日本が先進国から脱落する日――“円安という麻薬”が日本を貧しくした!!
野口悠紀雄(著)
/プレジデント社
作品情報
【内容紹介】
アベノミクスの円安政策が日本を急速に貧しくした‼
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称され、世界第2位の経済大国だった時代は、もはや遠い過去。今や日本は、 平均賃金がOECDの中でも最下位グループという低さで、国別の豊かさの目安となる1人あたりGDPの順位も下がり続け、数年後には韓国に抜かれると見られている。
なぜ日本の経済成長は止まり、「貧しい国」に成り果ててしまったのか――。
じつは、日本がこれほどまでに貧しくなったのは、アベノミクスの期間である。
「アベノミクスの円安政策が、労働者を貧しくして株価を上げ、日本を急速に貧しくした」
こう指摘する経済学者の野口悠紀雄が、購買力やビッグマック指数、高度教育力、デジタル化などさまざまな角度から日本の長期停滞の原因を徹底分析。
日本政府は2031年までに実質2%成長を予測しているが、このままではこのシナリオが実現することはない。むしろ、 経済成長著しい韓国、中国、台湾などにも抜かれ、先進国から脱落するかもしれないと警鐘を鳴らす。
日本経済のどこが問題で、復活するためにはどんな可能性があるのか、そのためにはいま何をすべきか――。日本経済の20年後を展望するための1冊。
【著者紹介】
[著]野口 悠紀雄(のぐち・ゆきお)
1940年、東京生まれ。1963年、東京大学工学部卒業。1964年、大蔵省入省。1972年、エール大学Ph.D. (経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。
著書に『情報の経済理論』(日経経済図書文化賞)、『1940年体制―さらば戦時経済』、『財政危機の構造』(サントリー学芸賞)(以上、東洋経済新報社)、『バブルの経済学』(日本経済新聞出版社、吉野作造賞)、『「超」整理法』(中公新書)、『仮想通貨革命』(ダイヤモンド社)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞出版社、大川出版賞)など。近著に『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』(文春新書)、『「超」英語独学法』(NHK出版新書)、『「超」メモ革命』(中公新書ラクレ)、『良いデジタル化 悪いデジタル化』(日本経済新聞出版社)、『データエコノミー入門』(PHP新書)、『CBDC 中央銀行デジタル通貨の衝撃』(新潮社)、『入門 米中経済戦争』(ダイヤモンド社)、『リモート経済の衝撃』(ビジネス社)などがある。
【目次抜粋】
第1章 信じられないほど貧しくなってしまった日本
第2章 円安という麻薬で改革を怠った
第3章 「安い日本」を理解するための経済指標
第4章 物価が上がらないのは、賃金が上がらないから
第5章 日本停滞の原因をアメリカに学ぶ
第6章 デジタル化に遅れた日本
第7章 亡国の円安20年史
第8章 日本は1%成長できるか?
第9章 高齢化のピークに向かう:2040年問題の深刻さ
第10章 将来に向かっていま何をすべきか?
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この作品のレビュー
平均 4.0 (10件のレビュー)
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この本を評価するには、円安の是非を問う必要があり、それに対する政策介入の成果を確認する必要がある。円安は日本にとって良いのか、悪いのか。見方や立場によっては円高だって悪者にされるのである。本著の立場は…、通貨の相対的価値の前に「良い」「悪い」と修飾語をつける事。
外国為替市場で円に対する需要が増え、ドルに対する需要が減るので、為替レートは円高になる。
政治には円安を求める傾向がある。円安になれば輸出企業の利益が増え株価が上昇するからだ。大企業を優先するなら、円安誘導が正しく、しかし、それにより輸入物価が上がり、コストプッシュインフレでは賃金も上がらず生活は圧迫される。国民には嬉しくない「悪い」円安だ。
GDPの議論に入る。そこから産業構造の比較へ。改めてショックなのは、本著で試算したアップルの平均年収で4年働けば、日本の40年に相当するという事実。野球選手や投資で儲ける人と比較しているようなもので、アップルに務められる希少性を考えればこんな比較に意味がないとも思うが、問題は、アップルに限らず、平均的に日米賃金格差がある事だ。
暗い話題が続く。1965年以降に生まれた人は、70歳にならないと年金を受給できないように、支給開始年齢の引き上げが行われる可能性がある。高齢者への生活保護費が拡大しそのために消費税率引き上げが必要である。転職により、自ら退職金を減らす若者が増えている。流動化が賃金向上を呼び起こすなら良いが、そうはならない。確定拠出年金のような予防措置でお茶を濁される。給付時の年齢や課税の得失を考えれば、これも巧妙にB層を取り込んだものと思えなくもない。かくすればかくなるものと知りながら、やむにやまれぬ、弥縫策。
生産性向上とかデジタル化とか大学が大事とか言っているが、迂遠、他人事。高齢に日本を語らせても、実行策は乏しい。詰まずにやり抜くには。続きを読む投稿日:2023.03.26
●=引用
●日本では、人口高齢化に伴って、 労働力不足が今後さらに深刻化する。多くの日本人は、日本が認めさえすれば、海外から労働力を日本に呼ぶことができると考えている。 しかし、日本円の購買力が低下…し続ければ、日本に来て職を得るのは、魅力的なことではなくなる。 だから、外国人労働力に期待することはできなくなっていく。 例えば、介護人材を外国人労働力に求めるには難しくなる。 逆に、日本人が海外で仕事をすれば、日本に戻ってから 豊かな生活をすることができる。 だから労働力が流出する。日本人が、外国で介護を行うような時代になるのだ。
●日本が長期停滞から脱却するには、日本で技術革新がなぜ90年代以降進まなくなったかを解明することが重要だ。その理由として考えられるのは、すでに述べたように、円安になれば企業の利益が増加することから、円安を望む声が強まり、経済政策としても、そのようなバイアスが生じたことだ。 そして、円安に安住することによって、技術革新を怠ったのだ。安易に円安に頼る経済政策からの脱却こそが、日本再生に向けての第一歩だ。
● つまり、 産業構造の変革がなければ、 健全な物価上昇はありえない。 しかし、産業構造の改革は、金融政策で実現できることではない。 だから、日本銀行の消費者物価目標は、金融政策では実現不可能なことなのである。
● それだけではない。 日本国内に留まっていても問題だ。日本は多くのものを輸入している。 それらの価格が高くなれば、日本人の生活は貧しくなる。 実は、このことこそ、今日本が直面しつつある 問題だ。 2021~22年にかけて輸入物価が急上昇している。これまで企業は輸入物価の上昇を国内物価に転嫁してきたが、今後はすべてを転嫁できるかどうかわからない。企業が負担すれば、企業の利益が減る。これまでは円安が企業の利益を増やした。 今の円安は、企業の利益をも圧迫する可能性が高いという意味で「 悪い円安」だ。 仮に国内物価に転嫁ができたとしても、それで問題が解決されるわけではない。 これは実質賃金を下落させるからだ。
● 結局のところ、つぎのようなことになる。日本で物価が上がらないのは、賃金が上がらないからだ。そして、賃金が上がらないのは、生産性が上がらないからだ。 生産性を上げるためには、技術開発を促進することが必要だ。 デジタル化はその重要な手段だが、それだけではない。さまざまな面において新しい技術を導入し、生産性を引き上げなければならない。 そのような努力を行なわずに、日本の物価を上げることはできない。
● 結局のところ、アメリカで賃金の伸び率が高いのは、情報産業のような新しい産業が登場しているからである。 その部門が付加価値の高い経済活動を行っており、それがアメリカ経済全体を牽引しているのだ。それだけでなく、雇用者がその部門に移動したことが、経済全体が成長した重要な原因だ。 (略)日本停滞の原因は、産業構造が古いタイプのものから変化していないことだ。 終身雇用や年功序列は崩壊しているのに、さまざまな制度がその当時のままに残り、人々がその当時 して同じメンタリティーを持ち続けている。この結果、会社の外の条件変化に鈍感になる。
● 製造業においても、経済価値を生み出しているのは、今や工場や機械ではない。そうではなく、開発や設計などになっている。つまり「 工場という資本のない製造業」に移行しているのだ 。
● アップルの場合、売上に対する付加価値の比率が高いのは、売上に対する原材料費などの比率がきわめて低いからだ。 こうなるのは、アップルは製造を行なっておらず、 設計と販売に特化しているからだ。すでに述べたように、こうしたファブレス( 工場なし)は、アップルに限ったことではない。 半導体の エヌビディアも、設計に特化したファブレス企業だ。また EV( 電気自動車)メーカーのテスラの付加価値は、ハードウェア より ソフトウェアで生じている。 アメリカの製造業は、モノづくりから情報に向けて大きく シフトしているのだ。
● まず、従業員一人あたり売上を見ると、 東芝はアップルの約10分の1しかない。 東芝はさまざまな製品を作っているが、高い価値のものがない。それに対してアップルは、他のメーカーが作れない製品を、集中して作っている。 そして、売上のうちの付加価値の比率が、東芝はアップルの半分程度でしかない。
● 賃金停滞問題は、生産性が高まらなくては解決できない。経済の実態面では生産性を引き上げることによって しか、賃金を引き上げることはできない。生産性を引き上げるために最も必要なのは、デジタル化を進めることだ。
●それが実現すれば、いま銀行の支店や官公庁の窓口で紙の書類と奮闘している人たちの仕事はなくなる。その人たちが生活するためには、新しい別の仕事を見出さなければならない。それは容易なことではない。デジタル化という技術革新によって経済全体の生産性を上げるとは、そうしたプロセスに取り組むことなのだ。 日本は、これまでの数十年間、そうしたことに取り組まず、これまでと同じ仕事のやり方を、文字通り「十年一日のごとく」 続けてきた。 その結果、10年前と同じような生活を、大きな波乱なしに続けてきた。「生産性が低下し、賃金が低下を続けている」とは、そのようなことなのである。
●これらを考慮すると、実質賃金を今後 20年間で 34% 引き上げるのは、絶望的と言わざるをえない。 こうした状況で「等しからざるを憂えず」と言っていられるだろうか?国民の不満は高まるのではないだろうか?こうした事態を一変させるためには、これまでとは異なる強力な成長戦略を実施する必要がある。そうしない限り、 いかに分配を適正化したところで、「貧しさを分かち合う」という結果になってしまう。
●しかし、1割を超える保護率は「 例外的」とは言えない。それは「普通のこと」と 言うべきものだろう。つまり、将来の日本社会では、高齢者が生活保護を受けるのが「普通のこと」になるわけだ。日本社会の様相は、現在とは異質のものになると考えざるを得ない。
● これまでの仕事を惰性的に続けるのでなく、新しい仕事のために能力を高めなければならない。それには勉強が必要だ。 そして、生産性向上のために真剣な努力をすることが必要だ。
● 賃金を引き上げるための方策は、付加価値を引き上げることしかない。 それには、売上を増やし、原価を減らす必要がある。さらに、技術革新を実現することだ。 そして、経済全体として、高度サービス産業が成長し、新しい産業構造に向けて経済が変わることだ。 こうしたことに向かって真面目な努力をしない限り、 賃上げが実現できるはずはない。
●生産性向上のためには、 既存技術を活用するだけでは不十分で、技術開発が必要だ。続きを読む投稿日:2024.02.17
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