世界史とヨーロッパ ヘロドトスからウォーラーステインまで
岡崎勝世(著)
/講談社現代新書
この作品のレビュー
平均 4.1 (17件のレビュー)
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著者の岡崎勝世氏は、ドイツ近代思想史を専門とする歴史学者。
本書は、E.H.カーが歴史学の古典『歴史とは何か』で提起する「歴史とは現在と過去との対話である」という考えに基づき、ヨーロッパにおいて、その…時代ごとの「現在」がどのように変化し、その結果、「現在」から行われる「過去」への問いかけと解答がどのように変化したのか、即ち、「歴史はどのように書き換えられてきたのか」について、古代から近代まで時代順に追究したものである。
その内容は概ね以下の通りである。
◆古代・・・古代ギリシア人、古代ローマ人は、世界を、自由な市民(真の人間)の住むヨーロッパ、一段劣った人間の住むアジア・アフリカ、怪物たちの住むその外側の地域という「古代的な三重構造の世界」と捉え、時間を、同じことが繰り返す「円環的時間」と考えていた。そして、古代の歴史記述には、①同時代の政治史である、②実用性を目的としている、③一定の科学性は持つものの、方法的限界、歴史を見る目の限界を伴っている、という特徴があった。
◆中世・・・アウグスティヌスが総括したキリスト教的発想が支配し、歴史の始点はアダムとエヴァ、終点は最後の審判後の神の国の実現で、その始点と終点の間の期間が現実の人類史であり、それは直線的かつ発展的過程の「ベクトル的時間」であると考えられた(救済史観)。この聖書に直接基づくキリスト教的世界史は「普遍史」と呼べるものである。世界は、キリスト教徒=選民の住む地域、その外の異教徒の住む地域、更にその外の怪物的人間の住む地域という「中世的な三重構造の世界」と考えられた。
◆近世・・・宗教改革に伴うプロテスタント的普遍史の登場によりカトリック的時間との対立が始まったこと、大航海時代がもたらした地理的世界観の変化や新たに現れた他地域の民族(特に中国)の歴史などが絡み、普遍史は危機の時代を迎えた。
◆啓蒙主義の時代・・・科学改革に伴い、時間の概念がそれまでの「ベクトル的時間」から、始点も終点もなく、過去へも未来へも無限に伸びる「絶対的(直線的)時間」に転換した。神ではなく、人間精神(人間理性)が法則的進歩をもたらすとする「進歩史観」に基づく、世俗的な「文化史的世界史」が生まれた。ヨーロッパと遜色ない文明を持つ中国については、「自由」を基礎とするヨーロッパと異なり、「隷属」が支配する停滞した世界とすることにより、進歩史観の上では説明をした。
◆近代・・・「歴史主義的発展段階論」に基づく「科学的世界史」が生まれ、先史時代の発見、オリエント・エーゲ文明の発見(古代像の明確化)、中世の自立などにより、19世紀西欧的世界史が成立した。それは、発展を実現したヨーロッパ、古代に停滞するアジア、未開・野蛮に停滞するアフリカとする「近代的な三重構造の世界」像に基づき、アジア・アフリカに対する「文明化の使命」を掲げるものでもあった。
そして、1970年代からは、戦後世界が転換し、地球規模での多元化と一体化の同時進行という状態にあり、国民国家を基礎とした19世紀的歴史学の克服が進んでいる、と結んでいる。
良くも悪くも、過去の世界史記述の中心となり、かつ、今後の世界の行く末(将来的な歴史)に大きな影響力を持つヨーロッパ(の文化・人々)の歴史の考え方を知る上で、有用な一冊と思う。
(2017年6月了)続きを読む投稿日:2017.06.04
ヨーロッパの歴史観の変化がわかってとても勉強になりました。当たり前ですが世界史は時代によって変わる……。
投稿日:2024.01.28
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