この作品のレビュー
平均 3.9 (20件のレビュー)
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続けて鎌倉関連の作品。
悪いイメージで描かれることが多い頼朝・政子夫妻視点ではどう描かれるのかと不安と期待で読んでみた。
意外にも政子は大河ドラマのキャラクターに近い。
義経排除の際は頼朝の冷徹さに…付き合っていて、またダークサイドな政子か…とうんざりしていたが、その後は情に深い政子が強くなっていく。
静御前が生んだ男児の助命嘆願したり(叶わなかったが)、大姫入内話の時には『佐殿は、どのようなものでも利用なさるのですね』と皮肉、頼朝が邪魔な勢力を次々排除していくのには『鎌倉府第一を掲げれば何をやってもよいとなれば、その大義の刃は己や妻子眷属に向けられる』と苦言と、読みながらハラハラするほど。
だが決定的な溝ができることはない。そのくらい夫婦の絆は強い。頼朝の冷徹さについていけなくなり時に孤独を感じつつ、後半は時に激しく動揺しながらも最後まで頼朝に寄り添った、頼朝にとって『かけがえのない女』だった。
頼朝は、最初は『怜悧な人』で武士の府という理想を作り上げるためにはあらゆることを犠牲にしてきた冷徹な人間でもあったのだが、後半は思いもよらない姿に。
頼朝を描いた作品をそうたくさん読んだわけではないが、これほど哀れな頼朝は初めてだった。
どこまで史実に近いのか、伊東さんの完全なるフィクションなのかは分からないが、正直こんな武衛は見たくなかった。
だが最後は鎌倉殿らしさを見せてくれたのでそれだけが救い。
もう一人意外だったのは大姫。薄幸の人のイメージしかなかったのだがこの作品では新たな大姫が描かれた。体調を崩しては政子が駆け付ける度に大姫は政子に痛いところを突いてくる。そして『母上への最期の置き土産』がそう来るとは。
意外ではないのは義時。こちらは他の作品でもさんざん描かれる、奸智に長けた実に嫌なヤツ。
それも『そなたは「こうした方がよい」と思ってもそれを告げず、そうせざるを得ないように仕向けるのが得意でした』と政子に言われるような、一番卑怯なやり方。
あんなことこんなこと、ほとんどの犠牲の裏に義時がいる。この義時では大河ドラマの主役にはなれないだろう。
義経は功名心が強く唯我独尊の男。だが大江広元は『武士としてのあらゆる美点』を備えていて『好いておりまする』と言っている。なのになぜ義経を排除するのかと言えば『用済み』だから。最後まで利用された可哀そうな男だった。
可哀そうと言えば範頼も。とにかく小粒、凡庸。その凡庸さが命を長らえられた一方で、結局は命取りとなった。一体どう振舞えば寿命を全う出来ていたのか。
息子・頼家は幼いころから父・頼朝にも母・政子にも懐かず、長じては親を親とも思わない危険人物。これなら排除されても仕方ないなと思う。
この時代、仕方のないことだけれど政子が自身で育てることが出来ていれば少しは違った親子関係になっていただろうか。
作中一番光った人物は畠山重忠。『筋の通った男』で頼朝は彼の『正しさ』を愛した。だがそれだけでは『武士の府が守れない』と彼の真っ直ぐすぎる気性を危ぶむ。
結局は頼朝の方が先に死ぬわけだが、奥州征伐には大義がないと苦言を呈し、次第に朝廷に近づく頼朝には清盛と同じ道を行くなら『もうついていけませぬ』と言う。そして終盤にもまた彼らしい真っ直ぐな言葉で頼朝に物申している。それも命がけで。
確かに政治家には向いてないが、武士として忠臣としては実に格好いい。
頼朝の死がどう描かれるのか、そして頼家が将軍になった後の新体制は。この作品での描かれ方も斬新だったが、ドラマの方も楽しみ。続きを読む投稿日:2022.06.01
他の作家は頼朝が落馬と簡単な死を書いて頼朝を暗殺する経緯がないがこの作品は頼朝の耄碌が原因とする説でそこにページを割いている。そして政子の苦悩、北条ではなく、鎌倉幕府を護る事を念頭において尼御台の勤め…をこなしている。ドロドロしたのはないので読みやすく楽しく読めた。
続きを読む投稿日:2022.08.24
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