神なるオオカミ 上
作品情報
文化大革命時代、北京の知識青年・陳陣(チェンジェン)は内モンゴルのオロン草原に下放され、現地の古老・ビリグのもとで羊飼いをはじめた。天の教えを守り、草原とともに生きる遊牧民の暮らしに魅せられていく陳陣。やがて、かれの興味は、遊牧民の最大の敵でありながら、かれらの崇拝の対象であるオオカミへと向かう。オオカミにのめりこんでゆく陳陣は、自らの手でオオカミの子を捕らえ、飼うことを夢見るのだが……。
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商品情報
- シリーズ
- 神なるオオカミ
- 出版社
- 講談社
- 書籍発売日
- 2007.11.28
- Reader Store発売日
- 2015.12.18
- ファイルサイズ
- 0.4MB
- ページ数
- 526ページ
- シリーズ情報
- 既刊2巻
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この作品のレビュー
平均 4.3 (8件のレビュー)
-
生命の真の意味は運動にあるのではなく、戦いにあるのではないか。哺乳類の生命の始まりに、億万個の精子が雌雄を決する精神をもって、一個の卵子をぐるりと取り囲んで攻める。前の者が倒れても後の者がつづき、子宮…に精子の死体があふれるほど戦闘を激しく繰り広げる。動くが戦わない、又ぶらぶらして突撃しない精子たちはすべて無情に淘汰され、尿とともに体外に排泄される。もっとも頑強な戦闘力を持つ勇士、一個の精子だけが、億万個の同胞兄弟の死体を踏み、勇猛果敢に奮戦し、卵子に攻め込み、それと結合して、新しい人間の生命の胚胎になる。その間、卵子はたえず液体を分泌し、軟弱無力の精子をすべて殺す。
生命は戦いによってえられるもので、戦闘は生命の本質である。いままで、世界で多くの農耕民族の偉大な文明が消滅したのは、農業が基本的には平和な労働だからである。
しかし、狩り猟と遊牧業、そして航海業、商工業は過酷な猟戦、兵戦、海戦、商戦という競争と戦闘が伴う。今の世界では、先進国の民族はすべて遊牧、航海、商工業をおこなってきた民族の子孫である。二つの大国によって北アジアの寒くて貧しい内陸に封じ込められた、人口の少ないモンゴル民族は、依然として絶滅していない。歴史上の古代エジプト、古代バビロン、古代インドの農耕民族より、明らかに強い戦闘力と生命力をもっている。
「士は殺すべし、侮辱するべからず」。殺すことも拝むこともできるが飼ってはいけない。と、この本は主張する。
確かに一体性の無限と違い、この相対性の有限世界は相手の存在を知ることで自分を確認することができると言う、特殊な場所である。
二つの存在が立ち向かうとき、居残りを掛けた殺し合いへとその摩擦を導くのか、個とその一体感を兼ね備えた切磋琢磨し会う共生社会とするかの、二つの体感があるのではないだろうか。
まず生き物は対等な選択権の中で生存競争を体験し、その暴力から知力をへて物質への依存による数の暴力を開発したことで、自らつくりだした煙幕に巻き込まれる恐怖を体験している。
一時的都合による見せ掛けの仲間、利己的に利用し合うための嘘と詐欺が、シンプルであったはずの相対世界を出口の見えない複雑な詭弁に絡めてしまった。
そのことで、一騎打ちの殺し合いからも手を取り合った切磋琢磨からも横道にそれてしまった。
自律することで共存する過程をネグってしまい、依存だけの強制社会に紛れ込んでしまった。一度手にした欲という安全地帯が恐怖という副産物を伴っていたために、見せ掛けだけの安全地帯だと知った後も手放すことができなくなってしまったのではないだろうか。と私には思える。続きを読む投稿日:2012.03.08
冒頭、夜間に一人、馬で家路を急ぐ主人公が、うっかりオオカミの群れに遭遇してしまうシーン。手に汗にぎるアクション映画のようなドラマティックかつ緊張感に満ちた場面に、読んでいる私はすっかり魅了されてしまっ…た。
都会育ちの主人公は、乗っている馬が必死で警告を発しているのに気づかず、自ら危険な場所へ入り込んでしまう。震えあがる主人公と対照的に、乗っている馬もオオカミもまるで歴戦の兵士のように肝が据わっている。
野生動物もすごいが、草原の民たちもみんな魅力的。老人から子供まで、誰もが驚くほど身体能力が高く、草原のことを知り尽くしていてとにかくカッコいい。
彼らがオオカミたちと繰り広げる「生存を懸けた戦い」は、戦国時代の武将たちもビックリの完璧な布陣と老獪な知恵のぶつかり合い。
読んでいて、思わず「ほんとにこれ、相手は野生動物なの?」と言いたくなるような巧みな戦いぶりにただただ驚く。人間側の圧倒的勝利、なんてものは保証されておらず、完全敗北すらある。三国志も孫子の兵法もかすむほど狡知な戦略の数々。
主人公の兄貴分であるバトが馬を守るために孤軍奮闘した戦いは、文字を追うのももどかしいほど興奮した。映画化されたそうだが、このシーン、ぜひ映像で見てみたい。カットされていないといいけど。
主人公がどんどんオオカミと草原の暮らしに魅了されていくにつれ、私も物語にどんどん引き込まれていった。
やがて主人公は、智恵の塊のようなビリグ爺さんから、「大きな命」と「小さな命」について教えられる。
この「大きな命」と「小さな命」、それは今現在、各国首脳たちが非常に頭を悩ませ討議し、北欧の女子高生が抗議運動を起こして大きなうねりとなっている環境問題の核心をついている、と思う。非常にシンプルで、素朴な考え方だけに、本の中でも、「古い迷信」などと一蹴され、上層部たちから無視されている。古い迷信どころか、実際は問題を的確にとらえた論理的な考えなのだが。
「草原」というものが野生動物たちの多様性の実に危うい均衡の上に成立していることを草原の民は完全に理解していて、それだけに何も知らない人間が入植してくることに非常に危機感をつのらせているのだが、その思いは為政者には届かない。
アクション映画のようなハラハラドキドキを楽しみつつも、背後のこの重大な問題について、暗澹たる気持ちにならずにはいられなかった。
本には実にアッサリとした地図しか掲載されていないので、グーグルマップで物語の舞台となっているオロン草原などをチェックしていたのだが、衛星写真で見ると、耕地が広がっていることにドキリとする。
もともとは、文革時代の下放の実態について興味があってこの本を読むことにしたのだが、そういう歴史的なことよりも、野生動物の生き生きとした様子の数々に、本当に驚かされた。主人公であるオオカミだけでなく、牛や馬についても、知らない事実ばかり。
たとえば、近親交配を避けるための馬たちの戦いの様子などは、驚愕だった。
放牧の黄金律、とも言うべき、馬と羊とヤギのそれぞれの頭数の割合とか。
牡牛がいかに猛々しく強いか、とか。
もう夢中でページをめくった。
その勢いのまま、下巻へ行きます!
(主人公の物思いが冗長になりがちなのが欠点と言えば欠点・・・ということで、★ひとつマイナス)続きを読む投稿日:2019.10.31
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