鼻/外套/査察官
ゴーゴリ(著)
,浦雅春(訳)
/光文社古典新訳文庫
作品情報
自分の鼻が一人歩きをして物議をかもす「鼻」。貧しい官吏が思い切って新調した外套を奪われ幽霊となって徘徊する「外套」。戯曲「査察官」では、ある地方都市にお忍びの査察官がくるという噂が広まり、市長をはじめ小役人たちがあわてふためく――増殖する妄想と虚言の世界を新しい感覚で訳出し、従来の深刻、生真面目な作家像を完全払拭。代表作3篇を収録した、これぞゴーゴリの真骨頂。
もっとみる
商品情報
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 3.5 (40件のレビュー)
-
昔、岩波文庫で読んだのですが、あの時は「ダメだ、こりゃ」と思ったのです。だが、今回、新訳で読むと「まったく違う」。不思議だなぁと思った。生き生きしている。テンポがいい。査察官は、とくに笑えた。古典文学…で、ここまで笑えたのは初めてだと思う。というのも落語風に翻訳していて、リズムがよく少し軽い感じで話しが展開していくので、古典という違和感を感じることなく読めたのが良かったのかもしれない。おもしろいですよ。コメディであり風刺なのかな。でも、当時のロシアがよくわかんないから、何となく風刺しているという風?。続きを読む
投稿日:2020.01.11
光文社古典新訳文庫のこちらには、浦雅春さんによって落語調で翻訳されたゴーゴリの三作品が収録されている。ゴーゴリはおろかロシア文学のロの字も知らない私だが、落語調、というのが気になって手に取った。
…『鼻』がいきなりすごく面白い。ある朝床屋が焼きたてのパンを食べようと半分に切ったら、そこになんとお得意さんのお役人の鼻が入っている(のっけから、不気味とか不穏とかを通り越し、あらゆるルールを無視した世界であることが提示され、むしろ安心して読んでいける)。おかみさんに捨ててこいとどなられて捨てに行く。当のお役人の方も、起きたら鼻がないことに気づいてたまげている。町に出ると、馬車から自分より身分の高い役人の制服を着た紳士が降りてくるのだが、それがなんと自分の鼻。勇気を出してへりくだってお声掛けするも「私はあなたのことなんて知りませんが」などと鼻であしらわれる始末(鼻だけに)。どうしよう…というような素っ頓狂な話が、江戸落語調で、語られる(「ってやんでい!」という台詞もあったから江戸で合ってると思う)。私自身は落語に明るいわけではないが、夫が落語好きで、家や車でよく落語の音源をかけている。いろいろ聞くが、圧倒的に古今亭志ん朝が多く、私もかなり耳馴染みになっている。だからこういった江戸落語調の文章を読むと完全に志ん朝さんの声で再生される。好きな落語家さんのおられる方はぜひこの作品を読んでいただきたい。一席聞けた気分になれてお得ですよ。この話の終わり方も、そこは落語とは違ってちょっと考えさせるような、いや考えても結局なんにもならないような、絶妙な語りで締められており、この文庫六十頁の短編一作を読んだだけで、爆風に晒されたような心地。
『外套』は鼻に比べたらずっとずっとセンチメンタルで、相変わらず落語調ではあるが、ゲラゲラ笑うような噺ではなく、人情噺や怪談噺のような風情。哀切に満ちたバイオリンの伴奏をバックに白黒無声映画を見ているような感覚もあった。ゴーゴリの力なのか浦雅春さんの力なのかわからないが、なにかこちらの演出ごころを刺激してくるところがある。
『査察官』、これは五幕の喜劇の戯曲。三作の中では最も分量も多いのだが、筋はシンプルな勘違いモノ。各人物の本音と建前のギャップや、長台詞で滔々と語られどんどん壮大になっていく虚言、そして最後の場面の演出効果(冒頭で作者から俳優諸氏への注意としてコメントが添えられている)が見どころ。機会があれば一度舞台で見てみたい!
おかしな感想かもしれないが、三作全体を通してのむちゃくちゃさ、揺さぶられ感、饒舌ぶりといった感覚が、最近読んだものだと井上ひさしの『吉里吉里人』を読んだときと似ていた。
浦雅春さんによる解説、あとがきも興味深く、といっても解説の内容をきちんと理解するには色々と基礎知識が足りていないとは感じたが、ウクライナ。ロシアだロシア文学だと思っていたが、ゴーゴリはウクライナ生まれの作家だった。続きを読む投稿日:2023.02.04
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。