この作品のレビュー
平均 3.0 (4件のレビュー)
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冒頭に、ジャーナリズムは、公権力の不当な権力行使を監視する番犬であるとある。
しかしながら、読み進むにつれて、この言葉が逆説的なものである、それを強調するために冒頭に置かれたのではないかと感じるように…なった。
インターネットやSNSの影響が強まり、さまざまなタイプのインターネットメディアの中、新聞がどのような地位を保ちえるのかを合わせて論ずるのが本書である。
気になったのは、以下です。
■新聞による作為、不作為
・注目したいのは、「朝日、毎日、東京新聞」と、「読売、産経、日経新聞」のそれぞれのグループの見出しの際立った違いだ。
・主義主張はともかく、(安全保障関連法案が)成立するのが確実ならば、1面の本記には事実関係を伝えるデータを入れるのが自然なように思える。客観的な事実が埋没し、読者が勘違いする恐れがある。「あきらめるな」と訴えたいのなら、社説や解説、論評のなかで主張すべきでないか。
・同じ専門家の談話であっても、どの発言部分を使うかによっても変わってくる。話したことをすべて書く必要はなく、自由に編集できるので、恣意的に操作することもできる。識者談話というのは曲者である。
・当初は記者会見の機会は平等にということであったが、いまではそれさえも崩れている状態だ。首相や、閣僚級への単独インタビュー記事は、より目を凝らして読む必要がある。
・「政治的に公平であること」などを規定した放送法第4条について「法規範ではなく、あくまで放送事業者が自律的に番組内容を編集する際のあるべき基準、すなわち「倫理規範」」であると改めて指摘。政府がこの準則に違反するとして行政処分をしたり制裁をしたりする根拠ならない、との見方を示した。
■朝日問題
・吉田清治氏が朝鮮人女性を慰安婦にするために強制連行したとする証言をめぐり、済州島の人たちからも、氏の著述を裏付ける証言は出ておらず、真偽は確認できない。
・もう一つは、「強制性」をめぐって「軍による強制連行を直接示す公的文章も見つかっていない」
・池上コラム「新聞のななめ読み」は毎月最終金曜日に朝日新聞朝刊に載せられていた。ところが掲載予定日の2014年8月29日朝刊にコラムがなかった。しかも、何のお知らせも、説明もないままの休載で不可解な紙面だった。そうしていると毎日、読売、産経、東京新聞の4紙が9月3日朝刊で、池上氏が朝日新聞に対して連載中止を申し入れていることが分かったと伝えた。朝日の慰安婦検証記事を批判的に論じ、掲載を断れられたことが原因としていた。多くの朝日社員にとって、この事実を他紙の報道で知ったのがショックであったし、何よりも情なかった。言論機関が自らの報道を批判され、その言論を封じるというのは、あってはならないことだ。
・朝日報道は自らの主張に都合のよい部分をフレームアップし、都合の悪い部分には記事でひと言も言及していなかったと言える。
・編集の責任者でもある、渡辺GEら現場は謝罪するのが当然と考え、すでにゲラ刷りまでつくっていたにもかかわらず、木村社長の鶴の一声で、翌日には謝罪文を抜いたうえ、記事量も圧縮したものに差し替えたのである。
・一連の朝日新聞問題には、「誤報」という取材・執筆にかかわる問題と、「誤報」の処理という事後過程での問題の2つがある
・記事を完成させるまでには、いくつかのハードルを越す必要がある
①情報の真偽の確認
②公益性の確認
③反論権の確保 の3点であるといえる。
■新聞の嘘を見抜く
・天皇の退位問題について、天皇が意思を公にし、それを受けて法律が作られたり改正されたりしたことはこれまでにはありません。
・明治憲法によって「大権」をもっていた明治天皇や大正天皇、戦前の昭和天皇の時も、こんなことはありませんでした。
・本来は天皇を規定するはずの法が、天皇の意思で作られたり、変わったりしたら、法の上に天皇が立つことになってしまう。
■報道写真の虚実
・写真は単に歴史を記録するものではない。世論を動かし、歴史を変えていく手助けをするものだ。
・日本のメディアは原則として遺体写真や残酷な写真は掲載しないという立場をとっている。ただ、例外はある。いずれも歴史的な出来事で、たとえ想定を超える衝撃や不快感を読者に与えたとしても、載せることの公共性が高いという判断だ。
■新聞は誰に寄り添うか
・限られた紙面のなかで、どのニュースに焦点をあてていくべきか。これは新聞の編集方針にかかわる重要なものだが、国際報道をみると欧米に偏重しているケースが多い。そもそも特派員の数も違う。大手新聞社でもあの広大なアフリカやラテンアメリカに特派員をそれぞれ1人配置しているだけである。
・複数の新聞を読み比べると、「あ、そうか」とどの記事にも書かれていないことに気づくことがある。このような効果があるということだ。
目次
プロローグ
第1章 「ポスト真実」時代の新聞
第2章 新聞による作為、不作為の嘘
第3章 朝日問題の本質とその余波
第4章 新聞の嘘を見抜く読み方
第5章 報道写真の虚実
第6章 新聞は誰に寄り添うか
第7章 新聞はもう終わったメディアなのか
ISBN:9784582858525
。出版社:平凡社
。判型:新書
。ページ数:264ページ
。定価:860円(本体)
。発売日:2017年09月15日初版第1刷続きを読む投稿日:2023.08.01
報道の自由度ランキングでは、毎年日本は最下層群となっています。不思議なのは、日本の4大紙(読売、朝日、毎日、産経)のうち半分(朝日、毎日)が反権力(反政府寄り)紙で両論併記どころか自社のイデオロギーへ…の露骨な誘導さえ疑われるほど自由な紙面構成なのに、なぜいつもこうしたランキングになるのかという点です。彼らは報道の自由のみならず、恣意的に報道しない自由をも謳歌しています。本書では、「自己規制や忖度で権力側に迎合している」側面もあるとの分析ですが、であれば、なおさら報道側の報道姿勢の問題となります。まぁ、アンフェアな記者クラブ制度だけでもまず廃止すべきでしょう。
また、朝日新聞の一連の問題、従軍慰安婦問題の吉田証言報道や福島第一原発での吉田調書捏造など、社としての誤報は認めるも謝罪抜きの訂正報道のみでした。その理由が、経営者の「社を守る」ための鶴の一声だったというのですから呆れます。
筆者は朝日新聞社に33年勤めていたわけですから、問題があれば内部からの改革提言など出来たはずでしょう。会社を辞めてから、第三者の様な視点で書くのにも違和感があります。続きを読む投稿日:2022.11.02
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