この作品のレビュー
平均 4.0 (7件のレビュー)
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額賀さん初の児童書。
コンクールで金賞を取るために、厳しい練習が続きギスギスしてしまった合唱部クラブ。
そして、ゆるっと自分のペースで楽しむ半地下合唱団。
どちらがいい悪いではなく、それぞれのスタイル…を選べて認め合えるようになったらいいんだろうな。
でも、子どもに対しては、「目標に向かって仲間と全力で頑張る」という姿を求めてしまいがち。
みんながそうできる訳ではないことを、改めて考えさせられた。続きを読む投稿日:2022.11.05
このレビューはネタバレを含みます
主人公の真子は、ラベンダー色のランドセルを持っている6年生の背の高い女子。歌うことが好きで、合唱部の強豪校でアルトパートリーダーをしている。
レビューの続きを読む
コンクールの金賞を逃し、卒業する先輩たちに「次こそ金賞を…!」と夢を託された新6年生。プレッシャー、うまくいかない焦り。上から押さえつけることで状況を打開しようとする、2年目の顧問、部長。当然、反発する部員もいるし、委縮してしまう部員もいる。歌はまとまらず、ますます部長は焦るし、雰囲気は最悪。悪循環のなかにある。
部長のやり方に違和感を覚えても、真子は何も言えず。自分には何もできないと思ったり、もっと部の雰囲気を悪くしてはいけないと思ったり。対立することを恐れている。何より、自分自身の抱える気持ちを言葉にすることができない。
気がつけば、歌うことが楽しくなくなってしまう。そんな中、アルトパートの5年生・優里が不登校になる。優里の幼馴染、朔に出会う。朔の両親が経営するバーで、商店街の人たちがいる小さな半地下合唱団に誘われる。
合唱団は、トランスジェンダーではないけれど制服のスカートをはきたくない女子中学生や同性カップルのおにぎり屋さんなどが、普通に登場し、日常に溶け込んでいて、新しい世代の小説なのだと感じた。
朔の美しいボーイソプラノと半地下合唱団での大人たちとの出会いが真子を成長させる。
半地下合唱団で和気藹々と歌うことは楽しい、一方で、真子は「きびしい練習をすること、きびしい指導をされること、それらを全部否定したら、わたしたちはきっと、ほしいものを何も手に入れられない。」ことに気がついている。合唱部が楽しくなくなってしまっても、練習には欠かさず出るような頑張っている子が言うと説得力がある。
「先生だって人間だもの。生まれたときから〈先生〉って特別な生き物だったんじゃなくって、真子ちゃんと同じ、ただの子どもの延長上にいるんだよ。」
保健室の南先生の言葉。真子はびっくりする。「大人は絶対で、賢くて間違えない。」そう思っていた自分の生真面目な子供時代と重なった。真子が、南先生にかぎらず、出会えてよかったと思えるような大人たちに会えてよかった。
歌を楽しむ合唱団と、コンクールを狙う合唱部。優劣をつけるものではない。どちらが正しいかということもない。いよいよ終盤になって、真子はコンクールで金賞を取りたいと猛進する部長に意見する。でも、否定はしない。でも、このままじゃ、合唱が嫌いになっちゃうと訴える。それぞれの〈正しさ〉が違うだけで、ぶつかり合ってる。ぶつかっても、離れなければ、絆は強くなる。遠慮して何も言えないよりずっといい。
半地下合唱団の活動がバレて、お母さんと真子が話す場面も泣ける。
こんな風に自分の思うことを言葉にできる小学生って稀有な存在なんじゃないか?と思う。
お母さんは、ステレオタイプに、学校の部活の方を頑張れって主張するけど、お父さんは思うようにやってみろって言ってくれる。良い家庭だと思った。
装丁のラベンダー畑で歌う真子と裏面の微笑む朔が爽やかで優しくて素敵だ。続きを読む投稿日:2023.03.04
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