自由論
ジョン・スチュアート・ミル(著)
,山岡洋一(訳)
/日経BP
作品情報
日経BPクラシックス 第10弾
「すべてのことが官僚機構で行われている国では、官僚が内心反対していることは何もできない。このような国の政治制度は、経験と
実務能力をもつ国民をすべて規律ある組織に集めて、それ以外の国民を支配することを目的としている。」
この文章は、日本の官僚批判派、あるいは改革派官僚が書いたものではない。150年前に出版されたミル『自由論』の一節だ。
驚くほど、いまの社会の真実を突いている。官僚制の本質は、どの時代、どの社会でも変わらないということだろう。
ミルは19世紀のイギリスを代表する哲学者。父ジェームズ・ミルは著名な哲学者であり、息子に英才教育を施した。そのあたりは息子の『ミル自伝』に詳しい。
本書は、他者に危害を与えない限り、国家は個人に干渉すべきではないという「危害原則」を明らかにしたことで知られる。
リバタリアン(古典的自由主義者)の聖典ともいえるイギリス経験論の金字塔。
言論の自由、思想の自由がなぜ大切なのかを、民主主義のエッセンスをまるでビジネス書のように面白く説いている。たとえば、こうだ。
「ひとつの社会に変わった言動がどれほど多いのかは一般に、その社会に才能や知的な活力、道徳的な勇気がどれほどあるのかに比例する」
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商品情報
- シリーズ
- 自由論
- 著者
- ジョン・スチュアート・ミル, 山岡洋一
- 出版社
- 日経BP
- 書籍発売日
- 2011.09.01
- Reader Store発売日
- 2024.04.02
- ファイルサイズ
- 97.7MB
- ページ数
- 264ページ
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この作品のレビュー
平均 4.6 (8件のレビュー)
-
この小論のテーマは、いわゆる「意志の自由」ではない。じつに不幸なことに、「自由と必然」という形で「哲学的必然性」という誤解をまねく概念に対立するものとされている「意志の自由」ではなく、市民としての自由…、社会のなかでの自由である。いいかえれば、社会が個人に対して適切に行使しうる権力の性質と限界が、この小論のテーマである。続きを読む
投稿日:2017.09.01
侵してはならない個人の自由、言論の自由の大切さ、社会が個人に行使する権力の性質と限界について説く。明治日本の自由民権運動にも大きな影響を与えた、自由論の古典的名著。
言論を統制する権力は不当である。…その害は人類全体に及び、後の世代も被害を受ける。そして、意見の発表を禁じられた人以上に、意見に反対する人が被害を受ける。その意見が正しい場合、自分の間違いを正す機会を奪われるからである。
「思想と言論の自由」は、人類の知性の健全な発達のために必要である。人は議論と事実によって、自分の誤りを改めることができる。人間の判断に頼ることができるのは、間違いを正すための手段が用意されている時だけである。
古い時代、支配者は国民の意思とは無関係に権力を握っており、国民と利害が対立した。そして、自由とは「支配者による圧政からの保護」を意味した。その後、国家の行政を動かす役職に国民の代表がつく方が良いと考えられるようになると、一時的な支配者を選挙で選ぶ方法が求められるようになった。
「国民の意思」とは、現実には多数派の意思である。このため国民の一部を抑圧するよう望む場合がある。これは権力の乱用の一種であり、いまでは政治について考える時、この「多数派の専制」は、社会が警戒すべき悪の1つとされている。
社会が個人に干渉する時、それが正当かどうかを決めるのは、次のような原則である。
・人間が個人としてであれ、集団としてであれ、誰かの行動の自由に干渉するのが正当だといえるのは、自衛を目的とする場合だけである。
・文明社会で個人に対して力を行使するのが正当だといえるのはただ1つ、他人に危害が及ぶのを防ぐことを目的とする場合だけである。続きを読む投稿日:2023.05.29
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