ダリウスは今日も生きづらい
アディーブ・コラーム(著)
,三辺律子(翻訳)
/集英社文芸単行本
作品情報
イラン出身の母と白人の父をもつ、ペルシア系アメリカ人のダリウス。家でも学校でも疎外感を覚える彼は、母の故郷ヤズドを家族で訪れることに。そこではじめての友達を見つけ・・・・・・。アメリカの様々な年間ベストブックスに次々と選出されたベストセラー! 民族、人種、性的指向、うつ病、多重のアイデンティティに悩む16歳の青春物語。
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商品情報
- シリーズ
- ダリウスは今日も生きづらい
- 著者
- アディーブ・コラーム, 三辺律子
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社文芸単行本
- 書籍発売日
- 2020.12.16
- Reader Store発売日
- 2020.12.16
- ファイルサイズ
- 0.8MB
- ページ数
- 408ページ
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この作品のレビュー
平均 4.2 (17件のレビュー)
-
高校2年のダリウスは、ポートランドにアメリカ人の父とイラン人の母と8歳の妹と暮らしていたが、ペルシア系という民族事情のために、学校ではいじめられることはあっても友だちはいなかった。7歳の時から始めたサ…ッカーも、うつ病と薬のために12歳でやめてしまった。
父親は建築家で、金髪碧眼の白人。ダリウスが、中学3年生のころには最適の抗うつ薬を探すためにたいへんな落ち込みを経験しなくてはならなかったし、今も薬のせいで肥満なのに対し、父親は、若いころからうつ病を患ってはいたものの、薬で完ぺきにコントロールできていた高機能超人なのだった。
妹のラレーは、ペルシア系の顔立ちながら学校でも人気者で、ペルシア語も話せるから母親や母親の社交にも参加できていて、ダリウスはそこにも劣等感を感じていた。
イランにいる母方の祖父が余命短いことを知ったとき、ダリウスたち家族は、ビデオ会議でしか会ったことのない祖父母と親戚たちに会うために休暇をとってイランに向かう。そこには、優しく温かいマモー(祖母)と、厳しくて温かいバブー(祖父)、親戚たちと、ソフラーブがいた。
自分の中途半端なアイデンティティに悩んでいた少年が、そのルーツの一端を知り、自身を取り戻していく姿をユーモアを交えて描いた物語。
******* ここからはネタバレ *******
とても安心して読める物語です。
ダリウスには、うつ病を患いながらも立派なお父さん、ペルシア系の顔立ちなのに人気者で、ペルシア語さえ操れるかわいくて立派な妹がいて、いつも父親は自分に失望していると思っています。
そしてそれは、イランに行ってからも、バブー(祖父)が、薬を服用する自分、太っている自分、ペルシア語を喋れない自分を良くないと思っているのではないかという疑念にもつながっていくのです。
でもそんな中、親友になったソフラーブが、「今までダーリーウーシュの場所は空っぽだった」と話してくれ、彼に自分の居場所を気づかせてくれます。
そんなソフラーブ自身は、バハーイー教徒のため父親が無実の罪で投獄されていて、会うことさえできない日々を送っています。ダリウスは、不満はありながらも父親のいる自分の境遇について再考する機会を持つのです。
祖父母とともに「沈黙の塔」や「ペルセポリス」、「ダウラタバード庭園」など、ペルシアの文化遺産やノウルーズ、チャハールシャンべなどのお祝い行事に触れるにつれ、ダリウスは、自分のもう一つのルーツを構成する文化とその価値に気づいていきます。
ソフラーブのお父さんが獄中死をしたり、やっと理解し合えたバブーともお別れが近づいている等悲しい要素はありますが、近しい人たちの愛を感じさせる優しいお話です。
この時期の父子にありがちな確執が、いろいろな例えで表現されています。
たとえば、イランでは一般的な名前「ソフラーブ」の出てくる伝説の物語でも、ソフラーブは父親に誤って殺される。だから、ペルシア人の息子はみんな父親の機嫌を取ろうとするし、父親っていうものは、みんな密かに息子を殺したいと思っているものなのか?と思って納得したりとか(笑)。
普段は立派な父親が、バブーの前では立派なペルシア人になるわけにはいかず苦戦している姿を、アメリカの日常の父と自分の姿と重ねています。
お父さんもうつ病なのに薬の副作用の肥満で苦労していないのは、薬の種類が違うか、もしくは体質が違うからなのかも知れませんね。
それでも、お父さんも密かにうつ病で苦しんでいたこともあって、そのためにダリウスのことが余計に心配で目が離せなかったと後に告白しています。
これは本当、当事者でないとわからない苦しさなんでしょう。うつ病は遺伝的要因がある疾患らしいですが、生活習慣や考え方も影響するし、そもそも負の要素を一切遺伝させないなんて不可能なんですから、思い悩むことなんてないって思いますけど、そこを悩むところが、お父さんなんでしょうね。
バブーとの確執もあります。ダリウスは、ペルシア語が喋れず、うつ病の薬を飲み、アメリカで売っている紅茶をおみやげに買ってくる孫は気に入られていないと感じます。そのくせ、ペルセポリスを築いたダーリーウーシュ王(ダレイオス1世)と同じ名前を「いい名前」という。
でも、自分の家族がどんどん地元を離れていき、宗教的な行事なんかもできなくなって、バブーも自分のアイデンティティの危機を感じていたことを知って、ダリウスはバブーを理解したと思うのです。
ソフラーブは2度もダリウスを傷つけますが、2度ともきちんと謝っています。なんで、あんないい子があんなひどいこと言うの?って思うけれども、まあ、ダリウスのドラマのためだったんでしょう。
それにしても、お父さんが獄中死をするというショッキングなできごとで悲嘆に暮れているとき、事情を知れずに訪ねてきたダリウスをただソフラーブ母子に会わせたおじのアシュカンさんが一番悪いと思います。ちゃんと訳を話して、帰ってもらったほうがお互いのために良かったでしょうに。
まあ、きっとこれも、ダリウスの物語のためだったんですよね。
イランの文化に触れて驚いたこともありました。
インドにはあると知っていた鳥葬で有名なゾロアスター教、イランにもあったんですね。そして今は、鳥葬は禁止されているんですね。
それから、検閲のために見ることができないウエブサイトがあるとか、お酒を売っていないとか。
お父さんが万国の門を熱心にスケッチしていたら、ドローン攻撃を計画していると思われるとか(そういえば妹尾河童さんは、韓国で市場のスケッチに熱中していたら、スパイと疑われたことがあるそうですね)。
イスラム教の国だから、時間になるとアザーンが流れるんですね。これを夕暮れ時に聞いたら、とってもドキドキしそうです。
帰国してからのダリウスがとってもうまく行っているのにはできすぎ感も持ちますが、まあ、今までたいへんだったからいいんじゃないかと思います。
わからなかったところもありました。
38ページの「オーブンのすぐ後ろの細長い隙間に収納されるようになっている」ドアは、いろいろ想像してみたのですが、戸袋のある引き戸のことでしょうか?
93ページの「おばあちゃんとオマ、つまり父さんの二人の母さん」とありますが、お父さんにどうして二人お母さんがいるのか読み取れませんでした。しかもこの二人は、一緒にダリウスの誕生日を祝ったりしているんです???
この疑問にはきっと続編「Darius the Great Deserves Better」が答えてくれると思っています。
いい本なんですけど、本文405頁と長いです。しかも、けっこう開けっぴろげに性的表現が出てくるので、読めても小学生女子にはオススメしません。
しっかりした中学生以上か高校生以上がいいと思います。続きを読む投稿日:2022.02.01
タイトルからどんな話だろうと興味を持った。
高校二年生のダリウスは、米国人の父とイラン人の母、可愛い妹とポートランドに住んでいるが、日常生活に生きづらさを感じている。
脳腫瘍の祖父を見舞うためイランの…ヤズドを初めて訪れる。
最初は読みづらかったが、テヘラン空港に着いたあたりから俄然面白くなり、税関官その2とのやりとりでは思わず笑ってしまった。
行ったことのないイランに旅した心地がする。
ヤズドの街を歩き、遺跡や建造物を眺めアザーンを聞く。祝いの行事で出されたお茶とお菓子の甘い香り、マモーが作った美味しいペルシア料理と優しいハグの温もりが、ダリウスの頑なな心を解きほぐしたのだと思う。
ヤズドで自分の名前の由来を知り、ソフラーブという親友もできた。やっと"居場所"を見つけたダリウスだが、親友からの思いがけない拒絶にあい落ち込んでしまう。息子の悲しみを受け止める父との和解のシーンが良かった。
父さんはおれの背中をさすった。「大丈夫じゃなくて、大丈夫だ」
著者の体験からこの物語が生まれたそうだが、うつ病が遺伝することを初めて知った。映画『スター・トレック』を観ていたらもっと楽しめたかな〜!
うつ病の他にも宗教、いじめ、人種と異文化など考えさせられる問題が沢山ある。アメリカに戻ったダリウスのこれからが明るい方へ向かう終わり方でほっとした。
続きを読む投稿日:2023.09.26
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