極楽征夷大将軍
垣根涼介(著)
/文春e-book
作品情報
史上最も無能な征夷大将軍
やる気なし
使命感なし
執着なし
なぜこんな人間が天下を獲れてしまったのか?
動乱前夜、北条家の独裁政権が続いて、鎌倉府の信用は地に堕ちていた。
足利直義は、怠惰な兄・尊氏を常に励まし、幕府の粛清から足利家を守ろうとする。やがて天皇から北条家討伐の勅命が下り、一族を挙げて反旗を翻した。
一方、足利家の重臣・高師直は倒幕後、朝廷の世が来たことに愕然とする。
後醍醐天皇には、武士に政権を委ねるつもりなどなかったのだ。
怒り狂う直義と共に、尊氏を抜きにして新生幕府の樹立を画策し始める。
混迷する時代に、尊氏のような意志を欠いた人間が、
何度も失脚の窮地に立たされながらも権力の頂点へと登り詰められたのはなぜか?
幕府の祖でありながら、謎に包まれた初代将軍・足利尊氏の秘密を解き明かす歴史群像劇。
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商品情報
- シリーズ
- 極楽征夷大将軍
- 著者
- 垣根涼介
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春e-book
- 書籍発売日
- 2023.05.11
- Reader Store発売日
- 2023.05.11
- ファイルサイズ
- 1.4MB
- ページ数
- 552ページ
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この作品のレビュー
平均 3.9 (145件のレビュー)
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世間は傑物でも倒せない
最新の歴史研究に基づく令和版の太平記。
これまで描かれてきた色情魔で悪逆非道の高師直像や、英雄あるいは策謀家としての足利尊氏像は否定される。
じゃあこれが実像で史実かと言われれば、そんなことはおそ…らくないだろう。
太平記はあくまで軍記物語であり、いまだ作者も特定されておらず、成立年も不確かだ。
登場する武将の子孫が「活躍が書かれていない」と言ってどんどん書き替えられていった経緯もある。
なら史実としての信頼性も低く歴史的な価値もないのかと言うとそんなわけはなく、歴史上これほど日本人の思考の枠組みを規定してきた本もないはずだ。
その意味で、太平記という本はこれまでない新しい歴史書だった。
参考文献の一番目に出てくる亀田俊和の『観応の擾乱』を先に読んでいたので、この中で示された新たな解釈をもう小説に取り込んでいて凄いと感心した。
単にエピソードを断片的に拝借してというレベルではなく、新たな尊氏像とも整合性を保つ一貫したストーリーの肉付けがなされているので、物語として違和感がないばかりか、ちょっとこれ以外の解釈を受け付けなくなりそうなほど。
直木賞の選考会では委員たちから「読むのに時間がかかった」などと不平を言わしめるほど長大だし、宮部みゆきが「お勉強本」と評すほど、小説としての面白みが薄いとの辛口の評価もある。
確かに風景など情景描写はほとんどなく、物語も年記風に淡々と綴られ、登場人物たちの会話も平凡。
とりわけ選考委員たちが口を揃えるように、尊氏に対する直義と師直の反応があまりにもワンパターンなのは確か。
ただこうした瑕疵は本書に限らず歴史小説全般にも言えることだし、新たな尊氏像(ただし伊藤潤の『野望の憑依者』など先行例はある)を提示し、自分なりに解釈した太平記を描く事を目的にしているので、その意味では大変な労作だと思うし、大満足な一冊だった。
唯一の不満は、タイトルがちょっと能天気すぎることと、もっとエキセントリックな尊氏像を期待していたので、それが少し穏当なところに収まったことぐらいか。
それにしても足利尊氏という人物は、知れば知るほど好きになってしまう。
絶頂期に隠居を宣言したり、学界でも長年頭を悩ます不思議なキャラクターだ。
躁鬱病なのではないかと思うほど感情の起伏が激しく、弓がどんどん飛んで来てもだんだん楽しくなってきて笑い出すなどちょっとヤバい。
英雄的な所がなくド天然の愛されキャラで、リーダーシップのないリーダー。
戦前は三度も裏切った逆臣・朝敵の象徴で、尊氏を擁護した政治家は失脚すると言われたほどの嫌われ者。
そもそもが足利家の次男坊で、しかも側室の庶子という日陰の存在。
長兄が若くして死ななければ家督を継ぐはずもなかったし、当初はその子が元服するまでのツナギのはずだった。
近臣の者からも力量を危ぶまれ、影で極楽殿と嗤われていた。
その評価が一変していく過程は本書に描かれる通り、最初の討伐軍の遠征における尊氏の振るまいかもしれない。
本来なら初陣で華々しい戦果を挙げて見返すというパターンが正攻法のばすだが、直義が頭を抱えるようないつもの能天気な尊氏の返答が、意外なことに大器量の持ち主と持ち上げられることになる。
そんなわけあるかよって普通は突っ込みを入れたくなるが、そうでないとその後の展開の説明がつかないのだ。
確かに遠征後、尊氏の評価は幕府内で急速に上がり、北条家からの嫁取りの話にまで進むのだから。
ツナギの存在がいつのまにか衆目の一致する頭領にまで変貌を遂げ、やがては北条家から警戒される存在にまで肥大していく。
しかし尊氏本人は、ほんとはそんな当主の責任なんか進んで背負い込みたくなんかなかったし、和歌のうまい鎌倉御家人で一生を終えればそれで良いと思っていたに違いない。続きを読む投稿日:2024.03.13
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室町幕府を創建した足利尊氏と直義の兄弟の物語。知らないことばかりだったので、感心した。「極楽殿」と呼ばれ能天気だが世の中の動きを見通す兄と緻密ながら融通の利かない弟が、力を合わせて鎌倉幕府を滅ぼし、さ…らに建武の新政を打倒して室町幕府を樹立する。しかし、その後、様々な経緯があって二人は敵対してしまう。鎌倉幕府もそうだったが、どうして人は争わずにいられないのか。ため息とともに読了した。続きを読む
投稿日:2024.06.21
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