影との戦い ゲド戦記1
アーシュラ・K.ル=グウィン(作)
,清水真砂子(訳)
/岩波少年文庫
作品情報
大魔法使いオジオンに,才能を見出された少年ゲド.自分に並はずれた能力がそなわっていることを知ると,魔法の力にさらに磨きをかけようと,魔法の学院に入る.得意になった彼は禁じられた呪文を唱え,自らの〈影〉を呼び出してしまい,〈影〉との果てしない戦いに引き込まれていくことになる.大賢人ゲドの若き日の物語.
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商品情報
- シリーズ
- ゲド戦記
- 著者
- アーシュラ・K.ル=グウィン, 清水真砂子
- 出版社
- 岩波書店
- 掲載誌・レーベル
- 岩波少年文庫
- 書籍発売日
- 2009.01.16
- Reader Store発売日
- 2015.10.15
- ファイルサイズ
- 3MB
- ページ数
- 318ページ
- シリーズ情報
- 既刊6巻
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この作品のレビュー
平均 4.3 (89件のレビュー)
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世界3大ファンタジーにしてジブリ映画原作。こっちが本物です
世界3大ファンタジー「ナルニア国物語」「指輪物語」「ゲド戦記」の一角にして、ジブリの宮崎吾郎監督初監督作品「ゲド戦記」の原作。
映画版は、複数あるゲド戦記の原作の内容がなぜかごちゃまぜになっていて、本…質を捕まえているとは到底思えず、原作読了者としては「?」が頭の中から取れないままだったのを覚えています。
映画の方はあんまり評判がよくない印象ですが、宮崎駿監督がずっと映像化したかったという本作は、非常にテーマが深く、10~20代前半での、個人が体験する自我が確立する過程を、ファンタジーの形を借りて克明に描いた傑作だと思います。
ユング心理学での「影」の考え方に強い影響を受けて書かれたこの「影との戦い」は心理学的な観点から見ても高い価値が認められていて、文章は低年齢層向けに平易に書かれているものの、内容は深く、暗く、重く、本質的です。
出版は1968年と古く、本作を読むと、現代の少年漫画などでよくある、自分の悪意を受け入れて主人公が強くなる(NARUTOでもあったな)描写のひな形はこれなんだと思えます。
「ナルニア国物語」「指輪物語」と比べると、登場人物は少なく、世界観も限られているので、テーマが分かりやすいかもしれません。
連作で、1作ごとテーマは大きく変化していきますが、一貫してあるのは人の心の有り様を深く掘り下げていく視点にあるように思います。
秋の夜長にはよくはまる物語ではないかと。続きを読む投稿日:2015.10.15
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全編を通してセリフや心情描写が少なく、淡白な文章が続くので、血沸き胸踊る冒険活劇というよりも、主人公の内面の苦悩に迫る純文学を読んでいるような感覚になる。
主人公の人物造形がけっこう好き。少年期のゲ…ドは高慢で虚栄心に満ちていて、そのくせ臆病。私の共感性羞恥をガリガリに呼び覚ます。胸がざわざわしすぎて、最初はページを繰るのが遅かった。けれど決して嫌いじゃないんです、そういう主人公。『はてしない物語』のバスチァンみたいで。
後半、成長した青年ゲドは、自分の慢心と非力に打ちのめされ、無口で思慮深く少し卑屈。これまた「しっかり!」とそわそわさせられるけど、嫌いじゃないです。ウジウジ具合が程よくて思わず応援したくなる。
【以下、ネタバレあり】
「影」については、解説でユングを引いて考察されているけれど、そういう専門的な知識がなくても、自分の恐れや負の部分、直視したくない部分のことだろうなと、読んでいると想像がつくよね。己との戦いということだよね。ビジュアルとしては漫画版『ナウシカ』の皇弟を思い起こしてしまった。あれは「自分の闇の部分」ではないけど忍び寄る感じが、それっぽい。オタクの存在やテレノン宮殿も、私にはかなり『ナウシカ』を想起させる描き方なので、宮崎駿はけっこう影響を受けていたんではなかろうかと勝手に思っている。
「名前」についての考え方が東洋的な気がした。「真名」を知られると力を掌握されてしまうってなんだか陰陽師っぽいよね。
ガレー船が出てきたり、時代がすごく古いような描写がされていて、これは「キリスト教文化」の影響を受ける前の西洋、いや、そもそもそんなものが無い世界の話を描いているんだろうなと思う。非西洋を描いたら東洋に近づいてしまうというのは何やら面白いね。
この作品、読みながら既視感を覚える箇所が多かった。宮崎駿だけでなく、多くの現代ファンタジーのそこかしこに影響を与えているのかもしれない。続きを読む投稿日:2024.05.19
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