小川さゆり、宗教2世
小川さゆり(著)
/小学館
作品情報
「神の子」じゃなく、私として生きたい。
旧統一教会の「教会長の娘」として生まれ、絶望の末に脱会した彼女は、なぜ両親から止められ、教会から妨害されても屈せず、「涙の告発」を決意するに至ったのか?「被害者救済法案」成立の立役者となり、「宗教2世」のシンボルになった小川さゆりさんの覚悟の手記、緊急刊行!
〈家族の生活の中心だった統一教会を私はどうして信じるようになり、そしてなぜ脱会しようと思ったのか。与えられた家族の価値観からどのように脱し、新たな家族を築く道を選んだのか。
この本のなかでこれから書いていくのは、私がなぜ、自分の顔を出して2世問題に取り組むに至ったかの半生です。〉(「はじめに」より)
(底本 2023年3月発売作品)
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この作品のレビュー
平均 3.7 (16件のレビュー)
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旧統一協会の2世信者であった著者の、教会に家族ごと依存していた日々、教会や家族の在り方に疑問を持ち脱会、そして「小川さゆり」名義で情報を発信して現在の日本のカルト宗教を規制する方法を模索しながら2世の…人権を訴える内容だった。
教会に依存するがために他のコミュニティから排斥されさらに教会に依存する、そしてじわじわと彼女を蝕んでいく苦しみの日々が赤裸々に描かれていた。
無条件に愛し愛されること。その大切さを実感していく。
過剰な依存は宗教に限らず、他のものにも当てはまるが、カルトに関してそこから抜け出す難しさや、孤独になることの弊害なども伝わってきた。
彼女が今度こそ幸せな家庭を築いていくことを願う。続きを読む投稿日:2023.10.30
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これ統一教会二世の本なんだけど超怖かった。キリスト教まではまだわかるけど、異性とも同性とも恋愛禁止で文鮮明が決めた韓国人と強制結婚。日本は罪の国で韓国は神が選んだアダムの国、信者は間違いを…犯すけど文鮮明は100%正しい、普通の人は堕落世界の人間らしい。
ランドセルも買ってもらえず、きょうだい全員が親戚からもらったおさがりでした。それでも、入学が近づいて赤いランドセルが段ボールに入って届いたときは嬉しくて、私は家にあった絵本やはさみ、のり、鉛筆を詰め込んで、家のなかをスキップしていました。
小学校のときはパジャマのような全身ピンク色の服で学校に行っていた時期もありました。それを見た同級生の男の子に、「マジレンジャーのピンクみたい」と言われ、とても恥ずかしかったことを覚えています。
転校からしばらくして、私たちきょうだいは母と一緒に校長室へ行きました。母が「うちはお金がなくて制服が買えないんです」と相談していて、校長先生がおさがりの制服を用意してくれたのです。卒業生が着ていた制服で、サイズを合うものを一緒に探してくれました。私とふたりの兄は以来、その制服を着て学校に行くようになりました。
引っ越した家は借家でしたが、そこでも両親はすぐに祈 禱室を作りました。 私は引っ込み思案で、自分に自信がない子どもでした。服装や髪型がみんなと違うことをいつも気にしていました。
当時の私はダンスもそうですが、歌や音楽も大好きで、家の中でよくひとりで歌ったり踊ったりしていました。そういったひとりの時間は、何も考えずにいられて好きでした。 ただ一方で、恋愛についての歌を歌ったりしていると、母に「堕落していくような歌やね。この世のそういう歌はみんなサタンが作ってるんだよ。お母さんは聖歌と賛美歌を聴いてほしいね」と注意されることもあり、歌うのがうしろめたくなったこともありました。
私は、自分がどういう性格で、本当は何がしたいか、そういうことがいまだにわからずにいました。人に影響されやすくて、こっちの人が言ってることも正しいし、でもこの人の言ってることも正しそうだし、どれが本当なんだろうと迷ってしまうのです。 ですが、最後にはやっぱり教会の言うことが正しい、教会を信じていれば大丈夫だと思っていました。
私は学生時代から、日本は罪の国であり、日本人は罪深い民族だと聞かされていました。
いま、地上にいる人たちのほとんどは罪を背負って生まれてきた堕落人間であると統一教会では学びました。私たち人類の始祖アダムとエバがサタンの誘惑に負けて罪を犯したので、そこから生まれる子孫たちもサタンの子となり、罪を背負ったまま繁殖してしまったのが、いまの私たち人類なのだと教えられていました。 そういったサタン世界、堕落世界となってしまった人類の問題を解決するために、神は文鮮明をこの地上に送ったのだと、統一教会で学んできました。私が教会で聞いた話では、イエスは結婚できなかったから使命を全うできなかった、というのです。
統一教会では、韓国はアダムの国だと学びます。それはなぜかというと、世界に真理を発信したメシアである文鮮明が生まれた国であり、神に選ばれた民族の国だからということでした。 母からはいつも韓国のものはすべていい、韓国人と結婚することは素晴らしいことだよと教えられてきました。テレビドラマをあまりよく思わない母も、韓国の歴史もののドラマはよく見ていました。私も幼い頃から韓国語を習い、韓国語弁論大会に参加したりもしていました。
好きな音楽ややりたいことも気軽に話すことさえできませんでした。あるとき、「モー娘。って本当にかわいい。私もなりたいな」と軽く言ったら、「そんなのは絶対だめ、芸能界なんて一番サタンの世界だよ」と母から強く言われたこともあります。自分の好きなものを親に受け入れてもらえないことは寂しかった。
韓国は神が選んだ国で、韓国の人と結婚することはとても名誉なこととされていたので、韓国で生活できるよう、高校で選択していた韓国語は一度学年1位を取るほど勉強をしていました。そのようなこともあり、卒業後の進路希望は兄2人と同じく韓国にある統一教会系の大学である 鮮 文 大学へ行くと書いていました。それほど、教義について確たる信仰がありました。
積極的に活動をしていくなかで、同じ役事チームにいた、2世のお姉さんであるAさんに憧れを抱くようになりました。メインボーカルとして役事を誘導する姿がとてもかっこ良く映りました。Aさんも私のことを気に入ってくれて、仲良くなって一緒に行動を共にしていました。 しかし、手を絡めてつないできたり、髪を優しく撫でたりと、だんだんAさんからアプローチとも思える言動が増えていき、身体的な距離が近くなっていくにつれ、私は違和感を抱き始めました。教義としては良くないことと思いつつも、仲のいい関係のままでいたいという思いになっていました。 Aさんとふたりきりの時間が増え、私はそれが嬉しい半面、心が動揺して、徐々にストレスが 募っていきました。
いま思えば私がそこまで混乱したのは、統一教会では恋愛は罪で、ましてや同性の恋愛は神がとても悲しむ、絶対にだめなことだと聞いていたからだと思います。教会では家庭を持って子どもを産みなさいと教えられていました。 その後は女性にそういった感情を持ったことはありませんし、清平のときも、もしかしたらAさんに対する憧れをこじらせていただけかもしれません。
ですが、男女にかかわらず、そして対象が異性・同性であるにかかわらず、恋愛感情というのは人間として当たり前に湧き出てくるものです。年頃であれば 尚更 でしょう。抑えられるようなものでは、そもそもないのです。 その人間として当たり前の恋愛感情を厳しく禁止されることによって、私は罪悪感を植えつけられているように感じていました。
女性霊媒師はその行為をしながら、通訳の人に何かを話していました。後に通訳の人に聞いたところ、私には「従軍慰安婦の霊が憑いている」と言っていたそうです。 日本人女性には従軍慰安婦の霊が憑いていることが多く、特に子宮のあたりには蜂の巣のように悪霊がこびりついている、という話をのちに聞きました。それを祓うために、彼女は私の子宮のあたりを叩いていたのだと思います。彼女は時折目に浮かんだ涙を拭っている様子もありました。
それは自分の価値観の根本のところに染みついていました。幼い頃から 20 歳まで教え込まれてきた価値観が、脱会を決めたとたんに意味を持たなくなってしまい、かといってこれだという明確な価値観もない。自分が空っぽになってしまったような感覚でした。 その衝撃は、自分のなかでも想像以上に「厄介」なものでした。 これまで自分のなかにあった思想や価値観がすべて抜けてしまい、人との接し方がわからなくなり、たまに教会のことがフラッシュバックする。 生きていくことがうまくいかない。 ごく普通に生きている人を見ても、まず「ああ、この人は堕落世界、サタン世界の人だ」と感じてしまい、そんな世界で自分がどう生きていけばいいのだろうと思ってしまう。そのあと、「いや、私はもう信仰は捨てたのだから、この世界できちんと生きていかないといけない」と思い返したりと、思考が常にぐるぐると回っていました。 インターネットで統一教会について検索して、信じていた文鮮明の教義に対する批判も目にするようになりました。 それでも、なお人に対する恐怖心が強く(だってサタン世界の人だと思ってしまうのですから)、バイト先でも人間関係がうまくいかなくなりました。
精神を病んでいた私が路上ライブをするのを不思議に思うかもしれませんが、当時の私にとっては、音楽がなければ本当に死んでしまっていたのではないかと考えるほど、音楽が心の支えでした。音楽を聴くことやギターを練習することは、人生の価値観も目的も失っていた私の唯一の救いだったと感じています。
だけど、歌を歌うとその状態から一度頭がリセットされて、空っぽの状態になるような気がしました。頭が勝手に何かを考えて怖がっている状態を、少しだけ休ませてあげられる。歌に集中していると悲しいことも忘れられました。だから、この時期の私には歌うことだけが心の 拠り所だったように思います。
私が子どもに一番求めるのは、自由です。親の価値観を押しつけるのではなく、やりたいことをやらせてあげたい。 偏った思想を親が押しつけなくていいし、教育面や経済面でちゃんと親の責任を果たした上で、本人がやりたいことを自由にさせてあげたい。 自分の子どもが、親である私たちの望まないことをやりたがる可能性もあるでしょう。両親からすれば、私もそうだったと思います。そのときに、子ども本人の目が輝いているかということはすごく大事だと思っています。
それからテレビや新聞、雑誌から取材の依頼が入るようになり、じきに野党のヒアリングに呼ばれることも増えました。 最初に政治家の人から声をかけられたときは、「ちょっと怖いな……」と感じました。2世信者の味方をして支持率を上げたいだけなのではないか、と考えてしまう気持ちがあったからです。 けれど、一度話を聞きに行くと、その印象は変わりました。 「この問題にいままで取り組んでこなくて申し訳なかった。被害の大きさを知って何とかしたいと思っている。やはりこの件には法律が必要です」 そう率直にお話しになられたからです。
だから、反セクト法で統一教会のような団体を規制し、日本という国にカルト団体が存在できないようにしてほしい。ましてや一部の宗教2世のように、生まれた瞬間からある宗教への信仰を強制させられるようなことは、あってはならないと私は思います。 また、子どもへの宗教虐待をなくすための法律や、困難な状況にある子どもが自分の意思で親から逃げられるような仕組みを作るべきだと考えています。続きを読む投稿日:2024.03.05
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