長靴を履いた開高健
滝田誠一郎(著)
/小学館
作品情報
小説家・開高健が書かなかった釣師・開高健。
アラスカ、アマゾン、モンゴルなどに釣行取材班を結成して長期滞在するというお金のかかる冒険を、新聞社、大出版社を口説いて実現させた小説家・開高健は、行動する作家でもあった。氏の、「釣り師」の部分だけにスポットをあて、その釣りに同行した人びとの証言と新資料を、ジャーナリストの滝田誠一郎氏が集めたヒューマンドキュメント。釣行では、人徳のある班長振りを発揮しながら大物を狙うが、ちっとも釣れずに雨中を立ち尽くすこともある。そんな時のエピソードなど、開高健が書かなかった新事実がふんだんに証言される。従って、豪快怪魚写真集とは一味も、二味も違う。開高ファンはもちろん、釣り師、人生の転機にある団塊の世代など幅広い読者にオススメの1冊です。
※この作品はカラー写真が含まれます。
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商品情報
- シリーズ
- 長靴を履いた開高健
- 著者
- 滝田誠一郎
- ジャンル
- スポーツ・アウトドア - 釣り
- 出版社
- 小学館
- 書籍発売日
- 2006.06.01
- Reader Store発売日
- 2016.10.07
- ファイルサイズ
- 37.4MB
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この作品のレビュー
平均 4.0 (2件のレビュー)
-
過去に読んだ開高本の中では、
一番の一冊。
著者も釣師だとのこと。
うなずける。
浮かび上がる釣師開高健の姿。
そして人間、開高健の姿。
投稿日:2007.11.12
「私の釣魚大全」「フィッシュ・オン」「オーパ」など、開高健が記した釣りにまつわる紀行と、その紀行に関わった人々への取材を通し、人間・開高健を生き生きと再構成して描き出した優れた評伝。
たとえ釣りには…まったく興味が無くても、この評伝を読み進めるうちに、開高健に魅惑され、ああ、叶うことなら、世界中を旅するその場に居合わせて、笑い、落胆し、驚く経験をしてみたかった、と思わずにはいられない。
京都の神学者、杉瀬祐は開高健を「作家が釣りをしている」と評したという。「この人は釣り師ではないと思った。釣り作家でもない。作家そのもの。作家が釣りをしているんだと思いましたね」(p.11)と。
小説家の残した「オーパ」のまぼろしの取材メモ。『赤道6時に夜が明け、6時に日が沈む』とだけ記されている部分があったという。(p.155)
そのメモが、実際の原稿ではこうなると、著者は引用する。
『このあたりは赤道直下そのものではないけれどほとんど
直下といってよい地帯で、六時に夜が明けて、六時に
陽が沈む。夜明けの雲は沈痛な壮烈をみたして輝き、
夕焼けの雲は燦燦たる壮烈さで炎上する。そそりたつ
積乱雲が陽の激情に浸されると宮殿が燃え上がるのを
見るようである。』
それこそが『「オーパ!」(驚きの感嘆詞)とつぶやかざるを得ない』と著者はいう。同感だ。同時に、その赤道の雲を自分も見たかったと思う。自分がみたあの空が、作家の内面を通してどのように表現されるのか、その奇跡に立ち会いたかったと思えてくる。
「オーパ!」。
その第一回の最初の見開きのリード文にはこうあると、著者は作家の言葉を再掲する。
『1万6000キロ、2ヶ月間、取材班はこの国をさまよった。
さまよっては驚き、新しい驚きを求めてさらにさまよい、
驚くことを忘れたこの時代に驚くことの切実さを知らさ
れた。驚くことを忘れた心は、窓のない部屋に似ては
しまいかーーー? この連載は、現代生活が失って
しまった新鮮な"驚き"を求める人のためにある。』
驚きを失ってしまった現代。『半ば子供の脳を持った大人衆』である開高健を通して、我々は、もう一度、驚きを求めて彷徨う旅に出ようと、作家と著者が魅惑する。
"橋の下をたくさんの水が流れた"という表現を作家はしばしば使ったという。作家が下敷きにしたのは、ギョム・アポリネール 「ミラボー橋」。
ミラボー橋の下を
セーヌ川が流れ
われらの恋が流れる
わたしは思い出す
悩みのあとには
楽しみが来ると
日も暮れよ、鐘も鳴れ
月日は流れ、わたしは残る
人はこうして片雲の風に誘われるのだろう。続きを読む投稿日:2014.04.02
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