この作品のレビュー
平均 4.4 (6件のレビュー)
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ゴータマブッダは、実践の人だったため、自分もできることから修行を始め、仏陀と一心同体になることを願うことにした。
マインドフルネスにより無になることで、一心同体となる。断捨離、写経、阿字観瞑想、音楽、…読書、散歩。
修行自体は、ゴータマブッダも難しいと言っている。特に在家信者には難しいので、簡単に実践できる五つの戒がある。お酒を飲まない、の約束はできそうにない。続きを読む投稿日:2023.07.23
本書はゴータマ・シッダールタの言行録という体裁を取るが、形式も、議論の詳細さも、ゴータマの呼称でさえもバラバラで、何の説明もなく過去生での発言まで採録されるという有様であり、かなり雑多な内容の寄せ集め…という印象は拭えない。それでも何度も何度も繰り返されるゴータマの決め台詞はとても印象的で、力強いものが多く、長い歴史の中を何とか生き抜き、ヨーロッパでも19世紀に一大ブームを巻き起こしただけの書物としての強さを感じる。
内容としては第4章が群を抜いて高度な議論が展開され、一見するとその他の章の紋切り型で表面的な議論と矛盾するような主張も散見されるが、そのこと自体も本書の魅力であり、精緻な体系化への誘惑を後世の人々に与えずにはおかなかった重要な要素であろう。
バラモン教内部から発生した沙門の一人としてのシッダールタがどのように自らの学説を正当化していったのか、新宗教の発生において関心を引くところであるが、本書で展開されるゴータマの戦略は非常に興味深い。それは一切の論争を行わないというものである。論争においては自らの説への執着があり、相手の説への軽蔑が必ず生じる。これは苦しみを生むものであるから、自説が優れているとか、相手の説が劣っているとか、言ってはならない。論争を挑もうとするものに対しては「ここにはあなたの論争相手はいない」(297ページ)と答えることになる。論争は非難と称賛を生じさせるだけで真理とは何ら関係がないとシッダールタは考えたのである(316ページなど)。それでいて論争を行わないことこそ真理を理解したものの振る舞いであるとし、暗に自らの始めた宗教の優位性を説いている。面白いのは、自分を他人と等しいと思うことも、優劣を競うことと同じであるとし、相対主義をきっぱりと否定していることである。自他の説を同程度に正しいと考えることも、やはり自説に執着していることに変わりはなく、真理が多数あるか、あるいは全て誤りであるか、という結論にしかならないので、必ず矛盾を生むということなるからである(320ページなど)。あえて論争しないことによって、論争する前に、自説が真理であることを論証してしまっているのであり、この理論構成は見事であるというほかない。
一方で、シッダールタの主張は論理的な正しさに終始するものではなく、あくまで実践に基づくものである。「ある人たちは、真理を知り、見ることだけで心の清浄が得られると考える。しかし知ること、見ることがなんの役に立つだろうか」(321ページ)。しかもその正しさは形式的に評価されるものではない。つまり、評価すること自体がすでに迷妄であり、それゆえ、「戒律や請願、悪行や悪行を捨てよ。浄不浄を気にかけなければ、人は心寛ぎ、安らかに生きられる」(319ページ)ということになる。
ところで、訳者は310ページの次の一節を仏教が体系化された後の時代における挿入であろうと指摘している。「ものごとを認識せず、認識しないのでもなく、認識するでもなくしないのでもない境地に達したならば、彼には個人存在というものは消滅する。なぜなら、さまざまな個人存在は認識作用から生起するからである」。しかし、上記の浄不浄を気にかけないというのはまさしくこの一節と同じことを言っているのであって、あながち後世の創作と考える必要はないのではないか。シッダールタは、何度も何度も、我々に問いかける。自らこの世の苦しみを生み出す原因を招いていないか、苦しみの消滅という目的に囚われてかえって苦しみの存在を前提としていないか、自分だけはそういった苦しみの原因とは無縁だと思い込んで安楽に耽ってはいないか、そういった終わりのない反省を我々に突きつける。このあまりに厳格で救いのない教えの実践の先にあるのは、しかし、古代インド宗教における革命である。「いまだ煩悩が残っていても、死後再びこの世に生まれてこないことである」(257ページ)。続きを読む投稿日:2024.04.07
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