今こそルソーを読み直す
仲正昌樹(著)
/生活人新書
作品情報
なぜ不平等が生まれるのか? 公正な社会をいかに作るか? 理想の教育とは? 18世紀に生を受けながら、今日にも通ずる重要な問題を徹底的に考えた思想家がいた。「一般意志」というコンセプトを使って理想の社会のあり方を提示したルソー。その考え方を、主著に即して明快に解説する。現代人の切実な問いに答えるスリリングな書。
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- 今こそルソーを読み直す
- 著者
- 仲正昌樹
- 出版社
- NHK出版
- 掲載誌・レーベル
- 生活人新書
- 書籍発売日
- 2010.11.10
- Reader Store発売日
- 2013.09.13
- ファイルサイズ
- 0.6MB
- ページ数
- 256ページ
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 3.7 (12件のレビュー)
-
ルソーに強く「共感する」(=同意する、ではない)著者による、ルソー解説書。アーレントなどはルソーについてボロクソに言ってる。アーレントについても類似タイトルの著書(『今こそアーレントを読み直す』)をも…のしている著者が、果たしてルソーについて何と言うのか。興味深く読んだ。
著者は論旨が一貫せず、多く矛盾を含むとも、ときには極端な主張も辞さない思想家にすごく共感を持っているのだろうな。ルソーもバリバリの「矛盾した」思想家である。『人間不平等起源論』と『社会契約論』でも書いてることだいぶ矛盾するし。ルソーの著書間で一貫した思想を読み取ろうとするのは無駄ではないかと主張する著者は、そこで各著書を独立したものとして読み込む。とは言っても、もちろん、何のテーマもなく、バラバラに読み込んでも仕方がない。著者が立てるテーマは「社会と自然」「みんなの意思は可能か」といったものだ。
ルソーの矛盾。たとえば、人民が契約を結ぶにしても、まず、最初には「全員一致」が必要だとルソーは考える。「多数決で決めるべき」ということ自体が1つのルールだ。このルールを用いるべきということが決まるまでは、このルールによっかかって決定できない、という理由があるからだ。しかし、厳密に考えれば、多数決だけではなく、他にも様々な「決定の仕方」について、事前に全員一致で決定しておく必要がある。・・・と、ここまで考えても全員一致の「全員」って誰だとか、ルール決定方法に関するルールは誰が起草・立案するのかとか、その立案者がどのように正当化されるのかとか、ちょっとつっこんで考えてみると「どうなってるの?」と思えるところは多い。が、ルソーはこれについて『社会契約論』の中で、解決策を提示していない、と著者は述べている。
素人考えだけど、『社会契約論』を読んだとき、ぼくは「この多数決で決めるかどうかも、まず、最初に、少なくとも一度全員一致がなければならない」の解決策として、「社会契約」が出てくる、と自然に解釈していた。正しいかどうかわかんないけど、こういうことだ。ルソーによれば、契約をしなければ(正しい)社会は生まれない。契約には、契約をするものにとってメリットがなくちゃいけない。社会契約を結ぶ頃には、契約を結ばなければ人類は滅びるくらいの外的環境にある、つまり、個人は自分の身を滅ぼしてしまうと仮定している。だとすると「みんな」=全員、今後の契約の根本となる、社会契約には同意するはずだ、この提案に逆らう人はいないはずだ、と、ルソーは考えているんじゃないか。
まあ、仮にそうだとしても、「多数決で決めていい」と全員一致で決めるまでは、多数決は使えない。同じ無限敗退に陥っちゃうわけだが、「最初の全員一致」の内容には、もう少しいろいろ織り込めるのではないかと疑問に思ったので、今度、ルソー読み直してみる。
また、全体主義とルソーの関係も、しばしば指摘されるところだ。タルモンやアーレントはルソーを全体主義的な思想家だとして批判しているが、本書ではこれについても取り上げ、検討している。一般意思にしたがって生きること=自由になることとするルソーの考えは、集団的個体に個人を埋没させてしまうし、自由にするのだということを錦の御旗に、様々な義務を市民=臣民に負わせることを正当化してしまう、統治者に都合のよい考えである(タルモン)、社会の仮面を剥ぎ取った人間の自然を、人間本性を社会契約に持ち込むことで、「徳のテロル」を正当化してしまう(アーレント)といった批判だ。
こうした批判に対し、著者は「ルソーは私的事柄は一般意思の管轄外だとしている」「不平等論と社会契約論をつなげて読むべきではない。ルソーは自然的自由と市民的自由を区別している」と考え、これを退けている。
個人的には、その理屈にあまり説得力を感じなかったけど。
というのも、ルソー思想の中に、そうした全体主義へと至る危険性を排除するような仕組みを明確に見出せないし、全体主義的な記述(皆のために死ねと言われたら死ななきゃなんないとか)も著作にあるから。「一般意思」という概念が不明瞭なため、なおさらその危険性は高いんじゃないかと、ルソーを読むといつも思ってしまう。「一般意思は誤りえない」という主張も、理想の記述でしかないことは百も承知だけど、「一般意思だから間違っているわけがない」と社会に言わせてしまう危険があるのは間違いない。もちろん、「誤っているのだから、それは一般意思ではない」と言う可能性にも開かれているんだけれども、
アーレントのルソー批判も、『不平等論』と『社会契約論』を単につなげて読んだものだとも言い切れないんじゃないか。ルソーはもちろん全体意思と一般意思を区別してるわけだが、それでもアーレントは『革命について』の中で、ルソーにおいては意思=利害となってしまっていること、一般の「同意」ではなく、一般「意思」であることを問題にしている。社会=一般意思だとすると、一般意思には有効な外部がない。社会構成員に共通する利害=意思が、「一般意思」とされてしまいがちだし、ルソーの理屈からもそうならざるを得ないんじゃないか。
最終章、デリダ的読解からすると、ルソーのテキストを「透明なコミュニケーション共同体」という、ありえないフィクション、法=一般意思という完全なエクリチュールを何とか打ち立てたいという夢想かもしれないと指摘した後、次のようなコメントをしてるんだけど、この「ネット知識人」って誰のことなんだろう。デリダ研究者でないことを祈る。
「この”透明な共同体”は、単なるフィクションではない。「法=一般意思」という、(「自然状態」あるいは「幼年時代」の)危険な「代補」は、”我々”に、未だ実現したことのない「完全な民主主義」の夢を見させ続けている。ネット技術の発展を通じて”私”たち相互のコミュニケーションが限りなく透明に近づき、いつの日にか直接民主主義が現実化すると夢想する現代のネット知識人たちは、この「代補」に感染してしまった人たちなのかもしれない。
あ、それとルソーの有名な「不平等三段階説」(不平等は3つの段階に分かれ、最後は専制となり、専制となると逆説的に全員が「平等」になる)を取り上げて解説してるところ(p.78)。著者は専制になると、逆説的に「自由」になると書いてあるけど、これ、「平等」になる、の間違い、ミスなんじゃないの?って思った。いくら『社会契約論』と『不平等論』を繋げて読まないと言っても、「人間はいたるところで鎖につながれている」というのがルソーの現代認識であるとこは変わんないだろうし、不平等起源論を読んでも「自由」ではなく「平等」って書いてある。続きを読む投稿日:2011.03.08
ルソーの入門書としてすごくわかりやすく勉強になりました。
とことん考え抜いた結果アイロニーに行きつく、この世の救いようの無さ
投稿日:2021.09.21
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。