音楽とは何か ミューズの扉を開く七つの鍵
田村和紀夫(著)
/講談社選書メチエ
作品情報
この不可思議な芸術が持つ“魔力”の根源への探究。空気の波動である音が、時に甘美に心を溶かし、時に激しく魂を揺さぶる魔法となる。この不可思議な音楽というものの正体を、クラシックをはじめ、ロック、民族音楽などの多彩な音と音楽学にとどまらない多様な視点から探究する。すべての音楽好きに贈る、あざやかでかろやかな論考。(講談社選書メチエ)
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商品情報
- シリーズ
- 音楽とは何か ミューズの扉を開く七つの鍵
- 著者
- 田村和紀夫
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社選書メチエ
- 書籍発売日
- 2012.01.10
- Reader Store発売日
- 2015.07.24
- ファイルサイズ
- 6.8MB
- ページ数
- 224ページ
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この作品のレビュー
平均 3.8 (7件のレビュー)
-
音文化論のレポートのために借りてきたんだけど、読み物として楽しめた。面白かった!欲しいな、買いたいなぁ。
投稿日:2013.08.25
それはむかーしのことですが、私が高校生だった頃、一向に成績のよくならなかった教科の一つ数学の授業の時、先生がこんなことを言いました。
「日本では、高校の主要教科は理系文系と分かれていて数学は理系…の教科だと言われているが、ヨーロッパなどでは、数学はほぼ哲学の隣あたりに位置している」云々……。
さて、それを聞いた時私がどんな感想を持ったのか、今となっては全く覚えていません。ただ、そう言われたことだけは今になっても覚えています。
後日、かなり月日がたってからですが、クラシック音楽の本を読んでいたら、音楽と数学の高い親和性について書かれた文章があって、そこにはバッハの「平均律」なんかが例として紹介されていました。
そこを読んだ時に私が思ったことは、なんとなく覚えています。
といっても、全然たいしたことのないことを考えていたのですが、なるほどそう言われれば音楽ってちょっと理系っぽいかな(やっぱり理系かい)、などと思ったわけです。(本当につまらない内容ですみません。なさけなー。)
さて、この度冒頭の本書を読んで、私はとっても面白かったです。(一部音楽の専門的なところは理解できませんでしたが。)
要は、タイトルの通り音楽って何だと、かなり正面からあれこれ考察している本ですが、これは面白そうでしょう。
音楽とは○○である(ではないか)、という定義めいたものがいっぱい書かれてあってそのどれもが、私としてはとても説得力がありました。
また、そんな大層な定義だけでなく、いわゆる音楽を聴くことによって我々の心の中に起こる現象めいたもの(よーするに「感動」などですね)の説明なども、(当然と言えば当然でしょうが)詳しく書かれています。ここも、とても説得力がありました。
以下に、そのどれか一つを紹介しようと思いましたが、この記述もいいし、あの記述もいいと迷いました。でも一つだけ書いてみますね。
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というのも、音楽は意味世界を叙述するのではないからです。音楽においては、むしろ発信されたもの――ある感情であれ、ある気分であれ、ある魂の状態であれ――が、他者のなかで呼び起こされるのです。概念的な理解が知識と照合されるのに対して、音楽的な理解は同じ感情を引き出します。ちょうどある波長が波動となって伝わり、同じ波長を共振、共鳴させるように、です。その時、コミュニケーションの根幹たるべき発信者にとってのことの重大さが同調されるのです。
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ここに書かれたのを読んで、わたくしは(いつものように偏見と誤解にまみれつつ)こんな風に理解しました。
例えば小説に「絶世の美女」と書かれているのを読んだ時、読者の頭に浮かぶ美女の顔は、まさに十人十色でありましょう。しかし、ある音楽を聴いて悲しいと思った時の感情の「形」は、なんと十人いても十人とも同じ形だ、ということではありませんか。
ダイレクトに脳内に、ある感情の塊のようなものが姿を現す、ということではありませんか。
……ということは、ということは、ですよ。
例えば小林秀雄がモーツァルトのト短調クインテットを聞いて、「かなしさは疾走する。涙は追いつけない。涙の裡に玩弄するには美しすぎる」と思った時彼の頭の中にあった悲しみの形は、私が同曲を聴いて「ああ、悲しい曲や。ほんま、ええ曲やなー」と感じた時の悲しみの形と同じものだということではないですか。
……うーん、と、はじめ私も思いました。
でも、なんとなく納得してしまうんですよね。
私の呆けたような鑑賞はともかく、結局音楽を聴く感動とは、言葉で説明すればこのような理解が一番正しいんじゃないかと、とっても納得的に思ったわけです。
……いやー、小林秀雄と私が同じ思いであったなんて、なんだかちょっと得したような気持ちになりました。
そんな、音楽とは何かが、あれこれ考察されている本です。
とても、面白かった。続きを読む投稿日:2023.01.17
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