グラミン銀行を知っていますか―貧困女性の開発と自立支援
坪井ひろみ(著)
/東洋経済新報社
作品情報
バングラデシュの貧しい女性たちに無担保で融資し、自立を促す「グラミン銀行」。その活動を8年にわたって調べてきた著者が、女性たちの奮闘する様子を活き活きと描く。
【主な内容】
第1章 マイクロクレジットとは何か
第2章 グラミン銀行とは何か
1 グラミン銀行誕生と貧しさの基本的な考え方
2 グラミン銀行の仕組みと女性のかかわり方
第3章 グラミン銀行の活動
1 集会は「私の学校」
2 「私」が所有する家
3 「私」が自由に使えるお金
第4章 フィールド・レポート:また女性たちに会いたくて
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この作品のレビュー
平均 3.1 (29件のレビュー)
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「グラミン銀行を知っていますか?」
聞いたことはある。バングラデシュにある対貧困層への画期的なシステムだと何かで目にしたけれど、正直なところよくわからない。
気になって手に取って、貧困の解消が人の尊厳…にこんなにも結びつくものかと、感動しました。
融資をきっかけに、自分で何かを選び取ることができるようになる、未来に向けて考えることができるようになる、ということは非常に大きなことですね。
そのために毎週集会があり視野を広げ、物事を考える機会を持つことだったり、グループを作って信用力を高める仕組みが確立されていることだったり、つくづく画期的なシステムですね。
施しは命を繋ぐけれど、自尊心を高める役には立たないですものね。
シンプルなグラミン銀行の哲学というのも必見です。
・クレジットは、基本的な人権である。
・人はだれでも、機会さえ与えられれば、よりよい生活をしようとする能力と意欲をもって。いる。
・貧困は外から規定され、人工的・社会的につくり出されたものである。
・貧しい人びとが信用に値しないのではなく、既存の銀行が人びとに値しないのである。
以下、略。
加えて、バングラデシュは男性の権力が著しく高い文化があるようです。貧困層への融資という1点だけでも高いハードルだろうに、女性が外出や買い物をするのすら支障があるような文化圏でよくもこれだけの事業を進めてこれたものだと、容易に「不可能」だと決めつけてしまってはいけないと自戒の念を抱きました。
もちろん、ここには書かれていない課題もあるでしょうし、何より本書自体執筆されたのが10年近く前なのです。状況は当時とは違うかもしれません。
それでも、貧困というレッテルを跳ね除け、いきいきと暮らす女性が世界にいることを知れて、非常に勇気づけられました。続きを読む投稿日:2016.12.29
このレビューはネタバレを含みます
1974年にバングラデシュで誕生した、貧困層向けに小額融資(マイクロクレジット)を行うグラミン銀行に関して書かれた一冊。
レビューの続きを読む
マイクロクレジットとは、貧しい人々を対象に、フォーマルな小額融資を行う仕組み…のこと。貧しい人しか借りられず、たいていはグループを作って連帯責任で返済をする。
この仕組みは途上国で始まったが、先進国にも普及して、アメリカやイギリス、カナダ、ノルウェー、フランスでも利用されている。
バングラデシュのグラミン銀行はマイクロクレジット機関の中で先駆け的な存在として有名になった。
本書は、グラミン銀行の会員の農村女性たちにインタビューをしたフィールド調査結果がまとめられている。
バングラデシュには、「娘を育てることは隣の家の木に水をやるようなもの」という古いことわざがある。
都会の中間層・富裕層は別として、バングラデシュの女性の多くは外出をしない。買物は食料品・日用品・女性用品(下着も!)等々、全て男性(夫)が行う。
貧しくて小さい頃から働かなければいけなかったので教育を受けられず、字が読めないため職につけず、収入がないため家庭内での発言権もない、という女性は非常に多く、そのような女性たちは父親が決めた相手と10代のうちに結婚させられ、その後は夫に捨てられないようにと、ただただ夫に依存した生活を送らざるを得ない状況に置かれている。
そんな女性の自立を助けたのがグラミン銀行。
グラミン銀行の会員として融資を受けるようになったことで、経済的なことももちろん、「知識が増えた」「自信がついた」「友だちができた」といった重要な変化が起こる。
バングラデシュの女性をめぐる環境にはまだまだ課題があるが、マイクロクレジットを利用したことで貧困から抜け出し自立していくバングラデシュの農村女性が増えていくことはとても喜ばしいこと。続きを読む投稿日:2019.03.04
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