暴力の連鎖を広げてはならない
・ダブルスタンダードがリスクを拡大する
・戦争を後押しするホワイト・フェミニズム
・反ジェノサイドが「反ユダヤ」にされる欧米の現状
・アメリカとイスラエルの共犯関係
・ドイツは反ユダヤ主義を克服できたか
・「パレスチナに自由を」と言ったグレタさんに起きたこと
・反ユダヤ主義の変奏としての反イスラム主義
・民主主義のための殺戮の歴史を直視できない欧米の問題
・バイデンとシオニズム
・トランプとバイデン
・欧米がなぜか不問に付すイスラエルの核問題
・誰がイスラエルの戦争犯罪を止められるのか?
・「人殺しをしない」を民主主義の指標に
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この作品のレビュー
平均 4.5 (2件のレビュー)
-
他書を読んだあとの違和感が解決された。三牧さんの明確な視点は、欧米、とりわけバイデン政権についての理解の助けとなる。
投稿日:2024.05.22
10・7に始まるイスラエルのガザ侵攻を止めることができない欧米中心の国際秩序を「リベラルのダブルスタンダード」という観点から厳しく検証する。米国の若年世代の政治動向をウォッチしている三牧氏の議論は、…バイデンの筋金入りの親イスラエルぶりを指摘する一方で、米国内部が決して一枚岩ではないことを示すものとなっている。
一方で内藤氏は、トルコから見たEU、米国、イスラエルという視座を提示するが、エルドアンの政権をどう評価できるのかがいまひとつわからない。エルドアンといえば強権的なメディア統制を行っているとされるが、そのようなイメージも歐米メディアによるバイアスということなのか? ウクライナ戦争が始まる前、反米・反グローバリズムの文脈でプーチンを相対的に持ち上げるような議論が散見されたが、氏の見解は、そのような種類の言説と差異化できるのだろうか。
三牧氏は、イスラエルの侵攻を支持する欧米の動きを指して、「言葉が歪んでいる」とする。彼ら・彼女らの「言っていること」と「やっていること」との乖離を指した直観的な物言いと思うが、そもそも第二次世界大戦後の国際秩序じたいが、いくつもの虚構=擬制の積み重ねの上に成り立ったことを想起してもよい。イスラエルの建国=パレスチナ人の追放は、その虚構=擬制の最たるものの一つだろう。冷戦構造の崩壊後、30年にわたって延命させられてきた「世界」を成り立たせる約束事としての虚構=物語――近代、自由、人権、倫理、法の秩序――について、ひとつひとつのコンセプトを鍛え直すことから求められている。いま戦争と平和を語ることは、こうした歴史的なパースペクティブの下にあることを自覚するところから始めるべきではないのか?続きを読む投稿日:2024.04.25
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