敗者の想像力
加藤典洋(著)
/集英社新書
作品情報
1945年、日本は戦争に負け、他国に占領された。それから四半世紀。私たちはこの有史以来未曽有の経験を、正面から受け止め、血肉化、思想化してきただろうか。日本の「戦後」認識にラディカルな一石を投じ、90年代の論壇を席巻したベストセラー『敗戦後論』から20年。戦争に敗れた日本が育んだ「想像力」を切り口に、敗北を礎石に据えた新たな戦後論を提示する。本書は、山口昌男、大江健三郎といった硬派な書き手から、カズオ・イシグロ、宮崎駿などの話題作までを射程に入れた、21世紀を占う画期的な論考である。【目次】まえがき/はじめに 想像力にも天地があること――小津安二郎、『敗北の文化』、カズオ・イシグロ/第一部 敗者の日本/第一章 私たちが被占領民だったころ――W・G・ゼーバルト、林達夫、朴泰遠/第二章 占領下の文学――第三の新人、曽野綾子、大江健三郎、目取真俊/第三章 ゴジラは死んで、どこに行くのか?――本多猪四郎、R・エメリッヒ、G・エドワーズ/幕間 シン・ゴジラ論(ネタバレ注意)――庵野秀明/第二部 敗者の戦後/第四章 低エントロピーと「せり下げ」――山口昌男と多田道太郎/第五章 世界の奴隷として考えること――吉本隆明と鶴見俊輔/第六章 「成長」なんて怖くない――宮崎駿と手塚治虫/第七章 大江健三郎の晩年/終わりに 『水死』のほうへ――大江健三郎と沖縄/あとがき
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商品情報
- シリーズ
- 敗者の想像力
- 著者
- 加藤典洋
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社新書
- 書籍発売日
- 2017.05.22
- Reader Store発売日
- 2017.07.21
- ファイルサイズ
- 0.3MB
- ページ数
- 272ページ
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この作品のレビュー
平均 3.9 (8件のレビュー)
-
「敗者の想像力とは、敗者が敗者であり続けているうちに、彼のなかに生まれてくるだろう想像力のことである。自分が敗者だというような経験と自覚をもっていないと、なかなか手に入らないものの見方、感じ方、考え方…、視力のようなものがあるはずだが、そういうものをまとめて、ここでは「敗者の想像力」と呼んでおく。」23
「敗戦国に特有のものではない。それは普遍的な拡がりをもつ。」25
「敗者の想像力と敗者への想像力。
この二つはたしかに違っている。自分たちが敗者である。その自覚の底に下りていく。そしてそこから世界をもう一度見上げてみる。見下ろす想像力と、見上げる想像力。想像力にも天地があるのである。」27
シヴェルブシュ『敗北の文化』
カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』
「…つまり、占領は、日本が占領されていた敗戦に続く七年間の期間、占領軍の側から「見えにくく」されていただけではなく、被占領側である私たち自身の側でも、それを「見まい、認めまい」としていた。心理的にはどうあれ、構造的には、「見えにくく」する占領側と、「見まい」とする被占領側とが、見事に肝胆相照らし、協力し合っていたのである。」44
「…安岡、小島、また同じ第三の新人の庄野潤三、さらに江藤淳などが、その後、ロックフェラー財団等の助成により、アメリカに「留学」し、小説家・批評家としての滞在経験をもつことになることも、すぐに思い返される。
彼らは、アメリカ政府が招聘しても国益に適うと判断するー左翼性の洗練を受けていないー第三ならぬ、第一期の戦後日本の文学世代でもあったのである。」59
マイク、モラスキー『占領の記憶/記憶の占領』
アハマド・M・F・モスタファ
ポール・スミンキイ
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続きを読む投稿日:2024.07.01
敗戦後論から20年。さまざまに論じた加藤典洋の1冊だが、白眉は大江健三郎論なのだと思うが、残念ながら初期の小説群以外全く読んでいない。しかし、大江が晩年「沖縄ノート」で非難した集団自決事件への名誉棄損…裁判の行方には関心があった。もう一度大江の小説群を読んでみようと思う。続きを読む
投稿日:2022.12.31
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