集中講義!アメリカ現代思想 リベラリズムの冒険
仲正昌樹(著)
/NHK出版
この作品のレビュー
平均 4.0 (23件のレビュー)
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現代リベラリズムの良質なブックガイド。ロールズの「正義論」におけるリベラリズムを軸として、リベラリズムvsリバタリアニズム、リベラリズムvsコミュニタリアリズムの歴史を、簡便にまとめている。リベラリズ…ムをめぐる議論の概観がわかるし、索引や巻末の年表なども充実しているので、リベラリズムについての資料として有益だと思う。
個人的には、ノージック「アナーキー・国家・ユートピア」やロールズ「万民の法」、ローティ「哲学に対する民主主義の優位」、テイラー「<ほんもの>という倫理」あたりを読んでみたいなと思った。特に「万民の法」におけるロールズの「リベラルな社会がリベラルではない社会をどこまで許容すべきか」という問題意識には、とても関心がある(渡辺一夫の「寛容は自らを守るために不寛容に対して不寛容であるべきか」に通じるものがある)。9.11以後の社会において、こういう視点はとても重要だと思う。
良い本だと思うけど、この本一冊であれこれを理解するというのは無理。読者がそれぞれの関心から自分の読みたい本を見つけるために使うべき本かな。続きを読む投稿日:2010.10.21
本書は、アメリカ現代思想を、ジョン・ロールズの1971年の「正義論」により打ち立てられたリベラルな政治哲学を中心にして、アメリカの政治状況と絡みつつ、各思想家、哲学者が、どのような必要にかられて自分の…思想、哲学を構築していったのか、歴史的に述べている。そして、アメリカの哲学がいつのまにか、伝統的なフランス・ドイツ系の哲学から、哲学の主流を奪ってしまったことについての、納得いく記述、回答になっている。
その哲学の主流の変化は、まずアメリカにおいて、文芸批評家ポール・ド・マン、ジョナサン・カラー等によりフランス・ドイツ系のポストモダンと言われた哲学が咀嚼、紹介され、盛んに研究された。一方、フランスでは、フーコー、デリダ等が亡くなって以降、哲学的に生産的な書き手がいなくなっていった。そこで、ポストモダン系の議論が、アメリカに吸収されてしまった。こういう吸収の過程がある。
また、欧州の大きな哲学の流れである、ウィーン学派論理実証主義が、英米にて分析哲学として継承され、ラッセル、ヴィトゲンシュタインらが発展させる。それを、アメリカのハーヴァード大学のクワインが、伝統的なアメリカ発の哲学であるプログマティズムと総合し、ネオ・プラグマティズムとして打ち出す。
上記のような2つの大きな流れで、英米の哲学が、哲学研究の中心となった。
そこで、ロールズである。ロールズの正義論とは、リベラルの再定義。公正と自由の両立、つまりは民主的手続きと自由主義的価値の統合を図っている。なぜ、リベラルの再定義が必要にされたかといえば、1930年代、世界恐慌の解決策として、民主党のフランクリン・ローズヴェルト大統領によるニューディール政策(イギリスの経済学者ケインズの考えを援用し福祉や雇用政策に政府が積極的介入を行なっていく)、この政策が実施され、実際に成果も上がったと言える。
だが、第二次大戦後1947年、トルーマン・ドクトリンにより共産主義封じ込め政策が、実施され、共産主義を許容しない自由主義国家という矛盾した状態に、アメリカは陥った。そして、その理論的支柱として、計画経済、ソヴィエトを全体主義へ至る道とし、同時にドイツのナチスも全体主義として批判する、ユダヤ系でドイツから亡命した思想家ハンナ・アーレントの「全体主義の起源」が、古典的自由主義の立場から、アメリカ哲学界、思想界をリードした。また、ウィーン大学のオーストリア学派として出発し、ロンドンのLSEを経て、アメリカのシカゴ大学に移ったフリードリヒ・ハイエクもまた、古典的自由主義の論陣を張った。古典的自由主義によって立つ勢力は強力な論陣を張っている、このような状況下でリベラル勢力は、ローズヴェルト政権のリベラルな政策の実施とその処方箋であるケインズ経済学以外に、強力な哲学的な基礎を欠いていた。
そこでハーヴァード大学で、倫理学を研究、分析哲学のムーアによるメタ倫理学に飽き足らなかったロールズが、社会的な正義についての議論を深めたいとの意図から、アメリカの憲法制定における理念に立ち返り、公正と正義が、両立すべき条件を探ったのが、『正義論』である。この本の一番のハイライトが、このロールズの、憲法典の根本に立ち返り、憲法を生きているものとして、不断に解釈を改めねばならないとする姿の描写にある。1971年にあっても、第三代大統領ジェファーソンと同じ臨場感、緊張感を持って、憲法典を再解釈し、市民に訴えていく、その態度が、全く今まで知らなかったアメリカの一面である。
日本においては、明治憲法、日本国憲法、どちらにせよ、憲法起草者と同じように、不断に解釈を行い、世に問うという精神の動きは無いと、言っていい。比べて、アメリカの生きている憲法という理念と、それを実際に生かすロールズの姿勢に驚きを持った。そのロールズの精神を再確認したいと感じさせる本である。
また、リベラル、コミュニタリアン、リバタリアンの3つの思想潮流が切磋琢磨する様子など、アメリカ思想界のダイナミクスと歴史の流れをコンパクトに描いた良書であり、得られるものは大きい。お勧めである。続きを読む投稿日:2019.07.08
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