ソビエト帝国の崩壊~瀕死のクマが世界であがく~
小室直樹(著)
/光文社未来ライブラリー
作品情報
1980年8月、本書は小室直樹氏のデビュー作として刊行され、40万部超のベストセラーとなった。小室氏は一躍時代の寵児となり、様々なメディアで言論活動を行うようになる。91年、予言通りにソ連は崩壊する。なぜ小室氏だけにこのような分析が可能だったのか? 予言の背後にある理論はどういうものだったのか? 今でも色あせない学問的価値を持つ名著を復刊。伝説の「小室ゼミ」出身である橋爪大三郎氏推薦・解説。
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商品情報
- 著者
- 小室直樹
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 光文社
- 掲載誌・レーベル
- 光文社未来ライブラリー
- 書籍発売日
- 2022.08.20
- Reader Store発売日
- 2022.08.09
- ファイルサイズ
- 0.8MB
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この作品のレビュー
平均 3.8 (4件のレビュー)
-
1980年8月にソ連崩壊を予測した奇跡の書として知られる
ソ連の崩壊は、1988~1991かけて実際に起きた。
気になった言葉は以下です。
・ソビエト帝国は「資本論」という一冊の本が生んだ巨大な人…造国家である。
・資本主義をへないでできてしまった社会主義、その存在の矛盾にすべてが帰着する
・階級のない国、ソ連という幻想:ソ連には革命によってなくなったはずの階級があり、その階級間の矛盾と対立がソ連社会に大きな影を落とし、ソ連の外交政策、国内政策を、大きく動かしている。
・威信とならんで重要な社会的な差別原理は勢力である。これは権力と訳されることもある。
・ソ連の特権階級の頂点にエリート階層がいる。これには、まず共産党、政府、軍などのトップからなる特権的支配階層がある。
・お金をもっていても物を買えるとはかぎらないソ連社会では、月給などいくら高くても、あまり意味がないのだ。一般大衆が夢想もしないような現物給与が与えられる。
・公認されない特権階級がもたらすのは何か ①正式に認められていない階級でなく、あくまでも非公式であること ②重要なことは市場機構を媒体せずに人為的配分に基づく階級である
・プロテスタンティズムの倫理を媒体として発展してきた資本主義の精神に基づく社会では、経済的に富んでいるということは、すなわちそれだけ大きな責任を社会に負うということである。これを、ノブレス・オブリッジという。日本での、武士道もその一つである。ソ連の特権階級にはそれがない。
・ソ連の特権階級には、救いがたい致命的問題点がある。それは、富も、威光も、権力もみんなエリート階層が独占しているということである。こんなときには、社会がいちばん危ない。
・フランス革命も、ロシア革命もみんなこんなありさまであった。革命以前においては、体制はあまりにも堂々としているので、だれも革命がおこるなんて思ってもみない。ところが、革命が起きるとたちまち巨石が急坂を下るがごとく、フルスピードで回転を開始し、あっというまに王朝も貴族も圧殺され、影も形もなくなってします。
・ドイツや、日本ではそれは起こりえない。なぜなら、分散してもっているから。富は町人、名誉は公卿、権力は武士のような社会には急激な革命は起きにくいのだ。
・ソ連の企業におけるノルマは、量にあって質にはない。もっと需要なことは、消費者の好みに関しては、まったく責任を負う必要はないということだ。
・要するに、なんでもいいから多量に生産した者が評価されるのだ。
・ソ連の企業においてh、技術革新が極めて行われにくいことにならざるを得ないのである。
・ソ連がマルクス主義の国になったことは、日本にとって、たいへん幸せなことだったのではないか。本来日本の産業の大変な強敵なはずなのに、みずからの内部矛盾により、その潜在力をまったく生かせないからだ。
・ここで注意すべきは、私営農場だ。全体の面積としては、わずかに1%にもみたないものでありながら、その所得については、なんと全体の27%にもおよぶ。
・ソ連および東欧諸国にとって深刻なのは、マルクス主義がイデオロギーとしての魅力を完全に喪失してしまったことだ。
・日本では、宗教が異なっていても、行動様式は変わらない。しかし日本以外の国では宗教を異にすれば、風俗、習慣、規範などすべてちがってくるのである。このため宗教を異にする人とは結婚はできない、と考えたほうがよい。
・儒教やヒンズー教においては、歴史は、永遠のくりかえしであって、現在は、歴史の次の段階に対する一つのプロセスであるという考え方はまったくみられない。
・マルクス、レーニンは、ユダヤ教の預言者である。マルクス主義の解釈として、大きな謎となってきた諸点も、これをユダヤ教と対比して解釈しなおしてみるとたちまち氷解する点も少なくない。
・ソ連はローマ帝国の末裔である。現在のソ連を考える時、忘れてはならない点は、第1に、この国がユダヤ教の原理に近いマルクス主義という宗教にのっとった国であること、第2に、ソ連という国は、東ローマ帝国の伝統を継ぐ国であるということだ。
・ローマ・カトリックにおいて、聖俗二元論をとっているが、ギリシア・カトリックにはそれがない。ビサンチンでは、東ローマ皇帝は同時に宗教上の首長となる。
・支配とはあくまでも人間行動の外面的支配にとどまるものであって、人間の内面は、あくまでも自由でなければならない。ソ連体制下において、そもそも内面的自由、良心の自由がないと知ったとき、ソルジェニーツィンは、敢然としてソ連体制に反抗し、それを否定するのである。
・スターリン批判は、同時にレーニンをもいっしょに否定しまったことになる。ソ連においては、共産主義そのものがスターリンの信仰と密接に結びついて成立したものだった。スターリン批判により、ソ連人は、アラーに逃げられたホメイニになってしまった。
・ソ連は巨大な国鉄である。
・自己目的化した組織のなかで、最大のものが軍隊である。戦前の日本でも自己目的化した軍隊は、国家の癌であった。国家は軍隊によって破局にみちびかれることになる。
・関東軍とノモンハンでやり合った、シベリアの将軍ジューコフは、日本軍のこわさを知っていた。ノモンハンは練兵度の低い部隊であったが、それでもソ連軍に五分の闘いを挑んだ。ゾルゲ情報によって日本のシベリアでの侵攻がないことを知ったソ連は、シベリア守備の近代化部隊を率いていたジューコフを欧州戦に投入することができ、ナチスの侵攻を辛くも食い止めた。
・ソ連は自軍が弱いことをよく知っていた。大戦でロシア・ソ連が勝利したことはない。それゆえにソ連は脅しだけで、戦争を起こすのは、周辺国の内戦レベルにとどめていたのである。
・国家の行動原理には2つのものがある。1つはワールドパワーとして世界に果たすべき責任行動、もう1つはローカルパワーとして国益にそった行動である。
・法とは、いわば主権あっての法である。したがって超法規的という考え方がすでに日本人の法の理解の欠如を示している。
・天皇、総理、国会の連絡がとだえると日本は国家ではなくなる。
・シビリアン・コントロールを必要とするような防衛力をもってはいけない、という規定があるにもかかわらず、国会議員からはじまって自衛隊、国民に至るまで堂々と、シビリアン・コントロールを話題にしている。
目次
まえがき
1 ソビエトの内部崩壊がはじまった
1 ソ連社会はロシア革命直前とそっくりだ
2 ソ連的経営には致命的欠陥がある
3 中世的意識のままのソ連労働者
4 農奴意識から脱けきれないソ連農民
5 マルクス主義はユダヤ教
6 ソ連式マルクス主義は、神政政治である
7 ソ連の内部崩壊はもう止められない
2 ソビエト軍は見せかけほど恐くない
1 ソ連軍を、”張り子の熊”にした組織の論理
2 みずからの弱さを知ったソ連軍が危ない
3 日本を滅ぼす”平和・中立”の虚構
主要参考文献
解説 橋爪大三郎続きを読む投稿日:2022.11.12
ソ連崩壊をいち早く見抜いた著者が、社会学的知見に基づき、ソ連の政治、経済や宗教的特徴を分析した予言書。日本を含む資本主義と、ソ連のような社会主義国家の特徴を、マルクス『資本論』をベースに分析する。前…者、すなわち資本主義の場合、消費者の主権が強く、利潤追求のために、組織が合理化されていることを挙げる。それに対してソ連の社会では、非公認の特権階級が存在してることや、貨幣を所有したとしても、必ずしも商品を購入できるとは限らない。社会主義社会では、貨幣が根本的な富とはならず、生産手段が私有化されないなど、資本主義社会における論理が通用しない。
また、本書では西欧とソ連の権力構造の違いについても解析する。、ローマ・カトリック世界、すなわち、俗なる秩序と聖なる秩序を有しており、それが近代デモクラシーに繋がったと、著者はいう。一方、ギリシャ・カトリックは、俗なる世界の支配者は、同時に聖なる支配者でもあるという。そこから、ソ連型のマルクス主義は、西欧型と異なり、宗教的な理由があると見抜く。
最後に、日本の国防のあり方についても言及しており、中立が成立するには、周辺国の理解と尊重が欠かせないと警告する。続きを読む投稿日:2023.12.03
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