資本主義の正体
池田信夫(著)
/PHP研究所
作品情報
今、マルクスが新たな脚光を浴びつつある。なぜか。それはフランスの経済学者、トマ・ピケティが書いたベストセラー『21世紀の資本』が描く現代の「格差」の姿が、「資本主義がグローバル化するにつれて、富は一部の資本家に集中し、残りの人々は窮乏化する」としたマルクスの予言と重なるものであったからだ。マルクスが思想が、再び説得力をもって甦ってきたのである。実は、マルクスが分配の平等を主張したことも、グローバル化に反対したこともなかった。それどころかマルクスは、国家が分配の平等を実現しようとする温情主義を否定し、グローバル資本主義が伝統的社会を破壊するダイナミズムを賞賛したのだ。マルクスが未来社会として構想したのは「平等社会」ではなく「自由の国」だった――そう著者は喝破する。では、彼が見通した資本主義とはいかなるものだったのか。そしてその現代的意味とは・・・?新たなマルクス像に光を当て、現代の諸問題を斬る意欲作!
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商品情報
- シリーズ
- 資本主義の正体
- 著者
- 池田信夫
- 出版社
- PHP研究所
- 書籍発売日
- 2015.01.01
- Reader Store発売日
- 2014.12.19
- ファイルサイズ
- 5.3MB
- ページ数
- 288ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (6件のレビュー)
-
☆3(付箋14枚/P270→割合5.19%)
私の勤めるコールセンターでも遂に上司がピケティの名前を口にするように(笑)。本人読んでないし、知ってるだけ偉い(←上から)と思うのですが、個人的にはいつも…周辺事情を解説した本ばかり読んで本作に当たることが少ない。
ピケティについても、概略はネットでまとめられていたりすると(資本蓄積が生む富の方が技術発展で生まれる富より大きい。あれ、でもこの理論が正しいとすると、年金が積み立て方式じゃなくて賦課方式なのは現実にそぐわないことになるなぁ)ますますピケティの本を読みたくなくなる。
それで、周辺の研究発展自体を扱った本を読むのだけれど、この本は面白く読めました。
共産主義、社会主義は失敗に終わったと思うが、では資本主義とは何なのか?経済と社会の形がどうあると良いのか?という問題に答えはまだ出ていない。そういう好奇心にはよく応えてくれる本でした。
***以下抜き書き**
・日本の製造業がアジアに負けた最大の原因は、資本効率である。電気製品の製造を請け負うEMS(受託生産サービス)では技術開発がほとんど必要ないので、労働生産性が極大化される。他方、シリコンバレーのファブレス(工場なし)企業は 製造部門をもたないので労働集約的だが、海外の製造部門をあわせた資本/労働比率は高く、利潤の大部分は本社が得る。
・多くの人がマルクスの著作といえば『共産党宣言』ぐらいしか読まないで、階級闘争をあおった社会主義の諸悪の根源だと思っている。たとえばメアリー・ガブリエルの書いたマルクスの伝記は彼の政治活動にほとんどを費やし、「弁証法的唯物論」にもとづいて「社会主義」の大義に人生を捧げた思想家として彼を描いている。しかし彼は社会主義という言葉を(否定的な意味以外では)使ったことがなく、生産手段の国有化も主張したことがない。
マルクスは「資本主義」という言葉も使ったことがない。資本主義は、20世紀初めにゾンバルトが初めて使った言葉である。
・ 労働力の所有者は、みずからの労働が対象化されている商品を販売することはできず、みずからの生きた身体のうちに存在している労働力そのものを商品として売りに出さなければならない。自分の労働力とは異なるものを商品として販売しようとすれば、その人は原材料や労働の道具など、生産手段を所有していなければならないのは当然である。
・アジアでは土地と労働力が水のように豊富だったので、主要な産業は労働力を浪費する農業だったが、18世紀のイギリスでは労働力が稀少だったので、労働節約的な技術が発達した。この最大の原因は、賃金が高かったことだ。
このような高賃金はなぜ可能になったのだろうか。ロバート・アレンのあげる第一の原因は、人口の減少である。ヨーロッパに猛 威をふるった黒死病(ペスト)の影響は近世まで残り、イギリスの人口が増加に転じたのは16世紀後半だった。
しかし労働人口が減っても、労働需要が増えないと賃金は上がらない。その原因として彼があげるのは毛織物である。今ではマイナーな産業だが、近世までは衣類は最大の市場をもつ工業製品であり、中世までは毛織物が最大の衣類だった。そして中世のイギリスは毛皮を輸出し、毛織物を輸入していた。
黒死病で労働者が激減したので、労働集約的な牧畜業では採算がとれなくなり、毛足の長い毛から毛糸をつくる産業が出てきた。これも競争的な産業だったが、イギリスは高い関税をかけて自国の毛織物産業を守った。この結果、国内の毛糸の価格が上がり、それをつくる労働者の賃金が上がった 、というのがアレンの説明である。
・アジアでは16世紀から18世紀にかけて、勤勉革命がおこった。これを杉原薫は「アジアの奇跡」と呼んだ。それは成長をもたらし、雇用を増やし、スキルを蓄積した点で、「ヨーロッパの奇跡」と同じだった。違いは、西洋では労働節約型の技術が発達したのに対して、アジアでは労働集約型の技術が発達したことだ。
・スペインの繁栄はあまり長く続かなかった。その原因は彼らの支配があまりにも収奪的で、持続できなかったためだ。スペイン人の支配した土地はすべて国有になり、南米から多くの銀が流入したため、スペイン王室は豊かになり、絶対王政が確立して議会の力は弱まった。植民地では産業が発達せず、大地主に富と権力が集中して政治が腐敗した 。
これに対してイギリス人の入植した北米には幸か不幸か銀のような資源はなく、土地はやせており、移民はトウモロコシやタバコを栽培しなければならなかった。土地は彼ら個人のものになり、その所有権を守る法律ができ、議会ができた。この結果として特定の貴族や地主に資本が集中するが、フェルナン・ブローデルもいうように、この資産格差を所有権で守って資本を蓄積することが資本主義の起源だった。人々が平等に働いて平等に受け取る社会では、資本主義は生まれない。
・たとえば100人の労働者でやっていた作業が、揚水ポンプを使うと10人でできるようになったとすると、節約できる90人の人件費より揚水ポンプのコストが安ければ、投資収益が上がる。最初の五年で投資を回収したとすれ ば、その後は運転すればするほどコストは下がる。
問題は、ポンプに誰が投資するかである。労働者は自分の雇用を奪う技術には投資しないので、外部の投資家がファイナンスするしかない。しかしその資金が調達できなければこのプロジェクトは成立しないので、最初に必要なのは資本である。つまり技術革新が可能になるためには、巨額のしほんとそれを使ってリスクをとる投資家が必要なのだ。
・フローで見るとイギリスの成長率は低いが、ストックで見ると大きい。2005年の日本の対外資産はGDPの100パーセントだが、イギリスは400パーセントである。負債も415パーセントあるが、バランスシートの規模は日本の四倍である。イギリスの経常収支も赤字だが、問題は経常収支の帳尻ではなく、利用できる 資産の規模である。四倍借金して四倍投資する社会の方が豊かなのだ。
・日本が、非西洋圏では唯一、自力で近代化した原因は、アジアでは唯一、民主政治の伝統を持っていたからだ。もちろんこれは西洋のデモクラシーとは起源も性格も違うが、日本と中国の距離よりイギリスとの距離のほうがずっと近い。これを丸山眞男は日本型デモクラシーと呼んだ。
「政事が上級者への奉仕の献上事を意味する、ということは、政事がいわば下から上への方向で定義されている、ということでもあります。これは西洋や中国の場合と、ちょうど正反対と言えます。ガヴァメントとか、ルーラーというコトバは当然のことながら、上から下への方向性をもった表現です。ところが、日本では『政事』はまつる=現状す る事柄として臣のレベルにあり、臣の卿が行う献上事を君が『きこしめす』=受け取る、という関係にあります。
・歴史の教科書に出てくる「五公五民」というのは間違いで、徴税の基準となる石高は1700年頃に凍結され、再測量には農民が百姓一揆で抵抗したので、検地はほとんど行われなくなった。このため実効税率は下がり、幕末には二割以下だったと推定される。
・2000年に柄谷行人のつくった「NAM」というアソシエーションも、3年たらずで自壊した。この種の運動がお遊びの域を出ないのは、資本の意味を理解していないからだ。蓄積できない地域通貨を使った協同組合には資本蓄積のインセンティブが欠けており、持続可能な経済システムにはならない。
・日本が「ものづくり」で輝く日 は、二度と来ない。主要な市場が国内にないのだから、国内でつくる必然性がない。日本の製造業が世界を制覇したのは、複雑な部品のコーディネーションを長期的関係で行なう江戸時代型システムが偶然、自動車や電機などの2.5次産業に適していたためだが、その後ビジネスの中心はサービス業に移ったのに、日本メーカーは変われなかった。
この原因として、グローバル化が進んでいない、規制が多いなどの原因がよくあげられるが、特に遅れているのは労働市場である。
・G(グローバル)型産業はオリンピックのようなもので、世界中でルールは一つだ。トヨタやパナソニックの生産性は、世界的に見ても高い。問題はL(ローカル)型である。この分野の労働生産性(付加価値/労働時間)は先進国の 平均よりかなり低い。これは日本人が怠け者だからではなく、古い産業から労働人口が動けないからだ。これを上げることが、日本経済の究極の問題である。
・社会主義は壮大な実験だったが、その結果が示したのは、資本主義がなくなっても人間の欲望はなくならないということだ。特に無制限の国家権力を個人が握ると、二度と手放すことはない。国家は死滅しないのだ。この意味で資本主義は法の支配によるアカウンタビリティと不可分である。
しかし向こう100年を考えると、法人税率はゼロに近づき、所得税もタックス・ヘイブンを使える大富豪ほど税率の低くなる逆進的な税になるだろう。イギリス海軍が海賊から発祥したように、資本主義は海賊的なシステムである。それを土地で囲い込む近代 国家に限界があるのだ。続きを読む投稿日:2015.02.28
タイトルはミスリーディング
マルクスを中心とした経済学の歴史を描いた本
信憑性は不明、でも面白い。
150ページまで読んだ → 最後まで読んだ。
結局、現在の問題に対しての解決策は提示してない。
…まあ、そんなに簡単に解決策があるわけもないので、提示しない方が、まともという気もする。続きを読む投稿日:2019.05.21
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