A4または麻原・オウムへの新たな視点
森達也(著)
,深山織枝・早坂武禮(著)
/ボイジャー
作品情報
麻原彰晃に帰依していた夫婦との対話からオウムを照射!
『A3』から約5年。森達也氏が、元オウム真理教の信者で麻原彰晃に帰依していた夫婦との対話を通して新角度からオウムを照射! 巻末にマンチェスター大学日本学シニア教授で、「メディアと新宗教の相互作用の研究」をしているエリカ・バッフェリ教授の解説付。麻原彰晃の死刑執行が囁かれている今、見過ごされてきた真実が次々と明らかに。
【目次】
1 オウム真理教との出会い
2 出家者の生活
3 麻原彰晃の実像とは
4 オウム真理教事件
5 いま、振り返るオウム真理教
結びとして 宗教リテラシーからオウムを考える
【著者】
森達也
映画監督・評論家・大学教員。「A」「A2」とオウム真理教に関する映画を撮影。教団の崩壊からその後を描いた書籍『A3』(集英社インターナショナル)では、講談社ノンフィクション賞を受賞。著書『「A」撮影日誌』『A2』(ともに現代書館)他多数。
深山織枝・早坂武禮
元教団幹部。「NHKスペシャル未解決事件2 オウム真理教事件」に出演。その際に初めてメディアの前で話した。その延長線上の内容が本書では展開されている。
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商品情報
- シリーズ
- A4または麻原・オウムへの新たな視点
- 出版社
- ボイジャー
- 書籍発売日
- 2017.11.20
- Reader Store発売日
- 2020.10.02
- ファイルサイズ
- 0.6MB
- ページ数
- 240ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (10件のレビュー)
-
オウムは森達也の原点でもある。オウム信者を中から撮ったドキュメンタリー映画『A』から『A2』、そして麻原彰晃の裁判を傍聴し論じた『A3』。それらに続くこの『A4』は、かつてオウム真理教へ出家し、サティ…アンでも修行を行った深山織枝氏、早坂武禮氏へのインタビュー本である。彼らはNHKスペシャルでオウム事件を振り返るための再現ドラマのモデルとなった人物で、同番組にも登場している。二人は比較的早い時期に出家をしており、教団内でも高い地位にいたが、地下鉄サリン事件の後に教団を去った。
オウムを去ったものの、実のところ彼らには教団への失望はあれども、麻原彰晃自身へのある種の帰依を否定しない。教団が引き起こすこととなった結果に関しては責任を感じるところはあるにせよ、その教祖に対しては擁護に回る。それは麻原を信じた自分たちの判断を信じるために信じているようにも映る。文字に書き起こされた彼らの言葉には狂気を示すものはほとんどなく、世間一般の人の言葉と比べても冷静ですらある。彼らが話をする相手が、地下鉄サリン事件は弟子たちの忖度と暴走にあったとする森達也であることも彼らの口を滑らかにしたのかもしれない。
一方、彼らは弟子が事件を起こしたとすることすら否定的に捉える。たとえそうであっても麻原が試練として信者に与えたものであり、教団の壊滅につながるとしてもそれこそが麻原がその人のためにそのように仕向けたものだと捉える。
元信者である彼らとのインタビューを読むと改めて、麻原が法に照らし合わせて、裁判手続きや共同正犯として法に問われるのかについて疑問になる。早坂氏、深山氏それぞれの言動、かつての信者たちの言動について、集団と宗教が個人と社会に与える影響についてわれわれはもう一度問わなくてはならない。
早坂氏、深山氏の言葉にはある種の宗教的な世俗を超えた倫理観を感じる。輪廻転生と前世からのカルマという考えを持ち込んだ場合には、現在の倫理や法律概念が崩れることが直截的によくわかる。彼らにはオウムが悪いことをしているという意識はない。それどころか、善き行いをしていると信じてやまない。どんな行為であろうとも、カルマを積むという観点において善行にたやすく転換される。そして彼らはいたって「まとも」なのである。
解説の中でも少し触れられているが、ある意味、信者たちは「選ばれた」という感覚を強く持っているように思う。たとえ自ら進んで入信したとしても、そのことが前世・現世のカルマなどから来た運命とするのであれば、それは選民されたこととほとんど変わりない。だからこそ信者は苦労にも耐えることができた。その「選ばれた」との感覚をこの早坂・深山も麻原の絶対性を信じる心とともに捨てきれないでいる。
そのことを伝えるため、「オウムを信者の視点から描くことの難しさ」に耐えるために森達也が選んだ手法が、対談形式だったと言ってよいだろう。
オウム真理教裁判において、いくつもの疑問が黙殺されきた。その代わりに多くの揶揄と中傷が消費された。本来はもっと深く宗教とその集団としての暴走について考察ができるはずであったであろうに。彼ら二人の発言について、森氏と同じく客観的な視点における論理的違和感・飛躍を感じたと同時に、反面彼ら自身の内面における首尾一貫とした論理の存在にも驚いた。そしてその論理が閉じた集団の中で醸成されるその過程をもっと知りたいとすら思った。
それにしても、早坂氏は記憶を消去するためのニューナルコを受けたのだが、その実行さえも是とする思考様式が不思議である。不思議であるからこそ覗き込んでみたいという誘惑にも駆られるのだ。幸か不幸か生来の尻の重さを好奇心が上回ることはめったにないのだけれど。
麻原の裁判の法的な無効性と死刑執行に反対した森達也。そして本書内でも死刑執行がいつあってもおかしくないと指摘してきた。森達也は、この本を2017年11月に出版した約半年後の2018年6月初めに発起人の一人として「オウム事件真相究明の会」を立ち上げた。そしてそこから約1か月後の2018年7月に、麻原彰晃を含むオウム事件の死刑囚13人の死刑が執行された。
「多くの人がこの問題に今と同様に関心を持たないのなら、いずれ麻原は処刑される。そしてそのとき、自分はどこにいて何をしているのか。時おり想像する。そして絶望する」
そういえば自分のブクログに書いた『A』、『A3(上・下)』の書評について、「いいね」がひとつも付いていないことに気が付いた。しっかりとしたレビューと自負するが、いいね!を押しづらい題材なのだろうか。たまたまなのかもしれないのだけれども。
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『A』のレビュー
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/B00GUBVS54
『A3(上)』のレビュー
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4087450155
『A3(下)』のレビュー
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4087450163続きを読む投稿日:2018.08.19
凶悪事件を引き起こした教団の元信者との対談本です。その内面からみた、教団の意義について著者により引き出されています。ごく一部の信者により、事件は引き起こされ教祖との関わりは明らかにされないまま幕引きさ…れた論調であり、その一面を本書共著の元信者の方々が証言されています。現時点ではその内容の証明はできませんが、そのような一面を否定することもできないと感じました。事件の本質の一面を明らかにした良書です。続きを読む
投稿日:2022.08.21
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