松田聖子と中森明菜
中川右介(著)
/幻冬舎新書
作品情報
アイドルを自覚して演じ、虚構の世界を謳歌する松田聖子。生身の人間として、唯一無二のアーティストとしてすべてをさらす中森明菜。相反する思想と戦略をもった二人の歌姫は、八〇年代消費社会で圧倒的な支持を得た。商業主義をシビアに貫くレコード会社や芸能プロ、辛気臭い日本歌謡界の転覆を謀る作詞家や作曲家・・・・・・背後で蠢く野望と欲望をかいくぐり、二人はいかに生き延びたのか? 歌番組の全盛時代を駆け抜けたアイドル歌手の、闘争と革命のドラマ。
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商品情報
- シリーズ
- 松田聖子と中森明菜
- 著者
- 中川右介
- 出版社
- 幻冬舎
- 掲載誌・レーベル
- 幻冬舎新書
- 書籍発売日
- 2007.11.01
- Reader Store発売日
- 2013.05.31
- ファイルサイズ
- 0.4MB
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この作品のレビュー
平均 3.6 (9件のレビュー)
-
2021年12月7日読了。伝説のアイドル・山口百恵の後釜を狙うべく80年代にデビューした数多のアイドルの中で抜きん出た二人の女性歌手、松田聖子と中森明菜の活動・作品履歴とその戦略を追う本。「蒲池法子が…扮する「松田聖子」が演じるアイドル『松田聖子』」」という虚構を積み重ねた構造が聖子自身と周りのスタッフたちに自由度と戦略を与えた、という指摘と、初期の作曲家小田裕一郎がデビュー間もない聖子に「インテリジェンスを感じた」と評した言葉が記憶に残る。中森明菜は本名で活動し、その結果楽曲の虚構に自分のパーソナリティ・生活に取り込まれてしまった、という指摘も印象的だが、明菜については書きにくそうだ…。著者の明菜びいきは十分に感じるが。この二人が歌謡曲の世界・日本の文化に対して及ぼした影響、についてはまだまだ十分に研究・評価されていないのかもしれないな。続きを読む
投稿日:2021.12.07
『1984年の歌謡曲』に続いてこちら。
タイトルは『松田聖子と中森明菜』だけど、比率としては山口百恵3、松田聖子5、中森明菜2くらいな感じ。
聖子が結婚する1985年くらいまでの話が中心で、明菜は…1986年の『DESIRE』がピークだと思うけど、そこらへんの話はエピローグ的に語られている。
山口百恵『ひと夏の経験』は名曲だけど、これを15歳の女の子に歌わせていたのは今から見るとほとんどセクハラ。山口百恵があっけらかんと歌っているので、エロさより挑発的なかっこよさになっているけど、本人がしっかりしてないとあっという間に大人たちの思惑に流されていくと思う。
結論からいうと「松田聖子すげー」って話ですね。当時は「かわいいけど歌はヘタ」という印象だったけど、あらためて歌番組などの映像を確認してみると、生歌でこれだけ歌ってるのかとびっくりします。
結構難しい歌もすらっと歌ってるので簡単そうにみえるけど、『白いパラソル』や『風立ちぬ』など、歌っているのが彼女でなければもっと地味な凡曲だったのでは。
著者は松田聖子を高く評価しているらしいのに彼女の行動原理を「外見を重視し、中身はどうでもいい」と繰り返しているのは不思議。
こうやって振り返ってみると、声という実力はもちろんだけど、むしろ「独特のインテリジェンス」こそが彼女を成功させたのだと思う。
高校生男子と小学生女子ではとらえかたが違って当たり前ですが、結構著者と私の評価が異なる曲も多かったです。
(『小麦色のマーメイド』の「裸足のマーメイド」に解説など野暮なだけ。女の子たちは「人魚なのに足があるなんておかしい」とは思わず、「彼女は人魚みたいな気分なんだ」と素直に理解したはず。)
松田聖子の歌が家父長制を崩壊させていったというのも私からみると「えー」という感じ。聖子の歌が時代を変えたのではなく、時代の気分を読みとった彼女の歌が支持されただけ。むしろ松田聖子と松本隆、松任谷由実が恋愛至上主義という幻影を女の子たちに植えつけたのは「ユーミン最大の罪」だと思います。
『1984年の歌謡曲』でも感じましたが、こうやって時系列で整理してみると、歌謡曲の変遷がちゃんと見えてきておもしろい。
山口百恵『さよならの向う側』と松田聖子『青い珊瑚礁』が同時期にベストテン入りしているとか、松田聖子を松本隆がプロデュースすることではっぴいえんど的才能が集結していくとか。
以下、引用。
一九八〇年代の少なくとも前半において、日本人が最も多く「聴いた声」と「認識した日本語」は、ときの総理大臣の声でもなければ、人気作家のベストセラー小説でもなく、二人の歌だった。
日本社会の核であった「家父長制的」でありながら同時に「母権的」でもあった「家」を崩壊させ、さらに社会と個人を分断させることが、松田聖子の歌に込められた思想だった。
各学年で一人ずつ選ばれる、行事のたびにみんなの前で聖書を読む「女神」という役職に選ばれてもいる。
ヒットの一番の要因は、作曲した小田裕一郎の歌い方にあったと分析する。「最初の頃は、小田さんから口伝えでレッスンを受け、それから歌っていましたから」と当時の状況を説明し、二曲目の《青い珊瑚礁》を例に出し、「〝あーっア、わたしっのオ こオいはアー〟という母音をしゃくりあげるような歌い方」は小田のくせだと指摘している。
松田聖子によって、はっぴいえんどは再結集するのである。
《風立ちぬ》で明らかになったように、松田聖子は最初期の売り物だった高音が出なくなっていた。
松本隆はこの曲(《赤いスイートピー》)で、彼と松田聖子とが「同期した」と言う。これにより、松本隆、松田聖子、時代は三位一体となった、と。(CD「風街図鑑」解説)。
松本は書くときに「かなり悩んだ。ためらったんだよ」と語る。松任谷由実ですら、できた詞を読んだとき、「この詞は歌うと、どうなるんだろう」と心配したくらいだった。
しかし、松田聖子は、松本が言うには「無意識で歌って」きた。そして、あの、「バッカね」の歌唱が生まれた。誰も、不快さなど感じなかった。
当時の松田聖子については「何曲か書きましたが、どんな曲を書いても歌っちゃうんです。一回歌うと、もう完成しているんですよ、ほとんど。すごい音感がよくて。だから天才かなあと思わせるところがあったんです」
八一年十月二十一日のアルバム【風立ちぬ】では大滝詠一、鈴木茂、財津和夫が、八ニ年五月二十一日の【Pinapple】では来生たかお、原田真二が、八ニ年十一月十日の【Candy】では細野晴臣、南佳孝、大村雅朗が作曲陣に新たに加わっていた。
杉真理作曲《ピーチ・シャーベット》、来生たかお作曲《マイアミ午前5時》、大村雅朗作曲《セイシェルの夕陽》、財津和夫作曲《小さなラブソング》、細野晴臣作曲《天国のキッス》でA面が終わり、甲斐祥弘作曲《ハートをRock》、財津和夫作曲《Bye-bye playboy》、甲斐祥弘作曲《赤い靴のバレリーナ》、松任谷由実作曲《秘密の花園》、上田知華作曲《メディテーション》で終わる。
松田聖子という稀有なシンガーを媒介にして、日本音楽界の最先端にして頂点にある才能が、大衆と結びつこうとしていた。
松本隆は「ミュージックマガジン」八四年五月号のインタビューで「去年(八三年のこと)はたまたま、ある種宗教的な世界、シュプリーム(至上)」が自分にとってのテーマだったので、「花園とか天国とか林檎とか……。そういうものは、性的であって、同時に聖なるものだと思う」と語っている。
いまでもコンサートでは「ピュア、ピュア、リップス」は大合唱となる。もはやカネボウの口紅のことを思い出す人は少ないだろう。カネボウそのものも花王に買収されてしまった。商品は消え、会社は消えても、歌は残る。
フジテレビの〈夜のヒットスタジオ〉はプロデューサーが郷と親しく、その番組内で婚約発表をさせようとしたほどだったので、破局会見以後、松田聖子はこの番組から出演依頼がこなくなった。
続きを読む投稿日:2020.11.08
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