プラグマティズム
W.ジェイムズ(著)
,桝田啓三郎(訳)
/岩波文庫
この作品のレビュー
平均 4.1 (14件のレビュー)
-
ジェイムスのプラグマティズムは超越論であれ経験論であれ、また一元論であれ多元論であれ、あらゆる哲学上の立場と両立し得る。それは哲学の哲学、いわばメタ哲学であるからだ。哲学の使い方を問う哲学、哲学に耽る…ためではなく、哲学を生きるための哲学と言ってもいい。個々の哲学上の立場に対しては、「そうかも知れないし、そうでないかも知れない」という可謬主義の立場をとる。全ては仮説(仮象ではない!)と割り切った上で、それが「役に立つ」かどうかを問題にする。何に役立てようというのか。もちろん良く生きることだ。哲学は「知への愛」だが、「知」は良く生きるための「知」であった筈だ。そのことを忘れた哲学は知的遊戯以外の何ものではない。この至極当たり前の考え方がプラグマティズムの出発点だ。
ただ、真理は役に立つかどうかで決まるというジェイムスの言い方は誤解を招き易い。ジェイムズはパースから構造主義(記号論)的な思考法を受け継いでおり、概念(言葉)と実在(世界)の一致ではなく、世界について語る言葉の内的整合性を真理と呼んでいる。言葉が生の形式であるならば、それが整合的であるとは生が整合的であることを意味する。言葉の外にある実在を写しとるのではなく、整合的で首尾一貫した生の表現(表出ではなく、創造であり自覚でもある表現)として言葉を用いること、これが「役に立つ」哲学なのだ。だがその整合性のパターンは一意には定まらず幾通りにも可能である。構造主義的なタームで言えば構造は「置換」可能なのだ。(最終的に言葉が実在に到達できると考えたパースとの違いが後にプラグマティズム内部の論争になり、近年パース再評価の動きもあるようだが、評者はローティとともにジェイムズにより共感する)
そして何が良き生き方であるかも人それぞれだ。世界をまるごと認識することに喜びを感じる者もいれば、不完全であったとしても、とりあえずの認識を携えて世界を変える、あるいは完成させることに喜びを見出す者もいる。前者は超越論や一元論、後者は経験論や多元論に馴染み易い。ジェイムス自身は後者に共感を示すが、前者を排除してはいないし、できるとも思ってない。人の生き方が簡単には変えられないのだとしたら、自分の生き方にフィットする哲学を信じる他ない。その哲学を通じてより良く生きたと実感できたなら、それを真理と呼ぼうではないか。ジェイムスはそう言ってるのだ。なんか変だ、おかしいぞと気づいたら変えたらいいのだから。
プラグマティズムは人間を離れた外的基準による真理の基礎づけを放棄する。その意味で相対主義と言ってしまえばそれまでだが、思い込みによる居直りのススメでは決してない。ギリシャ哲学以来二千年この方、万人が承服できる基礎づけを行った者は誰一人ない。いつ果てるとも知れぬ無益な真理ゲームから哲学を解放し、人間の生を豊かにするという根本課題に哲学を差し戻す積極的な相対主義だ。哲学をピカピカに磨いて人間が干からびては意味がない。続きを読む投稿日:2024.01.10
実利的な思考方法としてのプラグマティズム。
合理主義と経験主義という線引きは、当時の米西洋アカデミズムの潮流で生まれたもの?、にしては雑な割り切り方で、今となっては古めかしい。
善的な有用性の内側に真…理が含まれるという簡単明瞭ではあるが、至極真っ当な考え方。
世紀末ヨーロッパにおけるオカルト主義の影響も少なからずありそう。
ジェームズの文章は粘り強く論理的に説得してくる。真面目な人って感じする。続きを読む投稿日:2024.05.06
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。