天皇陛下の全仕事
山本雅人(著)
/講談社現代新書
作品情報
天皇はどんな仕事を、どんな内訳で、どのように行っているのか? 天皇・皇后両陛下の平成流スタイルとは? 意外に知られていない宮中の毎日を紹介する、「読む事典」。 国事行為、宮中祭祀、宮中晩餐会、地方訪問、稲作など知られざる毎日を、元宮内記者がやさしく解説。 この一冊で皇室記事が10倍面白くなる!
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商品情報
- シリーズ
- 天皇陛下の全仕事
- 著者
- 山本雅人
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社現代新書
- 書籍発売日
- 2009.01.20
- Reader Store発売日
- 2016.09.30
- ファイルサイズ
- 21.1MB
- ページ数
- 368ページ
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この作品のレビュー
平均 3.9 (37件のレビュー)
-
天皇陛下の職務は憲法に定められた国事行為と、公的行為、そしてそれ以外の私的行為って教わった気がしたんだけれど、実際にはようわかってないからとても興味深く読めた。
外国訪問って国事行為だと思っていたけ…ど、よく考えたら憲法のどこにも書いてないから違うんだな。とか、陛下、職務多過ぎ!!とか。休みなさ過ぎ!とか。
そして、皇室が皇室であるために一番大事な宗教儀式は、宗教儀式であるが故に、公式には「その他の私的行為」となり、儀式のための人員は皇室が私的に雇用しているというのも、まあ、そうするしか無いのだろうけれど、本末転倒な感じも。
伝統(明治以前からの伝統と、明治以降の伝統)と政教分離を定めた憲法の間で、この先、皇室はどのように(これまでも形を変えながら存続してきた様に)形を変えて存続していくのだろう。続きを読む投稿日:2019.05.12
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368頁
山本雅人
1967(昭和42)年、東京都生まれ。学習院大学文学部卒業後、産経新聞社入社。現在、編集センターで健康に関する分野などを担当。社会部時代の2003(平成15)年2月~2…005(平成17)年2月、宮内記者会(宮内庁記者クラブ)で皇室取材を担当。著書に、『天皇陛下の全仕事』(講談社現代新書)、『天皇陛下の本心』(新潮新書)がある。
天皇陛下の全仕事 (講談社現代新書)
by 山本雅人
このほか、一般でいう別荘にあたる「御用邸」が三ヵ所ある。 昭和天皇が 摂政 の時代の大正一五(一九二六) 年に造られた「那須御用邸」(栃木県那須町) は敷地面積が六六二万六六四平方メートル(建物は七一七四平方メートル) で皇居の約六倍の広さ。広大な自然の中、昭和天皇が毎年夏に静養で訪れ、植物採集や研究を楽しまれていた。現在の天皇・皇后両陛下が年に数回、静養に使われる海辺の「葉山御用邸」(神奈川県葉山町) は九万五七九六平方メートル(建物は三三二一平方メートル)。そして伊豆半島の先端にあり、毎年夏、天皇・皇后両陛下が皇太子ご一家や秋篠宮ご一家を呼び寄せ、砂浜を散策されるニュース映像などでおなじみの「須崎御用邸」(静岡県下田市、三八万四四一三平方メートル、建物は五二二七平方メートル) の三つだ。 皇居はじめこれらの施設は憲法第八八条(「すべて皇室財産は、国に属する」) により国有財産となり、「皇室用財産」として皇室に提供されている。つまり、御所や宮殿などは、天皇家の所有物ではなく国が所有し、天皇家が国から借りているかたちになる。これは、天皇や皇族の日常に必要な基本的な財産は、国が提供する制度ともいえる。
皇室用財産にはこのほか、京都御所や桂離宮、皇室用や宮中晩餐会の食材を生産している広大な 御料 牧場(栃木県高根沢町・芳賀町) などがある。そのうち、京都御所のある京都御苑の中には英照皇太后(明治天皇の母) のために慶応三(一八六七) 年に建てられた京都大宮御所という建物があり、天皇・皇后はじめ皇族が地方訪問で京都を訪れた際の宿泊に使われている(他県を訪問の際は一般のホテルなどを利用する)。
また、担当をはずれてからのことになるが、悠仁さまご誕生の際、愛子さまのときとの命名発表のしかたの違い(愛子さまご誕生のときは、宮内庁の総務課長が 金 屛風 の前で称号やお名前が大きく書かれた紙を前に記者発表したのに対し、悠仁さまの場合は、お名前が「悠仁」に決まった旨の紙が記者クラブで配られただけ) も強く印象に残った。
またそのころ、「男系」「女系」ということがしきりに言われたが、「男系」の皇族とは天皇や皇族を父に持ち、天皇の血を父親から継いだ人、「女系」は天皇や皇族を母に持つ人をさす。歴史上、八人存在した女性天皇はいずれも男系であったことから、「男系の女子」の皇族(愛子さま、 子さま、佳子さま……) なら一代限りで皇位継承を認めようという立場の意見も出された。
男系の女子なら認め、女系の場合は男子も女子も皇位継承を認めない立場について、考えられる理由の一つに、「姓の系統が変わる」、たとえば一般の家庭でいえば、「田中花子」と「山田太郎」が結婚した場合、生まれた子供はどちらかといえば「山田家の子供」と世間の多くの人に認識されるように、女性天皇と民間の男性が結婚して子供が生まれた場合、その子供は民間の男性の方の家系の子供だという認識になってしまうことがあげられる。
天皇家の宗教も神道であり、歴史的に天皇は、稲作を行う農耕民族の代表者として、神に豊作を祈願し感謝する、そして、自らが統治する領土の安泰と人々の幸福・繁栄を祈願する存在、つまり祭祀の主宰者(祭祀王=国の祭りをする人) として存在してきたといわれている。「天皇」の起源については、「おそらく『 巫祝』(神に仕え、神事をする人) としての呪力が、物質上の実力と相まって、三世紀前後に民衆の上に立つ支配者を生み出す根源であったと思われる」(吉川弘文館『国史大辞典』中の「天皇」の項、家永三郎氏の記述) という。この点について筆者は、複数の古代史の権威に確認したが、祭祀王的な面にプラスして、共同作業となる稲作の指導者(司令塔) 的な面もあわせもっていたものの、家永説は年代も含め、現在の学界ではほぼ穏当な解釈だとのことである。
同氏は、すべての国民が法の下に平等であるわが国で、天皇だけが「象徴」という一般国民と異なる地位にあることの背景の一つに、「天皇が皇室祭祀を主宰し国民の幸福を祈る存在であるということも、国民の皇室に対する特別な意識の背景に存するものと考えられる」との見解を示している。ただ、これらの祭儀のすべてが古くから連綿と行われてきたわけではなく、長い間、途絶えていたものを明治時代に復活させたり、新たに創り出されたりしたものもある。 なお、平成二一年には、平成になって満二〇年をこえ、天皇陛下もすでに七五歳になられていることから、負担軽減のため、内容の調整がはかられるという。ちなみに昭和天皇は、六九歳のときから、いくつかの祭祀について、掌典長の代拝などに切りかえられた。
このため、政治的なニュアンスも含まれてしまう「皇室外交」という言葉を、宮内庁は使用していない(宮内庁ホームページでは「皇室の国際親善」という言い方をし、外国交渉的な意味を取り除いている)。外国交際に関しても、天皇は、公平・公正であることを含め、憲法の趣旨にのっとり、「象徴」としての性格に反しないことが必要とされる。
天皇にとっての国際親善(外国交際) とは、以下のように幅広いものがある。 1 外国を訪問すること 2 国賓を含む、来日した外国賓客に会い、もてなすこと 3 駐日外国大使らへのさまざまな接待 4 諸外国への災害見舞いや各国の建国記念日の祝意など、各国の元首らと電報(親電) や手紙(親書) のやり取りをする 5 海外へ赴任予定の大使や、任期を終え帰国した日本の大使らに会う(ねぎらう)
宮殿に入って渡り廊下の手前には、日本画の大家、東山魁夷 の海の波をモチーフにした大壁画が飾られており、渡り廊下からは美しい中庭がガラス越しに目に入り、その美しさについて会見・引見の際に話題にする賓客も多い。天皇と賓客の先導は、宮内庁の儀式や外国交際関係を担当する部署、 式部職 のトップである式部官長が行う。
各テーブルには、花器に入れられた一〇種類を超える花が飾られて、会場(豊明殿) の左右端にも大きな生け花がそれぞれ飾られる。インドネシア大統領夫妻のときは、サルスベリやアジサイ、ツバキの生け花が置かれた。
国賓はこの後、数日間、日本に滞在するケースが多い。その間に首相官邸で行われる首相主催の晩餐会出席や国内の企業視察など多忙なスケジュールをこなす。地方に行くケースもある(前出のインドネシア大統領の来日では、トヨタの工場視察のため、愛知県に行った)。
平成に入って二〇年あまりで一四回の海外訪問ということは、ざっと平均すると一年半に一回、海外訪問されていることになる。ただ、 前立腺 がんの手術を受けたあとは三年近く(平成一四年七月~一七年五月) 海外訪問がなかったり、一方、一年に二回(平成六年、六月の米国と一〇月の仏・スペイン・独など) 訪問された年もある。
両陛下ご訪問の際のさまざまな視察・見学をみてみると、博物館や美術館、ヨーロッパなどでは中世の古城や大聖堂、そして歴史ある街並みの散策、それから音楽関係(歴史あるオペラの劇場のご見学や両陛下のためのミニコンサート) などが多い。市街地を徒歩で散策される際は、見物の地元の市民と気軽に声をかわしたり握手をしたりして、訪問国民との交流をされる。ミニコンサートは、音楽がお好きな両陛下(特にピアノを演奏する皇后さま) をもてなそうとの訪問国側の配慮がうかがえ、実際、コンサートの最中、演奏者の側から「ぜひご一緒に」と促され、皇后さまが飛び入りでピアノの演奏をされたこともある。
毎日新聞ロンドン支局長を務めた黒岩徹氏の『物語 英国の王室』(中公新書) によると、英国王室では外国訪問の際、日本の皇室と異なり、産業界の代表団も随行するという。訪問の目的が「親善」だけでなく、英国製品の売込みなど貿易関係の促進という、政治的意味も含んだ王室外交であるからだ。
羽田空港(天皇・皇后や皇太子夫妻は海外訪問の際、一般の便を使わないので、成田でなく羽田空港を使用する) から現地の往復、そして複数国間の移動には政府専用機のジャンボ(ボーイング747) が使われる。政府専用機は、白地に金のアンダーラインをあしらった機体で前方側面に「日本国」という文字、尾翼には日の丸が描かれている。機内は執務室や会議室を持つ特別仕様で、航空自衛隊千歳基地に所属、客室乗務員も自衛官が務める。搭乗するのは両陛下のほか首席随員、宮内庁や外務省の随行の人たち、同行する宮内庁担当の記者らで一〇〇人近くになる。
たとえば先にふれた平成一四年の、ポーランド・ハンガリー・チェコ・オーストリアご訪問を前にした記者会見では、この四ヵ国を初めて訪問するという皇后さまが、四ヵ国の芸術・文化の印象についての質問で次のように話された。 「私はこれまでそれぞれの国と、淡いながら何かよい巡り合いをしてきたように思います。そのうちのあるものは本であり、カレル・チャペックの郵便屋さんの物語や、それについていたヨセフ・チャペックの挿絵、モルナールの『パール街の少年たち』、シェンキェヴィチの『クオ・ヴァディス』等でした。一九七〇年の世界万国博のチェコ館で見た、美しい一冊の本の姿も忘れることができません。チェコの教育者コメニウスの本であるという説明を受けましたが、一国を代表するものとして本が飾られていたということが、その後も長く私の記憶に残りました」
皇室の海外訪問は友好親善が目的で、政治的なものに巻き込まれないことが重要だと述べたが、政治利用された可能性のあることが明らかになってしまった例がある。 中国の銭其琛・元副首相が平成一五(二〇〇三) 年に出した回顧録『外交十記』の中で、平成四年に天皇・皇后両陛下を中国に招待したのは、一九八九年の天安門事件を理由に西側諸国が発動した経済制裁を解除させる突破口にするためだった(つまり、両陛下のご訪問に合わせ日本が制裁解除したとなれば、他国も追随せざるをえない状況にもっていける)、という趣旨のことを明らかにしたのだ。当時、中国の外相だった人物が自ら書いているのだから間違いはないのだろうが、「国政に関する権能を有しない」天皇が政治的に利用されたとなれば憲法に抵触するような問題である。
「県勢概要説明」とは、地方訪問などの際、県民の代表である知事が県の現状を説明するもので、数十分の行事ではあるが、日本(全体) の「象徴」でありながら、日ごろ東京で過ごす天皇・皇后にとって、地方の状況を知るための重要な行事であり、機会である。そこでは、その県の地理的な特徴や気候、人口、歴史といった基本的なデータから、県の経済状況、振興のために行われていること、産業(工業、農業、特産品)、文化などが知事から直接説明される。その内容は報道にも公表される。
まず、 糸満市 摩文仁 の沖縄平和祈念堂で平和祈念像に拝礼、そして堂内で沖縄県遺族連合会の会員約九〇人を「五〇年前は大変でしたね」などとねぎらわれた。 続いて、近くの国立沖縄戦没者墓苑に行き、納骨堂の前の参拝所で白菊を献花された。さらに、近くの「平和の 礎」へ。ここは沖縄県民や県外の人のほか、米国、台湾、北朝鮮、韓国の計二三万人余の沖縄戦犠牲者の名前を刻んだ石碑が並んでおり、両陛下は説明を受け、歩きながら石碑に見入られた。その後、夜、飛行機で羽田に戻られた。
沖縄訪問の翌日、両陛下は東京・墨田区の東京都慰霊堂を訪れ、献花された。 その五日後(八月八日)、両陛下は戦後五〇年にあたって戦没者遺族への心境を詠まれたお歌を一首ずつ、日本遺族会に寄せられた。 天皇陛下 国がため あまた 逝きしを 悼みつつ 平らけき世を 願ひあゆまむ 皇后陛下 いかばかり 難 かりにけむ たづさへて 君ら歩みし 五十 年 の道 両陛下は地上戦の舞台となり、県民がつらい思いをした沖縄に特別の思いを寄せられているようである。慰霊の旅だけでなく、平成五(一九九三) 年に即位して初めての訪問(植樹祭) の際にも、また、最近では、筆者も同行取材したが、平成一六年に訪問した際にも、国立沖縄戦没者墓苑に参拝されている。
ハゼの研究者としても知られる陛下は、式典で、「全国豊かな海づくり大会が、湖では初めて、ここ滋賀県大津市の琵琶湖畔において開催されることを誠に喜ばしく思います」と述べた後、以下のように続けられたのである。 外来魚やカワウの異常繁殖などにより、琵琶湖の漁獲量は、大きく減ってきています。外来魚の中のブルーギルは五〇年近く前、私が米国より持ち帰り、水産庁の研究所に寄贈したものであり、当初、食用魚としての期待が大きく、養殖が開始されましたが、今、このような結果になったことに心を痛めています。(中略) この大会が河川、湖沼の生物を愛する心を培い、皆で豊かな 湖 づくりに励む契機となることを願い、大会に寄せる言葉といたします。
拝謁はいずれも宮殿で行われると述べたが、その規模(人数) などによって、使われる部屋は異なる。たとえば、厚生労働大臣表彰の医療功労賞受賞者らの拝謁は、東山魁夷画伯の大壁画のある「波の間」で行われる。また、叙勲関係はすでに述べたように、大綬章の受章者は「松の間」で、重光章(旧・勲二等) 以下の受章者は「豊明殿」や「春秋の間」などで行われる。
お言葉だけでなく、親しく語らう「接見」は、「皇太子奨学金奨学生」(毎年七月、日本とハワイの大学院生を互いに派遣する事業)、「日本青年海外派遣団員」(同九月、世界五地域に日本の青年を派遣するもの)、「国際交流基金賞・同奨励賞受賞者」(同一〇月、海外との相互理解や友好親善促進に貢献のあった団体・個人に贈られる賞) などがある。
このように、御用邸などでの静養は、休みを補うもの、言いかえれば、連続勤務の疲れをとるためのものと考えてもいい。 第二点として、天皇が、国事行為を行う「国の機関」として 滞りなく機能するために、健康な状態でいていただく必要があるということがある。日本が国家として機能していくうえで、天皇に健康でいていただくことは重要なのである。だから休養(私的な面) をしっかりしてもらうことは「象徴たる立場にある陛下のご行動は、私的な面であっても公的な面に影響があり、私的なご行動が適正でないと、結局、公的な面を害することになる」(『宮中侍従物語』) とされる。
両陛下は現在、御用邸でおもに静養されている。皇太子夫妻時代には、夏は長野・軽井沢の民間のホテルを利用し、即位当初は同様にされていた。ところが、御用邸があるのに別のところに行くことについて一部で批判などがあり、それが影響したのか、軽井沢に行かれることもほとんどなくなってしまった。
これについて森暢平氏は、現在の三つの御用邸はいずれも昭和天皇のために建てられ、お気に入りの場所だったという経緯があるとし、那須は、学者天皇ともいわれた昭和天皇の植物研究、葉山と須崎は昭和天皇の海洋生物研究の拠点としたうえで「国民の休暇の過ごし方が多様化して久しい。天皇陛下もたまには好きな場所で休みを過ごしたいのではないだろうか。先代から受け継いだ御用邸でしか休日が過ごせないのは気の毒だ、と私は思うのだが」(『天皇家の財布』) と述べている。
ただ、それ以降、平成一七年夏には長野・山梨県(八ケ岳、清里)、二〇年夏には長野・群馬県(軽井沢、草津) へ静養的な訪問をされているが、基本的には御用邸での静養が中心となっている。 なお、御用邸での静養中、基本的に行事は入らないが、火曜・金曜の午後は内閣官房の職員が上奏書類を現地まで持参し、御用邸内で執務、つまり国事行為が行われることは先に述べたとおりである。そういう点では、静養中といえども、完全な休養とまではいかない。
二〇〇〇種(日本国内では四〇〇種) 以上あるといわれるハゼだが、陛下はこれまでに分類の研究を通じ、「クロオビハゼ」や「ミツボシゴマハゼ」など計八種の新種を発見されている。 また、『日本産魚類大図鑑』(東海大学出版会) では共同執筆者として、ハゼ科二九六種のうち一九五種の項を執筆したほか、研究を始めた昭和三〇年代からこれまでに、三〇近い論文を、所属する日本魚類学会の学会誌に発表されるなどの研究成果がある。 ハゼの研究については、平成一〇(一九九八) 年に英国王立協会から「チャールズ二世メダル」(科学の進歩に顕著な貢献のあった元首に贈られるメダル) を陛下が授与された際、スピーチでご自身の研究について解説されている。 それらによると、陛下が研究を始めたころはその分野の研究者も少なかったものの、研究を通じ、「(ハゼの) 頭部感覚器官の中の 孔 器 の配列」がそれぞれの種の特徴を表していることを陛下が発見され、この特徴を使って、これまでの分類に疑問がもたれていたものについてはっきりと区別することができるようになったという。 ただ、そのスピーチでは「即位後のいそがしい日々は私をすっかり研究から遠ざけてしまいました」と、皇太子時代とは違い、天皇に即位してからは国事行為をはじめとするさまざまな公務で多忙を極め、研究の時間がなかなか確保できない心情も述べられている。
両陛下が軽井沢のテニスコートでのトーナメントで出会われたことはあまりにも有名だが、七〇代になった現在も、休日にはテニスをされている。 宮内庁次長の定例記者会見が毎週月曜にあり、その直前の土曜・日曜に両陛下がどのように過ごされたかについてふれるが、公務などのなかった日には「両陛下は、週末はテニスをなさりました」という言葉をよく聞く。
皇后さまも、聖心女子大でテニス部の主将を務められた実力の持ち主である。
関係者によると、陛下の起床時間はだいたい午前六時ごろ、朝は新聞に目を通し、テレビのニュースなどもご覧になるという。就寝時間は一定しないが、だいたい午後一〇~一一時ごろという。
両陛下の食事は宮内庁の 大膳 課の職員が作り、関係者によると、朝は洋食を、昼と夜は日ごとに和・洋・中を交互にとられており、内容は特別豪華なものではなく、一般家庭とあまり変わらないという。大膳課には調理担当と配膳担当の約四五人がおり、第一係が和食担当、第二係が洋食、第三係が和菓子、第四係がパン、第五係が皇居ではなく元赤坂の東宮御所(皇太子ご一家) ──の担当となっている。和菓子の係があるのは、宮殿行事で茶会などが多くあるためだ。
なぜ、誕生日の会見が設定されるかというと、ふだん、記者が陛下に直接取材することができないからだ。ただ、これは日本だけのことではないようで、『物語 英国の王室』によると、英国でも、記者がエリザベス女王に直接、質問してはいけないことになっているという。いずれにせよ、誕生日会見は聞きたいことを聞くことができる数少ない貴重な場なのである。
季刊誌『皇室』(扶桑社ムック) はカラー写真が豊富に使われているほか、宮内庁ホームページにも出ていない、宮家皇族の細かい日程表が掲載されており、資料性は高い。 また、お勧めしたいのが、「官報」である。官報とは土・日・祝日を除く毎日発行されている国の機関紙で、公立図書館などでバックナンバーも含め見ることができる。官報には公布された法律や政令が公布文とともに掲載されており(天皇署名の部分は活字で「 御名 御璽」と印刷されている)、日によってはいくつも並ぶ公布文を見たりすることで、天皇陛下が「執務」でどのくらいの仕事をされているのかを、実感として知ることができる。叙位叙勲があった際の名簿も必ず掲載されるので、毎週のように何百人も掲載される死亡叙勲や叙位の名簿を見て上奏書類の決裁量が推測できる。また、官報には「皇室事項」というコーナーがあり、親電のやりとりや、行事での外出などについて載っている。
本書を読み終わって、もし興味がある人は、宮内庁のホームページ、特にその中の「天皇皇后両陛下のご日程」を見てほしい。両陛下のご日常がより理解できるようになるはずだ。また、関連法規なども掲載されているので参考になると思う。
「はじめに」でもふれたが、学校教育で習う「天皇」は「国事行為のみを行う存在」としてであり、その国事行為も憲法条文の項目をあげるだけで、「衆院の解散」「総選挙の公示」など数年に一度しかないものが複数含まれている。そのようなこともあり、天皇陛下の公務の量的な面について、誤解が生じてはいないだろうかと感じていた。
最後に、広範な公的行為を行う現在の「象徴天皇制」は、多くの国民に支持されており、平成一四年(二〇〇二) 年一二月の朝日新聞の世論調査(三〇〇〇人対象、回収率六七パーセント) によると、天皇制について「象徴でよい」と答えた人は八六パーセント、「廃止するほうがよい」は八パーセント、「権威を今より高めるほうがよい」は四パーセントで、毎日新聞の同様の世論調査でもほぼ同じようなデータが出ていることを付け加えておきたい。続きを読む投稿日:2024.05.31
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