シズコさん(新潮文庫)
佐野洋子(著)
/新潮文庫
作品情報
四歳の頃、つなごうとした手をふりはらわれた時から、母と私のきつい関係がはじまった。終戦後、五人の子を抱えて中国から引き揚げ、その後三人の子を亡くした母。父の死後、女手一つで家を建て、子供を大学までやったたくましい母。それでも私は母が嫌いだった。やがて老いた母に呆けのきざしが──。母を愛せなかった自責、母を見捨てた罪悪感、そして訪れたゆるしを見つめる物語。(解説・内田春菊)
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商品情報
- シリーズ
- シズコさん(新潮文庫)
- 著者
- 佐野洋子
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮文庫
- 書籍発売日
- 2010.10.01
- Reader Store発売日
- 2021.01.08
- ファイルサイズ
- 1MB
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この作品のレビュー
平均 3.9 (87件のレビュー)
-
■ネタバレがあります
佐野さんが、お母様とご本人の一生に渡る関係を書き切った自伝的なエッセイ。
佐野さんは、お母様からの愛情を感じない。ご自身も、お母様をはっきりと嫌っていて、その嫌っていること自体…に強い自己嫌悪を感じている。お母様の晩年、老人施設に預けることになったが、それを佐野さんは、お金で母親を捨てたという、これも強い自己嫌悪を感じてしまう。
佐野さん一家は戦前、北京に住み、戦争が終わってから、日本に引き揚げてくる。結局、お母様は7人の子供を産み、うち、3人の男の子を亡くしてしまう。話は、佐野さんの幼少時代から始まり、引き揚げ後の一家の生活ぶりを描く。その中に、自分と母親との関係を織り込みながら。描写は事細かく、繰り返しの多い執拗なものだ。
母親を嫌っていることに自己嫌悪を感じている人間にとって、そういう風に母親のこと、母親との関係を事細かに描くことは、とても辛い作業だと思う。佐野さんが、自分を切り刻みながら書いていることを感じてしまう。
しかし、最後に救いがやってくる。
それは、施設のお母様の部屋で2人で子守唄を歌い母親の白い髪の頭をなでている時に、突然やってきた。
少し長いけれども、この部分を引用する。
そして思ってもいない言葉が出て来た。
「ごめんね、母さん、ごめんね」
号泣と云ってもよかった。
「私悪い子だったね、ごめんね」
母さんは、正気に戻ったのだろうか。
「私の方こそごめんなさい。あんたが悪いんじゃないのよ」
【中略】
何十年も私の中でこりかたまっていた嫌悪感が、氷山にお湯をぶっかけた様にとけていった。湯気が果てしなく湧いてゆく様だった。
本書には圧倒されたが、特にこの部分には言葉もなくなった。
お母様との関係を考えることは、自分を見つめ直すことだと思う。それを考えながら、佐野さんは、自分自身の嫌なところ、とった行動に対する後悔などと向き合ってきたのだろう。
だから、最後に、この救いを得ることができたのだと思う。続きを読む投稿日:2020.10.06
母娘の不仲の話が読みたくて。大陸からの引き上げに始まる子ども時代はなかなか壮絶で、時代の違いもあって身近には感じられなかった。佐野さんは母が好きになれない自分を自覚しながら、それに罪悪感を覚えていて、…なんならえらいなと思う。母のすごいところは素直に認め、自分の難点も素直に認める。公平な目線だ。時系列が前後し、同じ話が何度もくり返されるのだけ気になった。続きを読む
投稿日:2022.11.05
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