宗教と不条理 信仰心はなぜ暴走するのか
佐藤優(著)
,本村凌二(著)
/幻冬舎新書
作品情報
なぜ宗教は争いを生むのか? ウクライナのNATO加盟を巡る対立の裏でキリスト教内の宗教問題を抱える露・ウクライナ戦争に加え、ユダヤ教とイスラム教の確執が背景にあるイスラエル・ハマス戦争が勃発。日本では安倍元総理銃撃事件が起こるなど、人々の宗教への不信感は増す一方だ。宗教は本来、人を救うために生まれたはずなのに、なぜ暴力を正当化しようとするのか? 古代ローマ史研究の大家と国際事情に精通した神学者が宗教に関する謎について徹底討論。宗教が人間を幸福にするのに何が必要かがわかる一冊。
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商品情報
- シリーズ
- 宗教と不条理 信仰心はなぜ暴走するのか
- 出版社
- 幻冬舎
- 掲載誌・レーベル
- 幻冬舎新書
- 書籍発売日
- 2024.01.31
- Reader Store発売日
- 2024.01.31
- ファイルサイズ
- 1.3MB
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この作品のレビュー
平均 4.0 (7件のレビュー)
-
2人の識者による対談集で、雑誌記事を読むような感覚で、ドンドン読み進めることが出来る。少し難解かもしれない話題も多く取上げられているように思ったが、それが判り易い。興味深く読了した。
「宗教」というよ…うなことに話題が及ぶと「無宗教だから」と敢えて断るような例が多く見受けられるように思う。が、それは所謂“宗教法人”というようなモノに関与していない、社寺や教会というような宗教施設での催事や諸活動に積極的に関与しているのでもないという程度のことなのではなかろうか?本当に「無宗教」というのは、何か少し違うのではなかろうか?明確に「〇〇の宗教」というモノとの関連性を意識せずとも、根を辿ると宗教に行き着く場合も在るような考え方が社会に或る程度は行渡っていて、多くの人達はその影響を免れることはし難いのではないだろうか?
そういう程度に思っているので、本書の「宗教」という話題を持って来ている辺りに強く興味を抱いたのだ。そして、そうやって本書に出会って善かったと思う。
ローマでの様々な事柄等の歴史を広く論じている本村凌二と、神学を基礎としながらソ連やロシアでの経験も重ねて国際事情にも明るい佐藤優という2人の識者が対談している。各々の得意な話題を引きながら、話題はドンドン拡がり、掘り下げられていくのが本書だ。
結局、長い人類の歴史、思想の変遷のようなモノについて「宗教」というキーワードで俯瞰しながら考え、今日の社会や国際情勢を見詰めてみようとするような内容になっていたと思う。
最近のロシア・ウクライナ戦争に至る迄、近現代の様々な戦いに「宗教」の要素が入り込んでいるという指摘は示唆に富んでいた。そして「宗教」という存在の文化史的変遷というようなことも示されて興味深かった。
本文中、「宗教」に纏わる活動に在っては、もろもろの社会的な活動とは少し異なる役目を演じる場合も在るという話題が在った。その中で、佐藤優は「宗教」に纏わる活動に限らず、「言わなければならないことを言うために、病気等になっても“生かされている”のだと思う」としていた。この箇所が記憶に残った。「言わなければならないこと」として挙げていたのは、ロシア・ウクライナ戦争は早く停止すべきだということ、人の無い面を揶揄するかのような世論形成や個々人の内面に公権力が踏み込むかのような振舞いを控えるべきであるということだった。
内心を語るようなことを強要されないのが「信教の自由」、「思想信条の自由」ということであろうと本書では説いている。そういう中で、色々な施策が積み重ねられた経過が歴史を創って来たというようなことにも、本書を通じて思い至った。
個人的には、佐藤優の説く「生かされている」に少し心動いた。明確に「〇〇の宗教」を如何こうするという程でもなくとも、或る時に漫然と、何らかの力か意志かで「自身が生かされている?」と微かに感じるようなことが、人にとっての「宗教」というようなモノなのではないだろうか?感覚的で名状し難い感じかもしれない。それらに色々な形を与えようと、長きに亘って色々な人達が論じているのが、宗教分野の様々な論や、意識するか意識しないかを別にそれらを背景に持つような哲学等なのではなかろうか?
非常に大きなテーマについて、2人の識者に導かれながら、時間と空間を超える旅をして、そして現代を考えるという感じで、素晴らしい読書体験が出来たと思う。御薦めしたい一冊だ。続きを読む投稿日:2024.03.22
p57 イギリスはフセインマクマホン協定によって大戦後、パレスチナ地域にアラブ人の独立国家建設を約束する一方で、ユダヤ人にもバルフォア宣言で国家建設を認めていました。さらにはその裏でサイクス・ピコ協…定によってフランス都の間で、この一帯を分割統治する秘密協定も結ぶという、同時に実現し得ない3つの約束をしていたのです。
アラブ人の独立を信じて尽力しながらも、イギリスの三枚舌外交を知って苦悩するTロレンスを主人公にした映画アラビアのロレンスを見るように、誰もがこの戦略を支持していたのではありません。ですが、大戦中の科学兵kにしろ、三枚舌外交にしろ、悲劇が訪れることが明白なのに、人々はその選択をとってしまいました。
p66ギリシャのデルフォイの神託は汝自身を知れという言葉で有名ですが、もう一つわたしの好きな言葉あります。ギリシャ語ではメーデンアガン、物事には中庸をわきまえろという神託です。
p102 ロシア・ウクライナ戦争 正教とユニエイト(京都へ東方典礼カトリック教会)の争い
p104 国家神道が日本人にとっての慣習のようなもの
p106 世界宗教となるには正典(キャノン)の存在がポイント
p121 世界宗教になっていくには、それぞれの地域で土着化する必要がある
p170 悪魔 サタン、ルシファー、メフィストフェレス
p221 日本的な霊性をいちばんつよく感じるのは奈良の吉野 廃仏毀釈、神仏分離を真面目にやらなかった
p225 大きな声で主張する人間ほど、何かあったときに真っ先に逃げ出す。そのくせふだんはそんな素振りをみせないから、周りにいる人間はたまったものではない。極端な意見を言っているのにも関わらず、いざ何かおこったときに責任をとらずにその場を放棄してしまうんです。続きを読む投稿日:2024.03.30
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