侵略日記
アンドレイ・クルコフ(著)
,福間恵(翻訳)
/ホーム社
作品情報
「2022年2月24日は、ほとんど何も書けなかった。キーウに響き渡ったロシアのミサイルの爆発音で目覚めた私は、自宅アパートメントの窓辺に一時間ほど立ち尽くして人気のない街路を眺めやり、戦争が始まったと気づいたが、この新たな現実をまだ受け止められなかった。続く数日間もやはり何も書けなかった。車でまずはリヴィウに、それからカルパチア山脈をめざした移動は、果てしない渋滞で想像を絶する長旅になった。国内の他のあらゆる地域からの車の波が、西へ続く道という狭い漏斗めがけて押し寄せていた。誰もが戦争の暴力から家族を守るために逃げようとしていた」――まえがきより
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商品情報
- シリーズ
- 侵略日記
- 著者
- アンドレイ・クルコフ, 福間恵
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- ホーム社
- 書籍発売日
- 2023.10.26
- Reader Store発売日
- 2023.11.30
- ファイルサイズ
- 0.7MB
- ページ数
- 320ページ
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この作品のレビュー
平均 3.7 (3件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
ウクライナ侵攻について特集した番組の中で本書と著者が紹介されているのを見て手に取り。
レビューの続きを読む
装丁は美しいですが手に取るのに覚悟のいる一冊でした。
簡単な地図がついてますがロシア・ウクライナの地理も歴史も文化も全く知らないので最初は中々とっつきづらかったのですが読み進むうちにウクライナ人の矜持のようなものをそこここに感じられるようになったと思います。
侵攻の残虐さや非道さは日本の報道でも(ものすごくきっと限定的でしょうが)見ることがありますが、そこに現実に生きている人の生活の様子(住居や故郷からの退去、食料や日用品の調達、医療に状況など)や思いはそこからはわからないです。そういうものの一部を本書によって知ったと思います。
戦時中であってもできるだけ日常を過ごそうとすること、少し戦況が落ち着いたと感じられたら住んでいた地域へ戻っていく人の多いこと、避難してきた人たちに無償で住居や安全を提供する人が自国民でも近隣の国の人でも多くいることなど、本書を読まなければ知ることのなかったたくましさというか生きる力のようなものを知りました。
言葉は文化である、どの言語を使用するかというのがナショナル・アイデンティティに大きく関わる。言われてみればそうでしょう。日本人は多分国内にいれば90%以上の人が日常では日本語しか使わないのではないでしょうか。そういう社会の中ではナショナル・アイデンティティについて考えたり感じたりすることはほぼないように思います。少なくとも私はそういうことについてきちんと考えたことはなかったと思いました。
ロシアの刑務所にいる親しい人へ言葉を届けるために苦労している場面が本書にありますが、そのもどかしさは想像を超えました。
空襲を知らせるアプリがある、というのも驚きました。人間は必要なものならどんなものでも作り出すのだなぁとそんなところにも感心してしまいました。
人は水や空気がなくては生きられないし文化がなくても生きられない、と著者は言う。
大災害や戦争の時期にはことのほか文化が重要となるという。
それが生きる支えになるし何よりそれもアイデンティティにとって重要だからだと思う。
戦時中であっても書くことをやめない、本を作ることを諦めない、むしろ「恐ろしくても何としても私は書く」と作家は言う。戦争と読書は両立しないと言いながらも生きること、伝えること、残すことを諦めない作家の使命感に震える。
投稿日:2024.02.16
世界が震撼したウクライナへのロシアの侵攻。
その直前である2021年12月29日から、侵攻を挟んで、2022年7月11日までのウクライナ人の日記。
日記、とは言うものの、書いたのはウクライナの高名な作…家でもあり、そこは私的なものばかりではなく、ウクライナという国の歴史、人種や言語や文化の解説、世界の動向、ロシアとの関係などなど、世界の読み手を意識して書かれたものでもあり、そういう意味からも、ウクライナという国と「今」を理解しやすい。
そもそも、今回の侵攻が起こるまで、ウクライナという国がどういう国なのか、どういう歴史を持ち、どんな人種であるのか、など、ほとんど知識はなかった。
ヨーロッパからアジアにかけての長い長い征服と分裂を繰り返している歴史があることは、一通りは歴史で習うが、そういった長い戦いの中で、一つの種族だけで暮らしいてきたわけではないことから、混ざり合っている血や言語などは、島国日本にいいるとピンと来ないところがある。戦闘下にある日記を読みながら、そういう国で、そういう歴史を持った民族なのか、ということを知った。今回の戦争にしても、2022年の2月24日に始まったものと思っていたが、実際はその前から国境付近の東ウクライナでは戦闘があったことなども、正直、初めて知った。それだけでも、読む価値があったと思う。続きを読む投稿日:2024.05.10
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