ガンジーの危険な平和憲法案
C・ダグラス・ラミス(著)
/集英社新書
作品情報
その膨大な講和の中から、憲法にかかわる部分をまとめた『自由インドのためのガンジー的憲法案』が、60年前のインドで刊行されていた。しかし、建国の父とまで謳われた聖人の憲法案は、今日に至るまで黙殺されたままである。それは一体なぜなのか? その謎を解く鍵は、産業資本主義の生産方式とライフスタイル、および国民国家の存立根拠とは相容れない幻の憲法案を、もう一度精査することにある。日本国憲法第9条とはまったく異質なその戦争放棄思想は、金融資本主義が壊滅しつつある現在、異様なリアリティをもって我々に迫ってくる!【目次】はじめに/第一章 最大のタブー/第二章 幻の憲法論の全貌/第三章 起こったことと、起こらなかったこと/補論 ガンジー思想の可能性/おわりに
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商品情報
- シリーズ
- ガンジーの危険な平和憲法案
- 著者
- C・ダグラス・ラミス
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社新書
- 書籍発売日
- 2009.08.23
- Reader Store発売日
- 2015.11.20
- ファイルサイズ
- 0.2MB
- ページ数
- 192ページ
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この作品のレビュー
平均 4.1 (9件のレビュー)
-
私が今までで最も影響を受けた人物であるダグラス・ラミスさんの最新作。
前著でラミスさんがガンジーの憲法案を研究していることはしっていて、その時に私も疑問を持つことができたのですが、この著書はインドで…の研究結果を論文にしたものをベースにして書かれたものです。
前著で持った疑問、それはガンジー率いる非暴力・不服従運動により独立を獲得したインドが、何故暴力をもつ近代国家への道を歩んだのか、ということ。
私は詳しくは調べていなかったから知らなかったけど、暴力をもつのかもたないのかという議論さえも残っていないということで、ラミスさんはそこに疑問を感じていて、インドの研究機関から呼ばれたことを機に研究を進めはった。
ガンジー本人はやっぱり、独立後も暴力を持たないことを最後まで主張していたらしい。
彼の描いたインドというのは、その当時残っていた昔ながらの伝統的な村に主権をわたし、その上にある国家機関には村々をアドバイスしたりリードしたりという権力しかもたない。それこウェーバーが言ったような「正当な暴力」を有すると主張するような国家ではない。そして70万の村はそれぞれ共和国として生きていく。
インドの村はかなり発達していたらしく、それぞれの村でほとんど自給自足していたし、その中にきちんと警備員なども組織されていたらしい。だから、ガンジーはイギリスからの支配から解放されなければいけないけれど、それぞれの村を残したまま、そして暴力は持たないまま発展すべきである。そう唱えていた。
結局、ガンジーは暗殺されてネルーは普通の近代国家への道を歩む。
しかし、ガンジー自身は自分のビジョンが理想主義だから達成できなかったのではなく、「説得できなかった」ことに原因があるとする。つまり彼の描く理想郷は達成できないものなのではなく実は現実的で達成すべきもの、そして達成可能なのであるが、人々に納得してもらえるまで説得することができなかった、ということ。基本的にこの立場はラミスさんとかなり似てると思う。影響されたのか元々そうなのかは知らないけど。
だから、ネルーをはじめとして国民会議が普通の国家へと歩みはじめたとき、ガンジーは絶望して自らの死を意識しだした。「何故神はこの現実を観察させるために私を生かすのだ」と。
国際政治や世界史を勉強していれば、暴力を持たない国家などただの理想郷でしかないと一蹴していまいそうになる。でもそれはただ世界史や政治史というのは戦争の歴史であって、そこに描かれていない社会もたくさんあって、そこには非暴力で平和を勝ち取ってきた人々の行動もある。少なくともガンジーはそう言う。
そして何よりも、インドの独立という歴史的事実がある。
非暴力、不服従。
そこにはガンジーが暴力よりも強力だといっただけの力はあるのかもしれない。
ガンジーはインドがイギリスに植民地化されている原因はイギリスの強さよりむしろインド人が服従していることにあるという。イギリス人のつくる法律を守り、イギリス人が作る作物を買い…
だから協力するのを辞める、それが大きな力になると。
王様にしてもその人を王様と従う人がいなければ彼は王様ではなくなる。
ラミスさんも述べるようにマルクスのプロレタリア革命論と通ずるところがある。
レーニンを経てマルクス主義は暴力革命を肯定するものだと受け入れられているけど、実はマルクスは暴力革命については述べていない。
面白すぎた。さすが私の教祖ラミスさん。
ラミスさんはガンジーの非暴力革命論、スワラージ等、今の世界における市民社会に使えると論じている。
その可能性というのは、先進国社会の働きすぎの労働者、圧倒的多数の途上国の被抑圧者を解放する可能性であると思う。
押し入れの奥底に眠ってるガンジー自伝を引っ張り出して読もう。
マルクスもやっぱり自分で頑張って読みたい。
その後継者がどのようにマルクスを修正したのかも。続きを読む投稿日:2010.04.09
ガンジーは、インドの独立にむけて、それこそ命をかけて、非暴力の抵抗運動をやって、国父と尊敬されていたのだが、でもまさにインドの独立の瞬間にその夢は挫折する。
ということなんだけど、インド独立時のガン…ジーの孤立の理由みたいなのは、今ひとつ、分からなかった。
この本は、その辺の経緯が明確に書いてあって、かなりよく分かった。
イギリスから独立しようとするなかでは、ガンジーの理想主義的なカリスマが必要だったんだけど、いざ、国を作ろうとしたときには、それはジャマだった。といっても、ガンジーは国民的なヒーローなので、神格化しといて、現実の政治では無視しよう、みたいな。で、ガンジーの言っているような地方というか、民衆をベースとした非暴力な国ではなくて、いわゆる欧米型の普通の国を建国時のリーダーたちは作りたかったんだね。
で、この流れ、そしてヒンズーとイスラムの対立で、結局、インドとパキスタンに分かれて、戦争状態になったり、みたいなところで、晩年のガンジーは自分がずっと頑張ってきた目標に手が届きそうなところで、全く違うことに世界がなってしまって、失望したのだろうな、というのが、よく分かる。
ガンジーは最後は、暗殺されるのだが、暗殺者の理由は、ちゃんとした国(軍事力をもって、国際社会のなかで独立を保てる国)にインドがなるためには、ガンジーは障害である、ということだったらしくて、まさに、上に書いた対立のなかで殺されてしまったのだな、と。
ガンジーは理想主義、平和主義なんだけど、そこに全く収まり切れないラジカルさ、政治性、そして、ある意味、現実性をもっていて、その辺のところを再認識できたのがよかったな。
ちょっとガンジー関係の本で積読になっている「わたしの非暴力」を読んでみようかな。続きを読む投稿日:2017.05.04
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