MBAバリュエーション (日経BP実戦MBA2)
森生 明(著)
/日経BP
作品情報
昨今、タイトルに何がしかMBAと書かれた本は、ときとして西欧的なMBA教育のメリットの礼賛か、冷たく無味乾燥なファイナンス理論の本だと、先入観を持って考えられてしまうところがあるかもしれない。けれどもこの本では、精緻な企業価値評価理論を知るだけでなく、人々の信頼によって成り立つ資本市場を理解し、市場にかかわる人々の「息づかい」さえ感じることができる。 著者はハーバード・ロースクールに学び、投資銀行などの前線における経験を豊富に持つM&Aアドバイザー。全8章立てで、価値評価方法の本質を説明することを目標に、基礎編と実務応用編に分けて構成されている。第3章までの基礎編では、「企業価値」およびそれを決める要因、価値の測り方など、MBA教育とその実践の場における、「経営のグローバル共通言語」を学ぶことができる。 応用編では、「株価算定とM&Aの実務」が焦点になり、会社の値決めの実際や、「価値創造」の仕掛けに関して、最新のトピックスが数多く収められている。単色刷りではあるが図表が多く、M&Aスキーム全体についての理解の助けになる。巻末では、用語索引が日英併記され、参考書としての使い勝手もよい。 本書は、単に理論を伝えようとする図書ではないし、練習問題がたくさん収められたテキストのたぐいでもない。むしろ、著者の「思い」が託された1冊である。ふとした行間で、現場を大事にする著者のメッセージに触れられるため、読んでいて楽しい。また、歴史的背景にまで言いおよぶ、著者の思いやりにあふれた筆遣いが印象的だ。
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この作品のレビュー
平均 4.5 (43件のレビュー)
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【感想】
M&Aに関する本・ファイナンスを読んできて、なんとなくわかってきたつもりであったが、本書を通してその理解が曖昧であることを実感した。
個人的に、本書で最も学びになったことは、「企業価値」「…時価総額」「企業の価格」の違いであった。なんとなく、これらは全て同じものだと思っていたが、読了した上でそれぞれが違うものを指し、また、どんな関係があるのかを理解することができた。特に、「企業価値」をPV=C/rーgというテキストでよく見る公式と関連づけられた点は良かった。
DCF法もなんとなく知っているつもりであったが、本書によって理解を深め、さらに、その利用目的も把握することができた。
残念だったことは、本書を読むことで知識が身につくことには繋がらない点だ。本書を読んだのちに、会社の研修で同じような講座を受講したが、全く歯が立たなかった。ブクログの投稿のために読みなおした際に、研修で理解できていなかった点が本書に記載されており、愕然とした。
いずれにせよ、本書は、難しい計算式や理論をできるだけ平易に説明し、実務に近い形で解説してくれる。大変読みやすく勉強になった。
【内容】
第一章 企業価値という共通語
・企業価値とは、
「株主にとっての投資価値。それ以外の利益関係者にとっての利用価値の話ではない。」
・投資価値としての会社の値段は、
「利益またはキャッシュの多寡に寄って決まる。」
・投資価値を計算する最低限のツール
・現在価値
・ディスカウントレート
・永久価値(永続価値)
PV=C/r
… 永久に100万円(C)をもらえるときの「現在価値」
r;ディスカウントレート…リスクの大きさ
第二章 企業価値を決める要因
・PV=C/r-g
…初年度100万円(C)で、成長率gが永久に続いていく時の現在価値
・株価収益率;上記の基本公式を変換しただけ
PV/C
=株価/1株当たり利益
=PER
=1/r-g
…r;リスクが小さいほど、g;成長性が大きいほどPERが高くなる
・r=CAPMで算定できる
※個別の会社のリスクをそのまま数値化するのではなく、分散投資をする機関投資家からその会社はどのように位置付けられ評価されるのかという観点からβを用いる。
(参考)
PV=C/r-gより
「低金利でrが小さい時、わずかなCやgの変化でPVに大きなインパクトを与えてしまう。」
第三章 会社の値段と企業価値の違い
・会社の値段と企業価値は異なる
・会社の値段=株式時価総額とは、
「株価×発行済み株式数」
・なぜ異なるのか
→BSでの範囲が異なる
・企業価値;営業Asset、営業Debtを使って生み出すキャッシュの将来価値
・時価総額;Equityを時価に評価替えしたもの
・企業価値=ネットデット+時価総額
・ネットデット=借入金ー現金等
第四章 会社の値決めの実態①
・時価総額が会社の価格として適正化を検討する余地がある。
・「時価総額は所詮市場が決めるもので、唯一絶対の会社価値なるものはない」
・「時価総額が会社の価格として適正ならば、売り買いは生じない。」
・算定方法1;似た会社と比較する
・何を持って似た会社とするか
→C、r、gのパターンが似ている会社
・その会社とどの指標を持って比較するか
→Multiple(倍率)
・EBITDA倍率;EV(企業価値)/EBITDA
※企業価値=時価総額+ネットデット
…企業価値はEBITDAの何倍か
・PER=税引き後利益/時価総額
…利益≠キャッシュ→全ての企業を機械的に本来の利益に修正することは難しい
・PBR=簿価純資産/時価総額
…最初に投資した株主がいくら儲けたかを示しているだけ
第五章 会社の値決めの実態②
・M&Aの進め方
・財務DD
・将来キャッシュフローの算定
・株式時価総額より価格が小さくなりうる理由
・100%買収によって株式の流動性が失われるから
・「凍結」株式によって、時価総額が大きく見積もられている
・株式時価総額より価格が小さくなりうる理由
・支配権プレミアム
・算定方法1;類似上場会社比準方式
→第四章
・算定方法2;類似取引比準方式
;過去に行われた類似M&A取引
・コントロールプレミアムが踏まえられている
・個別事情を省けないことが多い
・算定方法3;ディスカウントキャッシュフロー方式(DCF方式)
;現在価値に大きく影響する論点
・将来予測をどう作成するか
・どれほど長い期間の予想をするか
・予想期間以降の事業価値(ターミナルバリュー)をどう置くか
・ディスカウントレートをどう想定するか
第六章 M&Aによる価値創造のしかけ
・M&Aの目的 – 4パターン
・自社立ち上げOR買収 の論点
・参入障壁
・市場規模の限界
・経営資源の共有化
・プレミアムの背景・誰のものか
・レバレッジ効果
第七章 M&A現場の実況中継
第八章 良いM&Aと会社経営
・ESOP(従業員持ち株プラン) LBO
・MBO(マネージメントバイアウト)
・プレミアムは買い手のコミットメントが大前提
PMI実行部隊の熱量・人間力
・敵対的という定義続きを読む投稿日:2020.05.21
2021.9.10 読了
久しぶりに読み直したけど企業価値算定がわかりやすく描かれていて新鮮だった。
きっちりと理解を実践に繋げてモノにできるようにしてゆきたい。投稿日:2021.09.15
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