「田島道治日記」を読む 昭和天皇と美智子妃 その危機に
加藤恭子(著)
,田島恭二(監修)
/文春新書
作品情報
天皇退位か、謝罪か――戦後皇室最大の危機を読み解く
初代宮内庁長官・田島道治は敗戦からまもない昭和23年、その職に就きます。東京裁判の判決を間近に控え、天皇退位問題に揺れる占領下の皇室。その戦後皇室の「危機の時代」を、田島の日記をもとに描くのが本書です。
占領下の天皇退位問題、「謝罪詔勅」の真相、マッカーサー解任の衝撃、宰相・吉田茂との連携・・・・・・。そして皇太子妃選びから美智子妃の苦悩まで、昭和史の新たな地平が見えてきます。
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この作品のレビュー
平均 2.5 (2件のレビュー)
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昭和の大恐慌があった。愛知銀行の常務だった田島道治は日銀総裁で
あった井上準之助が設立した昭和銀行頭取に任命され、最大の金融恐慌
を乗り切りった。
その手腕を買われたのだろう。先の大戦後、初代の宮内…庁長官に就任する。
皇室最大の危機の時代である。
そんな時代に昭和天皇の傍にいて、GHQ及び日本政府を相手として
皇室を守る為に尽力した人の日記から時代を読み解く。
昭和天皇の退位問題、最高司令官を突然解任されたマッカーサーの
皇居訪問問題、皇太子(今上天皇)の英国訪問にまつわる問題、
そして、皇太子妃選び。
日記の記述は非常に簡潔なものだが、皇太子の立太子の儀に臨んだ
日ではこれまでの苦労が込み上げたのか「ベソ」との記述があるのが
苦心を感じさせる。
頑なに皇居訪問を拒むマッカーサーに憤り、「臣・茂」とまで署名して
皇室を重んじた吉田茂とも時には対立し、庶民出身ながら昭和天皇と
皇室に尽くした人は昭和28年に退官する。
その後も美智子妃誕生に関わり、旧態依然とした皇室に嫁いだことで
心身共に疲れ切った美智子妃を支える。
混乱の時代の貴重な記録だが、タイトルがしっくりくない。副題と入れ替え
たらよかったのにな。
尚、長官退官後、ソニーの会長職についているのだが会社で用意した
車を私用では一切使わず都電とバスを乗り継いでいたそうだ。
こんな会社会長、今の時代にいるかぁ。続きを読む投稿日:2012.03.03
本書は、昭和の敗戦後の初代宮内庁長官を務めた「田島道治日記を読む」と題された「昭和天皇」と「皇族」をめぐる考察であるが、戦後の「昭和天皇のあゆみ」を内側からみた考察として興味深く読んだ。
敗戦後の…昭和天皇の「退位」をめぐっては、いろいろと様々な動きがあったことがわかってきているが、多くの周辺がみな納得しなければ昭和天皇は「退位」することもできなかったのだろう。GHQやマッカーサーとの関係も含めて、本書は日本の戦後史の一面と言えるだろう。
「天皇のおことばをめぐる攻防」を読むと、「天皇のおことば」というものが単なる「言葉」にとどまらず、実に政治的なものであることがよくわかる。
マスコミで流される「天皇のおことば」は、事前に多くの関係者との調整を済ませた上で語られる実に重いものであるということは、現在でも同じなのだろう。
しかし、本書を読んで、「田島道治日記」記載の重要事項はこれで全てなのだろうかという疑問を持った。
昭和20年から昭和28年までの戦後の激動期に「宮内庁長官」を努め、その後も「皇太子妃誕生」や「苦悩する美智子妃」と皇室に様々に関与した人間の「日記」にしては、驚くような新事実がないようにも思える。
本書の監修は「田島道治」の子息。著者は、「田島道治」関連の著作三冊を出版しているそうだが、親族との過剰な関係からの配慮はなかったのだろうか。
本書には「昭和天皇の回想録については入江相政日記の中で拝聴録と呼ばれるものがあったことが知られている」とある。
現在の宮内庁は「そういうものはない」と主張しているようであるが、その存在は「卜部亮吾侍従日記」でもその存在は確認されているという。「菊のカーテン」はまだまだ健在ということなのだろうか。
昭和天皇の行跡については、現在でもまだまだ知るべきことは多いと思う。
本書が、「初代宮内庁長官の日記」からの考察であるならば、もっと驚くような事実の発掘があるかもしれないと思って読んだが、その点だけは期待はずれだった。続きを読む投稿日:2013.01.30
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