からゆきさん 異国に売られた少女たち
森崎 和江(著者)
/朝日文庫
作品情報
戦前の日本で、貧しさゆえに外国の娼館に売られた少女たちがいた。国外に売られ、狂死したキミ。南方で財をなし、壮絶な自殺を遂げたヨシ。綿密な取材と膨大な資料をもとに、ふたりの からゆきさん の人生を綴った傑作ノンフィクションが復刊。
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商品情報
- シリーズ
- からゆきさん 異国に売られた少女たち
- 著者
- 森崎 和江
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 朝日新聞出版
- 掲載誌・レーベル
- 朝日文庫
- 書籍発売日
- 2016.08.05
- Reader Store発売日
- 2016.10.03
- ファイルサイズ
- 2.7MB
- ページ数
- 264ページ
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この作品のレビュー
平均 3.8 (8件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
「まっくら:女坑夫からの聞き書き」で仰天した森崎和江を読もうとしたが、新刊で買える文庫は本書だけだったので、からゆきさんって何、という無知の状態で手を伸ばしてみた。
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原著は戦後30年頃の刊行。
当然ルポルタージュ的な意義、資料的価値も深い著作だろう。
が、詩人としての森崎和江(「なぜ男は羽根かざりに似るの」)に惹かれる者としては、彼女が友人(綾さん→おキミさん)や多くの年長者と語る(インタビューというよりは、語る)中で感じた「身の震え」のようなものを想った。
その界隈に詳しい人からどう思われるかわからないが、初心者としてはどうしても連想せざるを得ない……石牟礼道子が「苦海浄土 わが水俣病」について(ルポではなく)「白状すればこの作品は、誰よりも自分自身に語り聞かせる、浄瑠璃のごときもの、である」と言っていたのと似て、この一冊をまとめることが森崎和江の詩的営為だったように、感じた。
狙いとしては、活字で発言することのなかった人たちを代弁することで、日本の急速な近代化を裏側から撃つ、という「まっくら」に似たもの。
しかし森崎の聞き取りは、闘争や革命のための道具では、ない。
虐げられた民衆という(わかりやすい)構図からははみ出す側面も描かれ、2020年代の読者にとってはそこが興味深い。
日本近代化に伴ういわば輸出産業とされたからゆきさんが、いや実際は個々の名前を持つ一人一人が、売られた先で逞しく成功する……たとえばおヨシ。
今日マチ子のカバーイラストに引っ張られての感想だが、高浜寛あたりがあっけらかんと漫画化してもよさそう。
島原や天草の地域性に言及するあたりはルポではなく文化人類学で、からゆきさんという言葉が表す、やわらかさ……。
とはいえ庶民の逞しさが官憲に勝ったのだ! という(わかりやすい)逆構図でも、決してない。
だいたいおヨシさんの最期にしたって、一読者としてあまり考えずに読めば、潔いと褒めそやす感想を持ちかねないが、浅はかすぎる>自戒。
自然死ではなく自死なのだ。
一人の少女が、成長過程で得た根拠地を引き剝がされた後、得たり失ったりした挙句、回顧するときどう思うか……その機微にまで、さすがに一読者は至れない。
が、当人や関係者から話を聞いた森崎和江は、身が震えたのだろうな。
また、逞しさなどなく権力の前に斃れたり死んだりした多数の女の、聞き取れなかった声を想像することも、森崎の執筆行為の一部。
そして森崎が撃とうとしている、性を売買する制度(公娼制。表立って国家が!)。
その約50年後も、変わりない……人の愚かさはそのまま。
権力が勝った、とも、民衆が勝った、とも、簡単には云いきれない混沌としたステージで、自分が民衆のひとりとして虐げられつつも、見下すことの可能な相手に対しては権力的に作用する・権力を内在化することもしかねない自分=男性が、否応なく生理的欲求や文化的欲望に駆り立てられて、女性を想う……変なことをしない歯止めに、本書がなってくれるはず。
ちなみに石牟礼は内海に向かい、森崎は外海に向かう。
この違いが判ったのも、よかった。
@
■ふるさとを出る娘たち
◇玄界灘を越えて
◇密航婦たち
◇ふるさとの血汐
■国の夜あけと村びと
◇おろしや女郎衆
◇シベリアゆき
◇異人の子と上海
■鎖の海
◇唐天竺をゆく
◇海をわたる吉原
◇戦場の群れ
■慟哭の土
◇おキミと朝鮮鉄道
◇大連悲歌
◇荒野の風
■おくにことば
◇おヨシと日の丸
◇天草灘
■余韻
●解説 斎藤美奈子
@
※wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8B%E3%82%89%E3%82%86%E3%81%8D%E3%81%95%E3%82%93
※関連作
1937 映画「からゆきさん」鮫島麟太郎原作
1960 村岡伊平治(女衒、開拓事業、トラジャ国王)の「自伝」記述は眉唾
1972 山崎朋子「サンダカン八番娼館 ―底辺女性史序章―」で広く知られる
1973 今村昌平「からゆきさん」→村岡を題材に1987「女衒 ZEGEN」 ※今村の他の作に「にっぽん昆虫記」、野坂昭如原作「エロ事師たちより 人類学入門」、「神々の深き欲望」、佐木隆三原作「復讐するは我にあり」、深沢七郎原作「楢山節考」、井伏鱒二原作「黒い雨」、吉村昭原作「うなぎ」、坂口安吾原作「カンゾー先生」、辺見庸原作「赤い橋の下のぬるい水」
1974 熊井啓「サンダカン八番娼館 望郷」 ※熊井の他の作に三浦哲郎原作「忍ぶ川」、遠藤周作原作「深い河」「海と毒薬」「愛する」(わたしが・棄てた・女)、武田泰淳原作「ひかりごけ」
1976 本書
1983 山谷哲夫「じゃぱゆきさん」
2015 嶽本新奈「からゆきさん - 海外〈出稼ぎ〉女性の近代」 ※博士論文 境界を超える女性たちと近代 ——海外日本人娼婦の表象を中心として—— 嶽本新奈 https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/hermes/ir/re/26725/lan020201300703.pdf
※にっぽんの子守歌 https://www.youtube.com/playlist?list=PLEE01370FE68F38A3
という凄まじいドキュメンタリー音源がある。
名前の通り日本各地の子守歌を蒐集調査する音源なのだが、お婆さんの歌、お婆さんの語り、関係者へのインタビュー、のおおむね3種類で構成される。
A面からE面まで、確かにあの地にこの人がいたのだなと思わせる歌や語りに満ちて、素晴らしい視聴体験ができた。(B面は欠落?)
F面の終盤で、森崎和江がからゆきさんの子守唄について問われ、子を持てなかった女と話したときの戸惑いについて答えている。
「おなごのしごと」について、か細くも丁寧で、いい声で。
この声で多くの人から話を聞いたのかと、想像の杖になった。
またG面の中盤では、炭鉱での出産はとりわけ喜ばれた、という話も森崎和江がしている。
びっくりしたのはH面で寺山修司が、間引きについて話していること。
幼い頃から、もし自分が間引かれるなら菰に巻かれて川に流してくれれば誰か貴人に拾ってくれるのではと想像していた、とか。
眉唾ながら実に寺山らしい。
が、次に寺山が言っていた、実際は東北では川流しなどせずとも風に向けて赤子の口を開かせたら自ずと窒息死するのだ、という挿話……眉唾でしかない人が言うことなのだが、突拍子なさすぎるゆえ、実に真実味があって、驚いた。
https://www.youtube.com/watch?v=ocUeidfYpgs&t=3892s
今村昌平によるインタビュー映像1973。75分。すごい凄い。投稿日:2022.06.29
想像していた内容とは少し違っていた。
けれどもからゆきさんとはどんな人達が何故からゆきさんになったのか。
それの事に関する時代背景や国、その地域での暮しからからゆきさんを知る事が出来た。
投稿日:2023.01.22
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