虚ろな革命家たち ――連合赤軍 森恒夫の足跡をたどって
佐賀旭(著)
/集英社学芸単行本
作品情報
第20回開高健ノンフィクション賞、史上最年少受賞!
「脱」というより、「没」政治化(a-political)が極限まで進んでしまった現代日本の若者にとって何を意味するのか。この困難な問題に「平成」生まれの三〇歳になったばかりのフリーランスライターが挑戦している点で出色である。――姜尚中(東京大学名誉教授)
この作品の良さは、読む者に答えを示したことではなく、さらなる問いを投げかけたことだろう。――田中優子(法政大学名誉教授)
すべてを政治化することの危険性、不安と恐怖から湧き上がる防衛意識など、現代においても重要な問題を提示しているのだ。――藤沢 周(芥川賞作家)
時代の「感触」は、このようにして人から人へと受け継がれていくのだろうか。ノンフィクションによる「経験の伝承」という視点からも素晴らしい作品と言えよう。――茂木健一郎(脳科学者)
今年三〇歳になる筆者が同世代の若者に対して、なぜ政治的なイシューを共有できないのかと向ける切実な問いかけだ。――森 達也(映画監督・作家)
(開高健ノンフィクション賞選評より・五十音順)
<連合赤軍事件とは。今、若者の目線で見つめ直す。>
大学院で学生運動について研究していた著者は、ある手紙に出合う。父から子への想いが綴られたその手紙は、12人の同志を殺害した連合赤軍リーダー森恒夫によるものだった。残酷な事件を起こした犯人像と、手紙から受ける印象が結びつかない筆者は、森恒夫の足跡(そくせき)を追い・・・・・・。
なぜ28歳の青年・森恒夫は日本に革命を起こそうとしたのか、なぜ同志を殺害したのか、そしてなぜ自ら命を絶ったのか・・・・・・。
その答えを求め、森の高校時代の同級生、北朝鮮に渡った大学時代の後輩、「総括」を生き延びた連合赤軍の元メンバー、よど号ハイジャック事件実行犯の一人・若林盛亮らと対話する。
――誰だって、「彼」に成りうるのかもしれない。
開高健ノンフィクション賞を史上最年少で受賞した若き著者が、事件を追いながら、いつの世もつきまとう「政治と暴力」を解決するヒントを探る。
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商品情報
- 著者
- 佐賀旭
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社学芸単行本
- 書籍発売日
- 2022.11.25
- Reader Store発売日
- 2022.11.25
- ファイルサイズ
- 1.5MB
- ページ数
- 272ページ
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この作品のレビュー
平均 3.6 (8件のレビュー)
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2022年開高健ノンフィクション賞受賞作
著者は早稲田の院生時代に学生運動について研究していたというフリーランスの若手記者です。
著者は院生時代に連合赤軍のリーダーだった森恒夫が子供に宛てた思いのこ…もった手紙を読む機会があった。
いくつもの凄惨な事件を起こした凶悪犯罪者の一面と、手紙の内容とのギャップに森恒夫の生涯に興味を抱き調べることに。
どうして二十代の青年が暴力革命を志したのか、なぜ志しを共有した仲間を殺してしまったのか、さらにはなぜ公判で自らの信念を主張することもなく拘置所で自殺(73年元旦)してしまったのか。
そんな謎を解き明かすために、森の高校の同級生や北朝鮮に渡った大学時代の後輩や連合赤軍の生き残りメンバーやよど号ハイジャック事件実行犯・若林氏らに取材を試みる。
森恒夫という名前。私は知っていたような知らなかったような…。連合赤軍、あさま山荘事件のキーワードといっしょに説明されると、「あ~知ってる、知ってる」という程度のものだった。本書を読むまでは。
森は大阪では名門として名の通っている府立北野高校の剣道部で主将だった。主将と言っても猛者とかでなく誰も主将やりたがらないのでおとなしい森が押しつけられてなったと…とても革命戦士のイメージはない。ちなみに北野高校は梶井基次郎や手塚治虫、橋下徹他多数の政治家の出身校だ。
どうやら大阪市立大に入り、先輩に誘われて学生運動を始めて激変したようだ。
紆余曲折を経て、とうとう森は連合赤軍のリーダーになる。
ちなみに連合赤軍は赤軍派と革命左派の統合組織で森は旧赤軍派側幹部だった。
合併組織の常なのだが、赤軍派と革命左派のどちらが主導権を握るかという暗闘が繰り広げられ、それが仲間への激烈な総括=リンチへとつながる。
私も今の勤務先に入り2度も合併を経験しており上層部の主導権争いはたくさん見てきたのでよくわかる。まさに生きるか死ぬか、食うか食われるかだ。
連合赤軍結成時、赤軍派メンバー9人、革命左派は19人。数的不利なのは赤軍派だ。赤軍派は主導権を握るのに必死で些細なことでイチャモンをつけ革命左派の追い落としを図る。
これに対して革命左派の責任者だった永田洋子は赤軍派の女性メンバーが指輪をしていることを「革命戦士としての資質に反する」と批判したりする。
総括=リンチは日常のささいなことをきっかけに行われ、次々と犠牲者を増やしていく。
総括に異議を唱えるメンバーも総括されていく。当時指名手配されていたメンバーらは閉鎖的な山奥のアジトで、不安と恐怖を増幅させていく。疑心暗鬼からくる敵意は次々と仲間へと向けらていくことに。結果連合赤軍は、12人もの仲間を殺害。
半世紀前の大事件なのだが私はまだこの世に生を受けておらずリアルタイムでは知らないが、オウム事件と同じぐらいにインパクトがあったんだろう。
この事件をきっかけに政治的なポリシーをもつことに、日本人全体が特に若者たちが忌避感を持つようになったのではないか。現代における若者たちの選挙の投票率が象徴する政治の無関心はこの事件が原因のうちの一つではないかという思いを抱いた。
それはオウム事件後に宗教全般に対するもやもやとした嫌悪感が広まったことに相通じるように思う。
世界ではたくさんの国の若者が、母国をよりよくするために政治に関心を持ち政治談義に花を咲かすという。また人生にとってよりよく生きるために宗教は必要欠くべからざるものだという考えがグローバルスタンダードだと聞く。
自戒も込めてこの国はこれからどうなっていくのだろうか…
続きを読む投稿日:2023.07.16
このレビューはネタバレを含みます
1992年生まれの著者が50年前の連合赤軍のリーダー森恒夫を中心に取材し、考察する。
レビューの続きを読む
第1章中学校高校と同級生から人柄を聞く 在日朝鮮人差別、日韓条約の反対闘争で初逮捕 著者の日韓の歴史的国民的微妙な…関係についてあまりに素朴なので驚く。
第2章北野高校で剣道部部長就任事情と頼りないリーダーシップを同部員が語る
第3章よど号ハイジャック事件で北朝鮮に渡った若林氏と70年代の政治闘争の取材。
第4章連合赤軍アジト榛名山現調
第5章植垣取材 赤軍派と革命左派の合流の主導権をめぐる心理的相克。
第6章総括連合赤軍の全体像を残す会雪野取材 印旛沼事件での二人殺害を端緒とする主導権争い
第7章森の自殺と妻子
第8章中核派取材 所属組織の独善的信仰と組織防衛の類似性
現実から遊離した組織体の危険性を再確認。
一般大衆、労働者が支持する政権像を提示できない空虚さが際立つ。
焦点の当て方がやや雑な気はするが自らの足、頭で考察したルポとして興味深い点も多くあった。続きを読む投稿日:2023.08.15
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