渇きの地
クリス ハマー(著)
,山中 朝晶(訳)
/ハヤカワ・ミステリ
作品情報
オーストラリアの田舎町で牧師が銃を乱射し、五人を殺して射殺された事件が発生した。町を訪れた記者のマーティンは、取材の中で牧師をかばう住民が多くいることを知る。だが、ひとりの老人が住民の言うことは信じるなと告げ・・・・・・。事件の真相と町の秘密とは?
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商品情報
- シリーズ
- 渇きの地
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 早川書房
- 掲載誌・レーベル
- ハヤカワ・ミステリ
- 書籍発売日
- 2023.09.19
- Reader Store発売日
- 2023.09.19
- ファイルサイズ
- 1.4MB
- ページ数
- 544ページ
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この作品のレビュー
平均 4.1 (14件のレビュー)
-
★5 豪州で発生した銃乱射事件を取材していくと… 愛情と正義、業と欲望を重く描いた傑作 #渇きの地
■あらすじ
オーストラリア内陸部にある街の教会で事件が発生。牧師であった男が銃を乱射し、住民五人を…殺害。犯人も射殺された。
一年後、主人公である新聞記者のマーティンは、事件の取材するために街を訪れる。街の住民たちの証言では、凶行に及ぶような牧師ではないらしく、犯行の理由がわからない。その後、取材を重ねるために街に滞在していると、さらなる事件が発生し…
■きっと読みたくなるレビュー
ジャーナリズムのあり方とはなんなのか?
もともと民主主義の国においては、主権者が正しく判断ができるように、真実の情報を提供する役割があるはず。しかし記者は取材を続けるうちに、現場での様々な経験や、取材対象の場所や人物に気持ちが入ってしまう場合もあるでしょう。
本作はジャーナリズム魂をもった新聞記者が、かつて事件のあった街の住民たちに取材と交流を重ねていく物語です。
なによりストーリーの重厚感がエグイ。海外ドラマをワンシーズンを丸ごと観たようなボリューム感。牧師による銃乱射事件の背景に潜む謎、住民たちや警察からの様々な情報、スモールタウンでの人間関係。そして情報が錯綜する中、さらなる事故や事件が発生していく。読者は主人公の新聞記者と共に、情報の渦に巻き込まれていくのです。
まず現場取材の舞台が鬼リアル。読むだけで常に乾いた灼熱の地が目の前に広がっていきます。なかなか進まない情報収集や、取材の難しさが相まって、やたら喉が渇いてきちゃう。
そこに一輪の瑞々しい花ともいうべき、ブックカフェを営む可憐な女性、マンディが登場。物語が進むにつれ、彼女の過去や人間性が判明していき、そして主人公マーティンとの関わりも深まってくるのです。ここが本作の一番の読みどころといってもよく、人生のハイライトを切り取ったようで、二人の気持ちが体中に染み渡りました。
また警察官や他の住民たちも魅力たっぷりに描かれていきます。街を愛し、家族を愛し、恋人を愛し、正義を愛する、世界中どこでも見られる市井の人々。ただひとりひとりが深いバックグラウンドを背負っている。何故こんな不幸な事件が発生することになってしまったのか… 人々に心に潜む苛立ちが、読者の胸をぐっと締め付けてきます。
そして本作はジャーナリスト目線でのストーリーテリングで進行していく。街の住民から証言が得られ、次々と情報が発展していくものの、どうも真相が判然としない。誰が嘘をついて、何を隠しているのか? まさしく海外ドラマのミステリーを観ているようで、先が気になる気になる。マーティンのジャーナリストとしての活躍ぶりと、巻き込まれていくプロットが最高に気が効いてて面白いんですよね。
長い長いお話も、徐々に真相が明らかになっていく。当初からは想像だにしなかったほどに入り組んだ事件で、人間関係と背景があまりに濃厚な内容で、むしろ達成感がスゴかった。人々が幸せを願うことと、それを実現することの難しさが骨身に応えました…
人間の深層心理、業と欲望がじっくりと描かれた、味わいのある作品でした。
■きっと共感できる書評
誰しも人生うまくいっている時もあれば、何をやってもうまくいかない時がある。順風満帆の時、人は傲慢になり、うぬぼれ、他人を見下してしまうものです。
私も若かりし頃、同世代よりもお金を稼ぎ、人生経験や社会勉強ができていると自負していた時期がありました。しかし調子に乗って遊び続けていたら、いつも間にか年収も経験値も周囲に追い越されてしまったのです。そこから数年間は人生で一番キツイ時期で、ただ普通に生きるのがいかに難しいか、思い知らされたものでした。
決して傲慢にならず、でもプライドをもって最前線で戦い続ける。そして困っている人々を支えられるような人物。本書の主人公のように、もがき苦しみながらも理想に向けて邁進することが大事なんでしょうね。まだまだ襟を正して人生を歩んでいければと思いました。続きを読む投稿日:2023.11.12
このレビューはネタバレを含みます
・あらすじ
レビューの続きを読む
旱魃に苦しむオーストラリア内陸の町リバーサイドが舞台。
その町では1年前牧師による銃の乱射事件が起きた。記者であるマーティンが取材を行った住民の殆どは牧師に対して好意的な様子…。
人気が…あり敬虔な牧師がなぜ銃乱射事件を起こしたのか。
・感想
牧師の動機を探るうちに色んな要素や過去が判明するタイプのストーリー。
個人的には戦地取材でPTSDとなったマーティンがこの事件の取材を通して「ジャーナリズムとは」と己の仕事、やるべき事を見つめ直していくリハビリの過程が面白かった。
どこまでも客観的にものごとを見て、書いてきたマーティン。
初めて当事者になる事で今までの自分の無感覚や「真実以外への無関心さ」を自覚するくだりは良かった。
(本邦のマス◯ミは真実とかどうでも良いらしいけど)「真実を知る権利」ってなんだろう?
それを錦の御旗に横暴なことしてる印象あるからあんまりあの手の人たちは好ましくないけど、この作品は作者自身がジャーナリストだったらしく葛藤や矛盾などが書かれていて面白かった。
三部作らしく解説に残りのあらすじ載ってたけどなんか意外な展開になりそう。
オーストラリア舞台の作品は初めて読んだけど、日本の公安的立ち位置のキャラが結構いい味出してた!続きを読む投稿日:2024.02.20
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