「音楽の都」ウィーンの誕生
ジェラルド・グローマー(著)
/岩波新書
作品情報
ウィーンはいかにして「音楽の都」になったのか.十八世紀後半のウィーンでは,宮廷や教会などによる支援,劇場の発展,音楽教育の普及と聴衆の拡大,演奏会や舞踏会の展開など,多彩な要素が相互に作用しながら,音楽文化が重層的かつ豊かに形成されていった.膨大な同時代の史資料を駆使して描かれる「音楽の都」の実像.
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商品情報
- シリーズ
- 「音楽の都」ウィーンの誕生
- 著者
- ジェラルド・グローマー
- 出版社
- 岩波書店
- 掲載誌・レーベル
- 岩波新書
- 書籍発売日
- 2023.02.21
- Reader Store発売日
- 2023.03.23
- ファイルサイズ
- 23.2MB
- ページ数
- 254ページ
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この作品のレビュー
平均 2.8 (4件のレビュー)
-
ウィーンがなぜ音楽の都になったのか?バッハ、ヘンデルたちはそれぞれ他の町で活躍していたし、イタリアがバロック音楽やオペラなど音楽先進国だった。グルックはパリ、ハイドンはロンドン、モーツアルトはプラハで…、サリエリはミラノすでに成功していたが、彼らの時代から既に音楽の都となり、この人たちやベートーベン、シューベルトなどを引き寄せた町だった。ハプスブルク家の皇帝一族や上流階級だけでなく、一般市民にまで音楽が愛されるようになったその時代背景を庶民レベルの音楽教育の状況などまで触れて解説してくれており、目が開かれる思いであった。北ドイツの諸都市が疲弊した七年戦争(1756~)も影響したというが、欧州の都市では類を見ないような民族構成の多様性、ハプスブルク家の皇族たちの音楽的才能を発揮したこと、ウィーン市民の社交ダンス熱などが、関係ありそうに感じた。ドイツ語圏でウィーンだけが、学問より芸術がはるかに深く尊敬、評価、支援され、文豪・哲学者はウィーンからは出ていない!とは気が付かなかったが面白い。絵画分野でもクリムトを始め、著名画家が多いという。続きを読む
投稿日:2023.10.07
日帰り帰省、往復の車中で読了。
現在にも続く、音楽の都=ウィーンのイメージ。
19世紀後半に、ドイツ・ナショナリズムの一面として形成された。
本書は、そのナショナリズムの中での形成過程ではなく(きっ…とそれはすでに研究があるのだろう)、時間を17~18世紀まで巻き戻し、この街の音楽文化を解きほぐしていく。
どちらかというと、都市としてはウィーンの同時代のヨーロッパにあっての後進性が浮き上がる。
パリやロンドンとの違いとして冒頭部分に挙げられるのが、市街区の小ささから、同じ建物に割と広い階層の人々が密集して住んでいたという条件。
これが社会階層が異なる人々にも、音楽が共有されやすい基盤になったという指摘が面白い。
皇帝一家もそれぞれが音楽を嗜むが、ローマ教皇の命を受け入れ、宗教音楽が音楽として自立する動きを牽制する。
18世紀後半には、音楽文化を庇護してきた宮廷・教会・貴族たちも力を失う。
劇場、バレエもその動きに翻弄される。
それ以外にも作曲家、演奏家も職を失い、音楽教師が大量に供給されることになる。
こうして、ウィーンでは召使の娘でさえ、ピアノを弾くという状況が生まれていく。
音楽が「業界」となるうえで、教育と楽譜出版、楽器制作にも目配りされている。
ただ、楽器制作は14世紀から始まっているとされていて、なぜ19世紀ウィーンで、開発競争のようにピアノ製作が盛んになったのかはあまり書かれていなかった。
これも類書があって避けたのか、とも思うけれど、どちらかというとそこに関心があったので、残念。
享受の場として、劇場はもちろん、音楽サロンと舞踏会が入っているのは、自分にとっては目新しかった。
上層階級は、社交範囲も限られ、音楽の楽しみ方も保守的だが、それ以下の人々には割と平等に音楽が楽しまれる機会が開かれていたという。
音楽文化を享受する裾野の広がりが大変なことになっている。
現在の高踏的な「クラシック」とはまた違う様相が見られて面白い。
そういえば、「クラシック」のドイツ語、「クラシッシュ」は、19世紀前半では「模範」「不滅の価値がある」程度の意味合いであって、特定の音楽スタイルや作曲家の作品を指すものではなかったことも、本書に教えてもらった。続きを読む投稿日:2023.05.06
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