この作品のレビュー
平均 4.1 (8件のレビュー)
-
良書。前作の増強版である。
研究成果「母集団選定〜定義〜示唆まで」は頭が上がらない。事業立地の定義方法がやや謎と強引な気がする点がマイナスか。アカデミズムの世界、もしくは頭の良い人たちには分かるのか…もしれないが、実務人間になってしまった私のような凡人には理解が難しかった。
それでも経営の逆三角形という概念は21世紀の経営理論としては最大級のものだと思う。伊丹氏に師事し、ポーターや加護野氏と協働してきた中で培われた視点と大量データ分析、それに自身の人間観や事業観か合わさり生まれた傑作である。
複雑さゆえ、経営戦略の次元を並列に扱ってしまいがちなところに、事業立地→事業デザインと不可逆性を見出している。経営の世界に生きるものはこの点は肝に銘ずるべきである。
他にも戦術レベル(いわゆる機能戦略*)にある4Pや4Mでは、事業デザインや事業立地が傾けばなす術がなく、経営者が会社の命運=長期収益のポテンシャルを握ることを主張している。ミドルの頑張りによる商品開発や生産革新によるQCD改善では、限界があることは、経営者である以上心得ておくべきである。
※ただし筆者は機能+戦略名にも前作で疑問を呈している
(以下は読者理解用の例え)
経営戦略がポテンシャル=最大値・天井を決め、戦術がそれ(ポテンシャル)をどこまで満たせるか、発揮できるかの高さを決める。管理と日次のオペレーションが満たすスピードや漏れずに満たすことの因子となる。これは決して戦術と管理とオペレーションを否定するのではなく、どれだけ頑張っても経営戦略に欠陥があると全ては水泡に帰する、ということを意味している。挽回はできない、できたとしても有意にはならない、ということである。しかもその不可逆性が戦略の中でも、事業立地→事業デザインというレイヤーで発生しているため、一にも二にも立地であるというのが本書の結論である。続きを読む投稿日:2020.05.09
本書は前著「戦略不全の論理」の続編的位置づけとして出版された本であるが、必ずしも前著を読んでいなくても全く問題ない(私自身前著は読んでいない)。本書の前半は日本の上場企業1000社強のうち、3つの指標…を用いて戦略不全企業をあぶりだしている。3つの指標の細かい話は述べないが、それなりの納得性はある。それでは戦略不全とは何か?それを明らかにするために、著者は戦略不全企業の正反対にいる優良企業(彼は単純に「対照企業」と呼んでいる)も同様に3つの指標からあぶりだし、それとの比較分析において原因を明らかにせんとしている。他の経営本にありがちな、いかにも著者の恣意的な選定による優良企業ケーススタディではなく、客観的に導出された優良企業、不全企業の比較分析をしているところに大変共感した。
本書の素晴らしいところは、この手の泥臭い分析は下手をすると専門学会誌でしかとりあげにくいようなところを、がんばって一般読者にも理解可能なレベルまで「なんとか」噛み砕いているところである。ここは一般読者に対してもギリギリセーフという感じがある。本書では必要以上に図表を駆使し、読者にわかりやすくしようという努力が垣間見られることに共感を覚えた(ただしいくつかの図表はかなり見づらかったが)。
本書の前半は上述したようなデータハンドリングが紙面を占めている。そして後半が肝心の主題である、戦略不全企業の原因分析であるが、ここで著者は「事業立地」という企業の意思決定の中でも一番根っこにある部分にフォーカスを当て、経営者が肥沃な事業立地を選ぶかどうか、また事業立地が不毛になる前に肥沃なところに「転地できるか」が分かれ目だとしている。またさらにこれを深堀して、ではなぜ戦略不全企業の経営者はこれができないのか?という点についても4つの要因を掲げているなど、とにかく最後の最後まで綿密な分析を続けているという点で感服した。4つの要因のうち1つは精神論的な感もあり若干無理も感じたが、本書はぜひ日本企業の経営層の方々に読んでもらいたい本である。
余談であるが、本書を読んで「事業立地の選択と転地」という概念は企業だけでなく国家や個人にもあてはまると感じた。優れた人ならば仮に戦略不全企業に入社してしまって、その企業が一向に転地する気配がないならば、自分自身を「転地」させてしまうだろう。また国家を見ても、欧州で復興を遂げているような国々などはおしなべて不毛になってしまった自国の主要産業を「転地」させることに成功しているように思える。本書、読みとおすのは大変だが一読の価値は十分ある。続きを読む投稿日:2023.04.24
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。