この作品のレビュー
平均 4.0 (3件のレビュー)
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・八條忠基「詳解有職装束の世界」(角川文庫)は、令和の即位礼正殿の儀に見られる「平安絵巻を見るような、その美しい装束(中略)について、より詳しく知りたいという方 のために、この本は生まれました。」(3…頁「まえがき」)さう、正にこの通りである。有職故実の書はそんなにないと思ふ。あつても服装に関してはどれも説明不足で、肝心の所が分からなくなつてゐる。あるいは欠けてゐる。と書いたものの、私はそんな書をほとんど持つてゐな い。その数少ない一 冊が秋山虔他編の「源氏物語図典」だつたりする。これは有職故実の書ではないが、それに関する記述は多いといふものである。衣服に関しては男女ともに必要事項は書かれてゐるのかもしれない。しかし、大半が図一つ、そこに写真があれば良しといふ感じである。これでは正に隔靴掻痒の感を免れない。本書カバーの筆者概略には大きな有職故実の書があるらしいとある。私はそれは知らない。たぶん高い書であらう。その点、本書は文庫である。しかもオリジナルである。オリジナルであることは必要ではない。ただどれだけ分かり易く、それを視覚に訴へてゐるかが問題である。 ざつと読んで見たところでは写真が多くて分かり易い。
・例えば男性の衣冠、写真一枚ではなく、実際に着てゐる姿に始まり、以下、袍、単、表袴、下襲等々とそれぞれを着けた写真も交へながら進んでい く。最後に袍の着装となるが、更に長い裾を折りたたむ懸裾といふのが出てゐる。当然どんな装束を着けていても歩くことはあるだらうと思ふものの、 衣冠の裾がそんな長いとは知らず、長ければその係の者が裾を持つのだらうぐらゐにしか考へないから、懸裾などといふのを初めて知つた。「移動する場合は、折りたたんで歩行の便を図ることもあ」(57頁)つたといふのである。かういふのは合理的である。いくら位が高いからといつて、一々移動する度に裾を持つてもらふのでは大変だし不便であらう。そこでこんなことも行はれたらしい。武官装束もまたよく分からないものである。最も分かり易い、といふのも変だが、冠の左右から垂れてゐるなにやら黒つぽいもの、これはよく見るのだが、その詳細はなかなか書いてない。本書では武官の装束のつけ方に始まり、様々な武具の紹介があり、最後に冠となる。これが垂纓の冠ではなく、巻纓の冠であり、次に「武官の冠で特徴的なのは云々」 (96頁)と?が出てくる。これが「左右の耳の前に付ける、半月形ブラシ状の」(同前)おいかけださうである。冠関連であつた。この漢字も、この名称も初めて知つた。正確には既に目にしてゐるのかもしれないが、かうして意識して使ふのは初めてのことである。ただし、この由来については「諸説あって明らかでは」(同前)ないとか。私は武人の装束を知りたいと思つてゐた。本書はそれが詳しいのだらう。この後に出てくる細纓の冠は他書にもあるが、現在は賀茂祭等で見られる(99頁)との記述がある。かういふのを見ると、実際にそれが見られる場所へ、たぶん賀茂祭が最もふさはしのであらうが、行きたくなつてくる。何しろふだん絶対につけない装束である。本書では子供の装束も詳しい。男児も女児も写真つきで出てくる。女児にリボン「夾形」(283頁)があるのを知つた。髪を飾る挿頭が進化したものであらうか。こんなものにも鳥の文様がついてゐる。かういふところでお 洒落をしたのであらうか。そんないろいろのことが分かる、これだけの文庫本がオリジナルで作られるといふのは、それだけ関心を持つ人が増えたといふことであらう。有り難いことである。これを友としてそんな世界に遊んでみたいものだと思ふ。続きを読む投稿日:2020.11.15
この本素晴らしい。この内容で2000円未満は安すぎなのでは。
装束の名称や着方歴史から色彩、文様まで手広くカバー。これ1冊持ってれば有職装束について大まかなことはわかりそう。
今までなんとな〜く見て…いた装束にもっと注目できそう。
実際、大河ドラマとか時代劇で「この衣装はアレかな、、」と見当をつけることができた。楽しい。
ただ、あまりにも自分にとって身近でなさすぎるので(当たり前だけど)なかなか1回読むだけでは全てを理解することは難しい。他の文献とかも読んだり史料を見ながらさらに理解を深めていきたい。
ちなみに今回電子書籍で買ったけど、電子だとアップにできるからこういう写真が載ってるものは意外と電子書籍で買うのもありだと思った。続きを読む投稿日:2021.02.10
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