娯楽都市・江戸の誘惑
安藤優一郎(著)
/PHP新書
作品情報
芝居、相撲、寄席、見世物、花見、寺社の開帳、富突、大食い・大酒呑み大会――天下泰平の江戸の町では、毎日どこかでイベントが催されていた。浅草、吉原、両国、木挽町だけでなく、大江戸八百八町には刺激的な娯楽空間が満ち溢れていたのである。人々は寸暇を惜しんで遊びに出かけ、現代の宝くじにあたる富突の当せん番号発表会場にも足を運んでいた。こうして江戸っ子たちが遊びに費やした金が莫大な経済効果をもたらし、町を活性化させていたのである。本書は、江戸の経済を動かしたのは大商人ではなく、意外にも庶民であることを炙り出している。歓楽街で花開いた娯楽産業が、飲食業や出版業とのコラボレーションで、巨大ビジネスへと発展していくさまは、現代を彷彿とさせる。また江戸にはビジネスチャンスが山ほどころがっており、それを利用してのし上がっていく人物もいた。娯楽という切り口から知られざる江戸経済の実態に迫った新しい試みの書。
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商品情報
- シリーズ
- 娯楽都市・江戸の誘惑
- 著者
- 安藤優一郎
- 出版社
- PHP研究所
- 掲載誌・レーベル
- PHP新書
- 書籍発売日
- 2009.07.15
- Reader Store発売日
- 2014.03.07
- ファイルサイズ
- 11.1MB
- ページ数
- 208ページ
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この作品のレビュー
平均 3.0 (1件のレビュー)
-
今日の帰りの電車で読み終わった本、著者は安藤優一郎って、江戸に詳しい歴史家の人みたい。内容は江戸の娯楽産業について。
近世は云々と学部の終わりくらいから繰り返し論文や発表で言ってきた僕だけど、実は江戸…の経済とか生活とかそういうのはよく知らないので、何か易しそうな本から勉強したいなアというので、古書店「マゼラン」で色々のついでに買ったンです。
江戸時代、いかなる娯楽産業があって、どれくらいお金が動いたか、どういう戦略で商売していたかが、わかりやすーく書いてあります。大体知ってることばかりだったので確認程度だったけど、あれこれ思い出して勉強になった。一大エンターテイメントスポットだった浅草寺とその周辺なんて、数字であれこれ示されるんで、とんでもない金額と人口が動いていたことが容易に想像できて、頭の中に江戸の町人やら武士やら歌舞伎役者やらなにやらがうじゃうじゃ湧いてぎゅうぎゅうの人ごみになる。耳から人が溢れそう。
芝居にしても、三座のいわゆる大芝居が当初人気で、それから安い小芝居である宮地芝居(寺社の敷地内で興行する)登場して、大芝居が高級化するにつれ、宮地芝居に人が流れ、大芝居の役者も宮地芝居に出るようになるなんて話も面白い。宮地芝居も観られない層が楽しんだのが寄席だったそうで、ほおーわっかりやすぅい!! ふぉい!!
江戸経済の面白いところは、金持ちには最高級の娯楽、そこそこにはそこそこクラスの娯楽、貧乏には貧乏向けの娯楽と、それぞれの層に対して娯楽を用意する商売人がいること。幕府も娯楽にはある一定の犯罪抑止力、社会のガス抜き機能があることを認めているところがあったそうな。ただ弾圧してただけじゃなくって、幕府も微妙な調整したりして、庶民や商人の反発には気を使ってたみたい。
寺社の御開帳イベントは、地元や芸能者、興行主、スポンサーの豪商など様々な人間が参加し、人を集めて経済が動いていたわけで、もはや単なる宗教行事ではなかったというところに、宗教の現実的な在り方が見える。信仰と金銭は元々結びついていて、それは結びついてはいけないものではなくって、結びつくのはむしろ必然なのよね。信仰は生活することに根付くわけで、生活の大きな領域を金銭が占めているのだから。寺社の開帳を応援すると自分らの宣伝になるってンで三越や住友が費用肩代わりし、寺社の方も経済的に苦しくて御開帳で人を集め、スポンサーについてもらえないと困窮するというところは、今日にもつながる部分が大いにある。聖・俗の二元論で語れない宗教世界が語られてるだけでも大興奮。
後半では大酒飲み・大食い大会のレポートをしたり、孫の御家人株買うために書画会を開く馬琴の様子が述べられていてニヨニヨ。馬琴先生は大人気作家だったンですな。
ただ、ここまで経済が廻るのも、あくまで大都市の江戸だからであって、もっと言うと、閉ざされた狭い範囲の中でのみ経済が動いているから生じる現象なんだとも思う。あー、イヤ、海運も含めると閉じてはいないのかな? 地方のことも気になった。地方と江戸の関係もね。もうちょっと出版の話も知りたかったとも思う。続きを読む投稿日:2010.07.05
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