江戸時代の「不都合すぎる真実」
八幡和郎(著)
/PHP文庫
作品情報
天下泰平の世が長く続き、環境にもエコロジー、人情味にあふれる江戸時代を「理想の社会」と憧れる日本人は多いが、はたして本当だろうか? 本書は、「特権階級的に恵まれた江戸市民の暮らし」「鎖国はオランダに騙されただけ」「全国はげ山だらけの自然破壊」など、徳川300年の治世の“不都合すぎる真実”を明らかにする。時代劇や小説で知る江戸時代のイメージが決定的に覆される一冊! 【目次】●プロローグ 「江戸時代礼賛論」を全面的に否定する理由 ●第1章 豊臣の天下はなぜ短命だったのか? ●第2章 関ヶ原で西軍が負けた失敗の本質 ●第3章 世界史から鎖国の原因と功罪を解き明かす ●第4章 徳川家康の祖法を守って「じり貧300年」 ●第5章 「日本は300の国からなっていた」という伝説 ●第6章 武士道とは縁遠い、江戸時代の普通の武士たち ●第7章 江戸時代と現代の北朝鮮はこんなに似ている ●第8章 西郷どんの視点から見た幕末維新
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商品情報
- シリーズ
- 江戸時代の「不都合すぎる真実」
- 著者
- 八幡和郎
- 出版社
- PHP研究所
- 掲載誌・レーベル
- PHP文庫
- 書籍発売日
- 2018.06.01
- Reader Store発売日
- 2018.08.31
- ファイルサイズ
- 7.7MB
- ページ数
- 304ページ
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この作品のレビュー
平均 3.0 (1件のレビュー)
-
来年(2019)の五月には新しい元号を迎えることになる私達ですが、昭和・大正・明治と遡って、その前の時代には江戸時代があり、その時の元号は今とは違う考え方で制定されたことを知っています。
しかし江戸…時代はいったいどういう時代であったのか、昔のことは辛いことは忘れて美化して思い出す傾向があるのは、個人的な記憶だけでなく歴史の記録にもあるのでしょうか。そのような中で、本来の姿を紹介してくれている、八幡氏のこの本を読んでいて、何かホッとするものがあるのは不思議な感覚です。
鎖国政策と俗に言われる、特定の国とだけ限定的に、またこの本によれば、それを一部の商人に任せきりであったことは、筆者いわく、日本を三流にした徳川の過ちと言い切っています。
江戸時代の日本が三流だったとすれば、ごく短期間でトップグループ(一流グループ)に昇りつめた日本の実力は大したものであるなと思ってみたりもします。本当の姿を知ったうえで、そこから日本はどのように変化(進化)してきたか、その時の試練はなんであったかを考えることができるのは、この本を読んだお陰かなと思いました。
以下は気になったポイントです。
・一流の安土桃山、三流の江戸、一流の明治、というのが正しい。室町時代から安土桃山時代における明、南蛮文化の受け入れをしている、明治維新で取り組んだのは、16世紀に秀吉や石田三成が取り組んだ改革を、より近代化された形で実現した(p9、14)
・薩長土肥は、豊臣政権時代の前向きな遺伝子をしっかり保持していた、西洋で近代化の原動力となった市民階級に似た武士と庶民の中間層が、これらの藩では例外的に分厚く存在していた(p12)
・戸籍、系図とは真実かどうかよりも、それが世間で通用していたかが問題である、信長は平家としての立場で源氏の足利義昭と対峙し、取って代わったと受け取られていた(p28)
・全国の武士のびっくりするほどの割合が、尾張・三河・美濃を中心とした東海地方にルーツを持っている、堅実さ・組織重視の考え方をしていて、近代日本の大企業サラリーマンに引き継がれている(p31)
・戦国大名が故郷にとどまって生き残ったのは、島津・鍋島・大村・松浦・宗・遠山(美濃)・諏訪(信濃)・大田原・大関(下野)・相馬・南部・津軽(陸奥)・松前(蝦夷)くらいである(p32)
・桶狭間の戦いの頃、尾張(60万石超え)は、陸奥・近江につぐ大国であった、今川氏の70万石とあまり変わらない(p35)
・家康は信長の死後、信濃や甲斐を横領していたのを信雄に追認してもらおうとして協力した、秀吉は信雄を大納言にすることでナンバー2とし、家康がナンバー3、天下統一の頃は信雄は内大臣、家康が大納言、秀長が権大納言であった(p46)
・三法師丸が1588年に元服して秀信となり岐阜城主となった、関ヶ原で西側について高野山におわれたが、このとき従三位権中納言であった(p48)
・幕府領として重要拠点を確保した、大坂・二条・駿府・甲府には城代ないし、それに代わるものを置いた。長崎・日田(ひた)・大森・倉敷・生野・堺・奈良・大津・山田(伊勢)・笠松・高山・相川(佐渡)には奉行所、代官所を置いた(p35)
・征夷大将軍は、東日本の治安維持が本来の仕事なので、関八州の家康が名乗るのは自然である、足利義昭がなくなっていたので、源氏の氏長者も空いていた、元々は村上源氏の久我(こが)家が占めていたが、足利義満から将軍が兼ねていた(p62)
・全大名264家のうち、隔年参勤は175、関八州の大名は半年交代が27、江戸詰めは26家、幕府要職にありしない家が21あった(p88)
・モンゴル族の元は滅びたのではなく、万里の長城の北に撤退しただけ(p97)
・大量の奴隷が連れ去られるのは、アフリカでもそうであるが、現地人が協力して自らの敵対勢力を拉致してポルトガルに売った場合である(p105)
・東日本中心の徳川幕府は海外貿易が盛んになる西日本が発展すると困るので、鎖国した。農民と関ヶ原浪人の島原の乱が伊賀に手ごわかったことも決断の理由(p108)
・鎖国しても、金銀を輸出して、木綿・茶・砂糖・陶磁器等を輸入していた、金銀の産出が減ったので自給化が進んだ(p110)
・ロシアは13世紀からモンゴル人によるキプチャク汗に支配されていたが、北部はロシア人による間接支配であった。やがてモスクワ大公国の建国が認められた(p120)
・藩主時代の吉宗は緊縮財政で財政再建をしたが、将軍が同じようにすると全国がデフレとなった(p139)
・家康は大名は権力から遠ざけるようにしていたが、養子に出ているとはいえ将軍の孫(松平定信)が老中筆頭では独裁者になり無理があった(p146)
・領地が入り組んでいると関所もおけず厳しい管理ができない、年貢は安いが治安維持も公共事業もできない、その場合は庄屋が中心に自治をしていた(p159)
・藩とは、明治2年の版籍奉還のときに創設された制度、全国を大名領国を藩、それ以外の幕府領は、府・県を設置した(p159)
・藩の正式名称がないので、明治2年には所在の都市名が一律に藩名とされた、改称して新地名を藩名にしたところもある(p161)
・47都道府県の県庁所在地の大部分は城下町である、例外は、明治になってつくられた札幌・宮崎、港町だった青森・新潟・横浜・神戸・長崎・那覇、宿場町だった千葉・浦和、門前町だった長野、そして京都と奈良(p162)
・実高では、加賀(134, 103が実高)、仙台(102,62)、長州(98,37)、尾張(91,62)、佐賀(89,36)、薩摩(87,73)であった(p162)
・具足は100石以上くらいの武士なら持っているが着用する機会はなく正月くらい、弓矢は400石以上、槍は100石以上とか上級武士の象徴となった(p192)
・最初の近代的戸籍(壬申戸籍=昭和43年まで閲覧可能)には、士族として載せられた、総数41万戸、189万人、3360万人のうち5.6%程度(p197、234)
・明治4年に、各府県が寄留や旅行する者に鑑札を渡す規定を廃止して、自由に旅行ができるようになった(p244)
・江戸時代の1両は、諸物価水準では15万円、賃金基準だと48万円、一両=4分=一石=実勢6000文(公定4000文)、銀75匁(公定60)、一日5合とすると大人一人1年間分=2.5俵(150キロ)(p250、256)
2018年9月30日作成続きを読む投稿日:2018.08.18
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