夜間旅行者
ユン・ゴウン(著)
,カン・バンファ(訳)
/ハヤカワ・ミステリ
作品情報
被災地を巡るダークツアーを担当するヨナは、自社企画の査定を命じられベトナムへ向かう。企画は新味に欠け、ヨナは会社に打ち切りを提案しようとするが、たまたまひき逃げ事件を目撃したことで謎の一味に新たなダークツアーを「捏造」するよう脅迫され・・・・・・。
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商品情報
- シリーズ
- 夜間旅行者
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 早川書房
- 掲載誌・レーベル
- ハヤカワ・ミステリ
- 書籍発売日
- 2023.10.04
- Reader Store発売日
- 2023.10.04
- ファイルサイズ
- 1.7MB
- ページ数
- 224ページ
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この作品のレビュー
平均 3.1 (8件のレビュー)
-
蟻地獄から抜けられない恐ろしさ… 人間の邪悪な本性が描かれたショッキングスリラー #夜間旅行者
■あらすじ
独特のテーマを持ったプランを提供する旅行会社に勤務する主人公。彼女はツアープログラム業務に…あたっており、収益が良くないツアーの見直しを命じられていた。
あるベトナムのツアーに同行して現地を査定する主人公だったが、途中でコンダクターとはぐれるトラブルに見舞われてしまう。仕方なく街に滞在することになるのだが、なにやら街には秘密があるようで…
■きっと読みたくなるレビュー
人間の醜悪さが詰まったスリラー。不愉快な怖さが魅力ですね。
まず独特の背景設定とストーリーが絶妙に厭らしいんですが、きっと何も知らずに読んだほうが楽しめます。そのため、書き記したあらすじ以上のことは詳しくは語れません。
序盤から嫌な雰囲気が漂うのですが、中盤からは徐々に圧迫さが増していき、悪夢が広がっていく。蟻地獄にハマったしまった様に、ずるずるとしかも着実に引きずり落されている感覚がイヤすぎる。発生している理由も、止める方法も分からない。しかも誰も助けてくれないという恐ろしさ… こわっ
恐怖のキーワード「ワニ75」
たったこれだけの単語なのに、身悶えするほど恐ろしい。動物名と数字だけのこのキーワードが、一体どんな意味なのか… 読んでみればわかります。
またさらに不快感を増す要素として、本書にでてくる人間たちの価値観ですよ。
そもそもこの旅行会社のプランについて、漫画カイジの鉄骨渡りのあるエピソードを思い出してしまいました。大金持ちの権力者たちは、鉄骨渡りをしている若者たちを見て、自分が安全な場所にいるという優越感を楽しんでいるというシーンです。
人間は誰しも弱い生き物ということなんでしょうが、非道なことに興味がわいてしまうという事実は悲しいものです。
そして街の人々ですよ… 貧しさはもはや罪であり、正義がなんなのか分からなくなってしまっている環境が辛すぎる。物語の話だけであって欲しいと、願わずにはいられませんでした。
■ぜっさん推しポイント
物語の終盤はもちろん怖さも最高潮なんですが、さらに切羽詰った感じ、スピード感、なにより哀愁の表現が素晴らしいんです。これまで様々なミステリーで不幸な登場人物を見てきましたが、最たるものですね。
私はいつも恵まれない人生だよな~と、ボヤいているのですが、決してそんなことはなく十分に幸せなんだなと感じるのでした。
と…これも、自分が安全な場所にいるという優越感ですよね。私も醜い生き物です。続きを読む投稿日:2023.12.09
このレビューはネタバレを含みます
韓国発、ダークツーリズムにスポットライトを当てた中編小説。
レビューの続きを読む
災害地を訪れるツアープログラマーのコ・ヨナ。
弱肉強食、栄枯盛衰の職場でそれなりの地位を得ていたものの、いつの間にか落ち目の扱いを受ける日…々に浴していることに気付く。
嫌気が昂じて退職願いを出すも、表向きは出張扱い半ば慰労休暇の、廃止候補ツアーに自ら参加し商品としての存続可否のジャッジを下す任を受け入れ、その決断を先延ばしにする。
訪れた先で直面する観光地の虚構と欺瞞にまみれながらの生存戦略。
いつしか災害の捏造に加担することに。。
ミステリと謳われてはいるものの、謎という謎が現れるわけではなく、打ちひしがれたヨナの心情を抱えながら、その命運を辿るサスペンスのような、むしろ純文学のような趣きさえある。
にわかに現実感のない展開や、終盤のふわふわとした意識の流れと事実が混濁した描きぶりの地に足の着かなさはディストピア小説のようでもあり、少なくともミステリとは思えない何とも言えない読み心地だった。
2021年、CWA(英国推理作家協会)トランスレーションダガー賞受賞作。
著者あとがきに記された年(本国での発行年?)は2013年。
ゴールドダガーとかシルバーダガーはよく耳にするけれど、トランスレーションダガーは初耳だったのでちょっとググってみたら2019年には『新参者』が、2022年には『マリアビートル』がノミネートされていた!!
また、過去の受賞作を見るとピエール・ルメートルだったり、ヘニング・マンケルだったりがあり、こちらから見ると海外小説としていっしょくたになってしまうものが、英語圏からは翻訳小説として扱われていることに、当たり前といえば当たり前なのだが、新鮮な感覚を得た。
なお、アジア圏でのトランスレーションダガー賞受賞は本作が初とのこと。
日本勢も惜しかったねー。続きを読む投稿日:2024.04.13
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