名探偵のいけにえ―人民教会殺人事件―
白井智之(著)
/新潮社
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病気も怪我も存在せず、失われた四肢さえ蘇る、奇蹟の楽園ジョーデンタウン。調査に赴いたまま戻らない助手を心配して教団の本拠地に乗り込んだ探偵・大塒は、次々と不審な死に遭遇する。奇蹟を信じる人々に、現実世界のロジックは通用するのか? 圧巻の解決編一五〇ページ! 特殊設定、多重解決推理の最前線!
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この作品のレビュー
平均 3.8 (201件のレビュー)
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「奇跡は本当に存在するのか?」
これまでにない新しい試みがなされていて面白い。
カルト教団内で起こる連続殺人とか、お約束の不可解な密室殺人が実は教義を守るためのものだったとかは、さして珍しくもない。
それに終盤で事件全体の推理が…何重にも重ねられ、そのたびに覆され構図そのものが置き替わるというも数多く試みられてきた。
ただその場合、推理は複数の探偵役でなされることが多いのだが、今回の場合、一人の探偵が「信仰者の推理」と「余所者の推理」という2つの、矛盾し対立するトリックを提示して、真相に迫ろうとするのが面白い。
つまり、奇跡は存在するという前提では成立する「信仰者の推理」から導かれたトリックが、「余所者の推理」でも実行可能かどうかが検証されるのだ。
「余所者の推理」が通常の推理だとしたら、「信仰者の推理」は人民教会の集団妄想に染まった、正しく知覚できず、認識にもねじれが生じた信者側の推理だ。
非科学的で嘘八百のそんな推理がなんで必要かというと、次の状況を考えるとわかりやすい。
自分たち三人は、人民協会に入信したことで怪我や病気の症状が一切なくなったと感じている。そこに信者ではない一般人の女性研究者が聞き取り調査に現れる。
4人で紅茶を飲んでいると、研究者だけが青酸カリ特有の症状で急死してしまう。
どのカップに誰が口をつけるかわからない状況で、かつ犯人の目的が研究者殺害にあったとすると、犯人はどうやって彼女のカップにだけ青酸カリを入れることができるのか?
探偵役は頭をひねるが、信者三人にすれば何の盲点もない。
なぜなら、犯人はすべての紅茶に毒を入れたはずで、それで死んじゃうのは、信者でない彼女だけとなるからだ。
いや、信じてても死ぬだろうと普通はなるんだけど、信仰者の思考回路が理解できなければ謎は解けない。
他にも、車椅子なしでは移動できないのに、信仰で脚が直った、それでも車椅子が手放せないのは愛着があるからだと、教団内では現実と妄想の矛盾に対して、信者が無意識に辻褄合わせを行っている。
このように、カルト教団内で起こった殺人の推理は、信仰者にも納得できる論理で語られる必要があるのだ。
もちろん部外者である一般読者は、そんなおかしな推理を聞かされても困る。
だが、殺人を犯す理由やその方法が合理的に語られるため、あとから探偵がこれはある奇跡を前提とすれば成り立つ、信仰者の推理だと規定されるため、あっと唸らされることに。
こんなに何重にも捻った構造なのに、小説はまったく面白くない。
特に2年前に直木賞を受賞した米澤穂信の『黒牢城』と比較してみると明らかだ。
あちらも、戦国時代という時代設定なければ通用しない武士のロジックから推理が展開され、救援もないまま篭城を続ける城内だからこそ起こる殺人や奇跡をミステリに昇華しているのだが、中途の物語部分も含め、史実とのリンクのさせ方も雲泥の差がある。
残念な点を上げればきりがない。
・"ゲボ"やら「一秒でも早く死ね。糞を洩らして、泣きながら、死ね」という台詞など、とにかく品がない。
・お約束の推理の開陳の場が、カルト信者との対話集会と化しており、合いの手の入れ方も変なら、探偵がまるでブロレスのマイクパフォーマンスさながらになっているところも相当に変。
・歴史的事実である人民寺院集団自殺事件をなぞりながら、真相を教祖による扇動や強制ではなく、探偵の計略だったとするという、無遠慮さやセンスのなさ。続きを読む投稿日:2023.12.18
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特殊設定やトリックの難解さ、残忍さから大衆受けはしないのだろうが個人的には傑作。
白井氏の作品の中では(残忍さという観点で)間口が広いのかもしれない。投稿日:2024.05.04
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